第3話 聖核印の儀 一発勝負のSSRスキルガチャ
大人たちの会話をきいて、私はいろいろわかったことがあった。
この世界は――イクリスという惑星であること。
そして、この星に生まれた“女神の民”と呼ばれる種族には、
女神様から一人ひとりに“才覚”という特別な才能と“属性”が与えられるらしい。
(あ、これたぶんテンプレ系スキル+属性の“ガチャ”だ!)
(ってことは――この世界、がっつり異世界ファンタジーってやつかあ……)
まとめるとこんな感じね
■聖印について
この世界イクリスに生きるすべての人族――人間、エルフ、ドワーフなど女神の民には、生まれながらに《聖印せいいん》が与えられます。
これはその人に宿る「才能(才覚)」と「属性」を示す、星と女神からの祝福です。
◆聖印せいいんとは?
聖印は【聖核せいかく】と【聖環せいかん】の二つで成り立っています。
・聖核せいかく……その人の「才覚」を示す印。
剣の才・魔法の才・癒しの才などの戦闘系の才能や、料理の才・鍛冶師の才・指導者の才など生活系に特化した才覚も存在し、人により千差万別です。
・聖環せいかん……7歳のときに浮かび上がる「属性との縁」。
火・水・風・土・光・闇のいずれか。ごく稀に複合属性持ちも存在します。
■聖核印の儀(生まれたとき)
生まれてから数日の間に神聖水で赤子を清めることで聖核が発現します。
浮かび上がった印に聖職者が手をかざし、どんな才覚かを読み取るのが儀式の流れです。
特別な才覚の場合は、国や教会へ即報告されるルールがあります。
■聖環の儀(7歳)
子どもが7歳になると、聖石に手をかざすことで属性との縁が浮かび上がります。
これにより、その人だけの「聖印」が完成します。
(そして私と双子の弟ノアはまさに聖核印の儀を執り行われようとしているのです! 頼む!女神様!私にSSRクラスのスキルを与えて、のどかなスローライフを送れるようにしてください!)
教会の大理石の床に、朝の光が差し込む。神聖な空気が張り詰める中、儀式の記録管が粛々と声を響かせた。
「次の赤子、グレンハースト家嫡子。長女カナリア、長男ノア。前へ。」
祭壇のそばに立つホフマン神父が、私たち双子に優しく微笑む。
「双子とは、女神の祝福の証にございます。まことに縁起が良い……まずは――長女カナリアから。」
(ついにきたああ!これめっちゃ大事な超重要な一大イベント!リセット不可の一発勝負!これによって人生の難易度変わるやつ!頼む女神様信じてるよー!頼むよー!)
私は赤子ながら興奮し鼻息をふんふんさせて神父に身をゆだねた。
神父の手によって、ふわりと抱き上げられる。
沐浴のため、暖められた神聖水が満たされた洗礼盤へと私は運ばれた。温められた聖なる水に、そっとその身を浸された瞬間――
私の左肩が、淡く光を放った。
次第に浮かび上がってくるのは、鋭く、流れるような文様。
それは“刀”を象った、見たこともない異国の印だった。
神父が目を細め、私の印へと手をかざす。指先からにじむ光が紋様に反応し、ふわりと輝いた。
「……これは……剣、いや……かたな?刀? いや、……“刀神とうしん”の才覚だと……?」
(え?今、“刀”って言った?剣じゃなくて?……それに聞き覚えがある響き…………)
場に、一瞬の沈黙が落ちる。
次に響いたのは、記録管の震える声だった。
「刀神……!? 記録にない……が、古の東方文献に類する記述が……とにかく、これは国と教会への特報事項です!」
聖堂の空気がざわつきはじめる。 才覚の名に“神”を冠するなど、誰もが生涯で聞いたことのないレベルの異例中の異例だったらしい。
(え!?刀神SSRランクキター!……って言いたいとこだけど、バトル系!? 無限増殖とか異空間収納とか、ライフハック系がよかったなぁ……でも! 最強になってモンスターバシバシたおしてお金稼ぎまくれば人生イージーモードもいけるかもグフフフフ)
「なんということだ……神の名を冠するとは……にしてもちょっと邪悪な笑みをうかべてません? カナリア」
「ゴ、ゴホン! 続いて、長男ノア――まいります。」
記録管が声を上げ、空気を整えるように告げた。弟 ノアもまた、神父の腕に抱かれ、同じ神聖水にそっと身を浸される。 しずくが滴るその小さな胸元に、柔らかな光が差した。
(ごめんね弟君。神のスキルは一人用なんだ。ガチャはパターンが決まっていてSSRランクのあとはノーマルランクの外れスキルって相場は決まってるんだよね。でもお姉さんがお金稼いで君にもおいしい思いさせてあげるからね。きたいしといていいぞ☆)
ノアの胸に現れたのは――交差する、二本の剣。
紋様は左右対称に広がり、まるで“双剣”が守り合うように刻まれていた。
「……剣神……!」
(えっ!?はいいいい??弟君もSSRランク!? あたしのアイデンティティーが1分で終了しちゃったじゃん!!)
神父が、はっきりと呟く。
神職たちの間に衝撃が走った。私が刀神、弟が剣神。
ふたりそろって“神の才覚”など、前代未聞だ。
「女神に祝福された双子……」
「記録しなければ……これはふたりそろって、特報扱いだ……!」
記録管が慌てて書き留めながら言った。
だが、その横で祖父ギャンバスがぽつりと呟く。
「……なんじゃ……木こりの才覚じゃないのか……」
少し残念そうなその言葉に、周囲が思わず笑う。
(……ギャンバスじいちゃん、まさか“木こり”に特別なロマン持ってるタイプ……?)
ホフマン神父は、父エルドに向き直った。
「私は数多の赤子をとりあげてきましたが、“神”の名を冠する兄妹を扱うなど、生きていて初めての経験です。……喜ばしきことではありますが、どちらも“戦い”にまつわる才覚……なにか、意味を感じずにはいられません。」
神父のまなざしは真剣だった。
(ちょっとやめてそのフラグみたいなの!……いま思い返せば女神様も最後たしか
「世界を頼みましたよ」
って言ってた。もしかしてお気楽異世界生活じゃないのかも。私が刀神で弟君は剣神だし、女神様……これもあなたが描いた展開なの?)
「どうか、目を離さず、大切に育ててあげてください。――それが、今この子たちにとって何よりの加護となるでしょう。」
そうして、私たちの一大イベントである、聖なる儀式は終わった。
父エルドが双子を抱えて部屋に戻ると、ベッドで休む母シンシアが、やさしく迎えてくれた。
「……おかえり。私のかわいい、カナリアとノア……」
その声に、私たちはわずかに目を細め、くすりと笑ったように見えたと思う。
(ああ、私のこの世界での数少ない癒し……優しいママン……)
(もういっそ、忘れた記憶や余計なことは深く考えないで、ふたりの子どもとして過ごすのも悪くないかもなぁ……)
「どうだったの? 儀式は……」
問いかけるシンシアに、父は少し緊張した顔で苦笑いした。
「すごいよ……。俺たちの子に、神の才覚があるなんて……」
嬉しさと戸惑いが入り混じるような声音。
でも、ママは静かに首を振った。
「大丈夫よ。逆に考えてみて? それだけ女神に愛されてるってこと。なら、心配することなんて、何もないわ」
その言葉に、父はふっと笑う。
そして赤子の私たちを見下ろしながら、そっと呟いた。
「……そっか! そうだよな、才覚なんて、どうでもいいよな。見てみろよ、この顔。かわいすぎるだろ。な、シンシア?」
ママが思わず吹き出す。
「ふふ……ほんと、かわいいわね」
ふたりの親が笑い合う中、祖父ギャンバスが、やや照れくさそうに頭をかきながら言った。
「刃物の扱いが上手いってことは……木も上手く切れるかもしれんな。よし、決めたぞ!」
ぐっと拳を握る。
「三人で木を切り出して、お前さんがつくったウッドデッキで茶を飲むことを夢にするぞい!」
(うちのおじいちゃん、すっごい前向きだな~)
(……よしっ、決めた!深く考えすぎてもしょうがない!
記憶がなくても私は私。折角この剣と魔法の世界に生まれて再出発できるんだから――人生、楽しまなくっちゃね!)
家族の笑い声が、教会の天井にそっと吸い込まれていった。
それは、静かに降る祝福の光に包まれながら、
確かに――ひとつの物語が始まった瞬間だった。
私は視線をふと隣に移す。
(……ただ、弟ノア君が転生者なのかどうか。そこはハッキリさせておきたい)
(今後の人生に関わる大事なことだし。……まあ、しばらくはこのグレンハースト家の子供として、うまく立ち回っていくとしよう)
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