表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/55

第5話 昔の神話はリアルな過去

――銀河の果て。未踏の暗黒帯を、ひとすじの光が疾走していた。


船でも、隕石でも、魔物でもない。


それは、“彼女”だった。


(……ん?)


疾走する虹の波動体が、速度を落とさず、「こちら側」にふと視線を向ける。


「およ? ……うっそ、観測されてる?しかも――私より高次元存在じゃん!興味持ってくれてるなんて、光栄だよ~」


そう言って、くすくすと笑った。


「見つけてくれてありがとう! おっしゃ!せっかく見てくれてるんだから……とびっきりおもしろい星、つくらなくっちゃね♪」



言うが早いか、虹の光は再び加速する。


その先にあるのは、まだ誰にも知られていない――未活性の惑星。



「おっと、たしかこのへん……あっ! あったあった〜!」



虹色にきらめく波動体が、超光速から急減速し――

目指していた惑星の大気圏を突き抜けると、乾ききった大地に、ふわりと着地した。

そこは、水分の気配すらない砂混じりの灰色地帯。

地面には無造作に岩塊が転がり、周囲には意味もなく巨大なクレーターや崖が口を開けている。

風もなく、空も沈黙したまま。


――生命の気配など、どこにもなかった。


「うへ〜、ぜんっぜん活性化してないじゃ〜ん!


 ま、だからあたしが派遣されたんだけどね〜」


 虹色の光がふるふると揺れ、波動体はまるで肩をすくめるように、空間を見回した。

 彼女は周囲の空間を見渡し、ぽつりと呟く。


「……あ、この姿じゃやりづらいな~」


 次の瞬間、虹色の波動がふわりと揺らぎ、光の粒が集まるように形を変えていく。


 やがて現れたのは――


 つば付きキャップに、明るめのブルーのパーカー。

 その背中には、銀の文字で《7-A GALAXY CLUSTER》とプリントされている。

 白いショートパンツに、銀のラインが入ったスニーカー。

 どこにでもいそうで、どこにもいない。

 空間に溶け込むような、軽やかな、おねえちゃんだった。


「よしっと♪ やっぱこっちのほうが動きやすいや~」


彼女は自分の身体をちらっ、ちらっと横目で見て確認し――

軽くその場で飛び跳ねる。

靴底が地面を蹴る瞬間、きらきらと星屑のような粒子が一瞬、宙に舞った。

軽やかに着地すると、ニッと笑って言う。


「うん、重力も問題なしっ」


彼女は足元の未活性惑星を見下ろし、拳を握る。


「そしたらまず、星――活性化っしょ!」


瓦割りのように腰を落とし、リズムよく声をあげる。


「いち、にの……セイッ!!!!!!!」


拳が地表を叩いた、その瞬間だった。

拳の先から放たれた高エネルギーの波が、大地を伝って星の核へと直撃する。

まるで心臓に電気ショックを与えるかのように、未活性だった惑星が――


ドクン、と鼓動した。


つづいて、地面がうねり、核が熱を帯び、大気が震え出す。冷えきっていた星全体が、内側からじわりと熱を取り戻していくように、徐々に、だが確実に、“生命の脈動”を始めていった。


「星の構造、どうしよっかな~……」


空を仰ぎながら、彼女はぽんと顎に指をあてて考え込む。


「ワイルド全開! 巨大生物だらけの原始惑星!地響きバンバン、種と種との生存競争。食うか食われるかの、デカい命がぶつかりあう星……!」


そのイメージだけで目を輝かせていたが、やがて表情を曇らせた。


「んー……これは迫力あるけど、感動なさそう。絶滅する側に感情移入しちゃったら、メンタルもたないかも~」



次に、くるりと手のひらを返すように思考を切り替える


「じゃあ、超高度文明系?


量子制御、無限エネルギー、自己進化する機械ネットワーク。全ての営みが数値化され、感情すらアルゴリズムで最適化された世界――」


「うわ~、SFでカッコいい~~~」


そう呟きながらも、すぐに首をかしげて口をとがらせる。


「でもさ、こういうのに限って滅ぶの早いし、


他の惑星に侵略するんだよね~~~。


戦争とか、すーぐやるし。こわ」


「あたし、創るのは好きだけど……壊すのは担当外ってことで」


そこでくるりとターンして、両手をぱんっと合わせた。


「うん! やっぱ属性系統惑星にしよう!剣と魔法が織りなすファンタジー――やっぱこれが一番ロマンあって、輝いてるよねっ!」


両手を広げた彼女の背後に、ふわりと六つの輝きが浮かび上がった。


深紅の炎。燃え盛る力と衝動の化身、火


蒼き生命の母、水。その手のひらは、ときに慈悲、ときに災厄。


大地を支える、剛き基盤。土。この惑星という舞台の“骨格”そのもの。


風は変化と拡散の運び手。境界をこえて世界をつなぐ、見えぬ導線。


調和と照らしの象徴――光。優しく、温かく、導き、癒す存在。


最後に現れるは、拒絶と欲望、沈黙の象徴――闇。すべてを呑みこみ、消し去る深淵。


六つの輝きが出揃うと、属性たちは自然と波動ねえちゃんの周囲をくるくると回り始めた。火、水、土、風、光――それぞれが違った光と軌道を描きながら、軽やかに舞う。


ただひとつ、闇だけは違っていた。

くるくると回る輪の外側で、ふわりと浮かび、まるで何かを観察するかのように静かに漂っていた。


「よいしょっと……」


波動ねえちゃんはしゃがみこみ、地面に指を当てる。

ほんの少し力を込めると、地面が音もなく裂けるように開いていき、

その奥から、ゆっくりと――鈍く脈動する星の核が姿を現した。


「おっし、みんな星の核と融合して~!


うまいことやって、生命とか魔法とか、バンバンっと生み出して星活いってみよう!」


彼女のひと声に、火、水、土、風の属性がわずかに光を強め――


彼女の意志を読み取り、望んで、静かに星の核と融合していった。


――しかし、その問いかけにただ一つ、拒む意志を示した属性があった。闇である


「……断る。成長には闘争と欲望が必要だ。無理に馴れ合いの環境に溶け込んでも、真の進化は生まれん。完全な融合は停滞である。」


その言葉にくるっと振り返る、 そして彼女はぱちくりと瞬きをした。


少しだけ驚いたように眉を上げ、顎に指をあてて、ふむ、と首をかしげる。


「えぇ~……でもまぁ、一理あるし。


無理強いはよくないよね! うんっ!」


光「……それでは、私も核と融合してまいります」


「ちょいまちっ!」


彼女がぴしっと指を突きつけて、光の属性を制止した。


「闇っちだけボッチってのはかわいそうだし、かといって特別待遇もできないから~……」


「光ちゃん、監視役兼、星全体の管理役に任命しまーす! ドヤー!」


そこで彼女は、ひょいっと自分の胸元に手を差し入れ――

すぅっと腕が、まるで水の中に沈むように、身体の中へと潜り込んでいく。

同時に、指先からこぼれ出すようにまばゆい光があふれはじめた。


「……んしょっ」


やがて、掌をぐいっと引き抜くと、そこには眩しく輝く鍵のような光が宿っていた。


「え? でもでもそんなのできな――」


彼女は光が意志表示する前にその“鍵”を、ぽいっと軽やかに空中へ放り投げた。


「壊したら大変だよ! きゃっち!」


すると、光は慌てたように軌道を変え――

鍵の落下地点へ、すっと滑るように移動した。

輝きが交差し、ふわりと星の空へと定着する。


光「わっ! うけとっちゃいました~……」


困惑のにじむ声に、波動ねえちゃんはにっこりと親指を立てた。


闇「……話はまとまったようだな。私は私だけで生態系を作る。余計な邪魔はするなよ」


そう言い残し、闇は静かに軌道を外れ、星の裏側――陽の光すら届かぬ場所へと沈んでいった。

やがてその地には、のちに“魔大陸”と呼ばれることになる瘴気と影の領域が形成されはじめる。


光「ぜ、ぜったい、いつか戻ってきてくださいよ! お母さん!」


「……ま、みんないい子にしてたらね~」


そう言って、彼女は空へひょいっと指を突き出す。


「んじゃ目印にこれ、残しておくねっ!」


指先から放たれた光が、星の重力圏に三筋の軌道を描き―― 三つの月となって、惑星イクリスの衛星としてゆっくりとまわり始めた。


「んじゃ、あとはよろぴくー!」


キャップを直し、スニーカーのかかとで地面を軽く蹴って、

虹のような残光を引きながら、波動ねえちゃんは超光速で銀河の彼方へと旅立っていった。


しばしの静寂。

そして――


「……そっかぁ、闇っちと光ちゃんは融合しなかったんだね~」


声が響いたのは、もう誰もいないはずの空間だった。

だがそこには、微かに揺れる波動の残滓が、頬に指をあててくすくすと笑っていた。


「うんうん、そういうのも“個星”ってやつだよねぇ~☆」


一拍おいて、目を細める。


「……でも、“あたしに逆らう意志”がいるっての、ほんっと~~~に、珍しいんだよね」


にやり、と唇を吊り上げた。


「あの星……これから、ぜったいおもしろいことになる。にっしっし♪」


そう言って、彼女はウインクひとつ。


次の瞬間、虹の軌跡を描きながら宙を翔け、

流星のように、銀河の彼方へと消えていった。



「……そうして、光の女神さまと闇の魔王さまは、それぞれの役目を持って、この星に根づいたのよ」


母シンシアのノアはぽかんと口を開けて、リアはじっと目を細めていた。

物語の余韻が、部屋に静かに漂っている。


 

静かに手を組み、空を見上げるようなまなざしでぽつりと私は口を開く。


「……ねえ、ママ。このお話って――作者、だれなの?」


「あら」


シンシアは少し驚いたように微笑み、そっとカナリアの頬に手を当てる。


「ほんとうに、リアは大人っぽいわね。そんなことが気になるなんて」


「……ううん、なんとなく。だって“この世界はこうしてできました”って、すごく大事なことなのに、だれが語ったのかなって思って」


シンシアは少し目を細め、柔らかい声で答えた。


「この物語を残してくれたのはね、“初代聖女アリシア・マザーマリア様”。今のセレスティア聖教国を築いた、最初の光の聖女様なのよ」


「アリシア・マザーマリア様……」


横で目をこすっていたノアが、ぱちんとまぶたを開く。


「ねぇ、それって……なんか、ママの名前に似てるね!」


その言葉に、シンシアはふっと笑った。


「そう。おばあちゃんがね、“聖女様みたいな女性になりますように”って、わたしに『シンシア』って名付けてくれたのよ」


「……へぇ。そういうの、なんかいいな」


小さく呟いたカナリアの表情は、どこか遠くを見ているようだった。


 少しの静寂のあと、ノアがぽつりとつぶやいた。


「ねぇ……魔大陸って、こわいとこなの? 怪物とか……お化けとか、くるのかな……」


 声は小さかったが、その響きには本気の不安がにじんでいた。

 その言葉に、カナリアも少しだけ背筋をのばす。


 シンシアは優しくノアの髪をなでながら、やわらかい口調で言った。


「大丈夫よ、ノア。大昔にね、“女神の大地”と“魔大陸”のあいだには、“結界”っていう目に見えない障壁が張られてるの。目には見えないけれど、とっても強い“壁”みたいなもので、お互いに行き来できないように守られているのよ」


「けっかい……?」


「そう。昔はね、魔族と人間が争っていたけど……今はその結界のおかげで、大陸の行き来ができなくなってるの。だから、魔物たちも、こっちには来られないのよだから安心して」


「そっかぁ……よかったぁ……」


すっかり夜になっていた。

部屋の明かりがぼんやりと揺れ、窓の外では虫の声がかすかに響いている。


だけど私は、母から聞いた“魔族”という言葉がどうにも胸にひっかかっていた。

たしかに今は“結界”によって大陸の行き来は封じられていて、安全だという。

それはきっと本当なのだろう。


――でも、本当に“永遠”に安全なのだろうか?


どこか、胸の奥に残るざらついた予感。

“杞憂”で終わればいい。けれど、なぜだかそんな気がしなかった。


「刀の才覚……かぁ」


あの時に感じた、魂の奥底にある“何か”。

あれは、やはりただの幻想ではない。

この世界で生きるということは、きっと――


「……何が起きてもおかしくない、ってことだよね」


そろそろ“特訓”を始めるべきかもしれない。

そんな直感めいたものが、私の背中を押していた。


窓を見上げると、夜空に三つの月が浮かんでいた。

赤、青、白――まるで童話の挿絵のような幻想的な光景。


だが、今の私は知っている。

それがただの“おとぎ話”ではなく、現実の一部だということを。


同じころ。

その月の光を受ける、遥か遠くの地ローネアン連合国。最も魔大陸に近い場所。

ここで“世界の均衡”を揺るがす戦いが、静かに幕を開けようとしていた。


それは、未来のすべてを揺るがす戦いの始まりだった――。

【☆】お願いがあります!【☆】


最後まで見ていただきありがとうございます!


ちょっとでも、


「面白いかも?」

「続きをみてもいいかな!」


と思っていただけましたら、是非ともブックマークをお願いします!


下の方にある【☆☆☆☆☆】から

ポイントを入れてくださるとさらに嬉しいです!


★の数はもちろん皆さんの自由です!

★5をつけてもらえたら最高の応援となってもっとよいエピソードを作るモチベーションとなります!


是非、ご協力お願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ