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付与された最強の剣技で世界を守れって、本気ですか? ~授かりし禁忌の力は全てのハンデを無効化する~【1.5万PV突破感謝!】  作者: 寝る前の妄想人
第3章 賢者の空中庭園

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第114話 従魔と帰還と宿泊申請

戦闘は終わったので地の文をカナリア主体の一人称にもどします。

 「そりゃもう――特別加点と、ご褒美の山を期待してますからねっ!」


 言わば、本来は勝てない“負けイベントボスを撃破”という偉業を達成したわけで。

 これはもう、正当な要求でございます! おほほ。


 ……ボスといえば、ノアの相手ってどんな奴だったんだろう?

 私が見たかぎり、服にちょっと汚れはあったけど――かすり傷ひとつない。

 ほんと、余裕だったっぽいね。


 私のご褒美アピールを見て、ノアもあわてて、胸を張って主張してきた。


「えーっ! 姉さんずるい! ダンジョンを先にクリアしたのは、僕の方が先なんだからね!」


 あー……そういえば、どっちが先にダンジョンをクリアできるかって、勝負してたんだった。


 それにしても、さっきまであんなに心配して泣きそうな顔してたくせに、もうこれだ。

 ほんと、急に子どもっぽくなるんだから。


 それに、案の定、ノアの肩にとまっていた小さな新入りも「キュモッ!」と叫びながら、胸に羽を当ててぴしっと主張してみせている。

 ……あんた、完全にノアの真似じゃない。早速主人に似てきたな。


「それで、この子の事ちゃんと先生たちに紹介したの?」


 私がノアにそう言うと、

「あっ、そういえば――!」って顔になった。


 慌ててキュモを両手でつかむと、そのままギルバート先生の前に、ぐいっと突き出すノア。


 キュモはつぶらな瞳と丸を帯びた鼻を愛らしく、ひくひくとさせた。


「……あ、先生たち。この子、実は――」


 言いかけたところで、それを遮るように、ギルバートが微笑んで口を開いた。


「大丈夫だ。お前たちの行動は、しっかり“覗かせてもらって”いたからな」


 ……ああ、やっぱりかい。

 見てたんだ。ぜんぶ。


 賢者ギルバートは、何も言わずに右手を掲げた。

 すると、空間がふわりと揺れて――見慣れた“あれ”が出現する。


 宙に浮かぶ、金属装丁で革表紙には、古びた紋章が刻まれている禁書。

 勝手にページがめくれ始め、パラパラパラッと魔力の音を立ててめくられていく。


 ……相変わらずすごいな、これ。

 前回も見ているはずなのに、今回もちょっと感動してしまった。


 やがて一枚のページでぴたりと止まり、そこから淡い光が立ちのぼる。

 立体の魔法映像が、空中に浮かび上がってきた。


「こいつは――“キューモリ”だな」


「高原地帯に生息する、おとなしい魔物だ。主食は花の蜜や果実。魔獣使い《テイマー》の間のみならず、女神の民の中でも愛玩魔獣として人気が高い種だ」


 魔法映像を眺めながら、ギルバート先生がさらりと説明する。


 すぐ隣で、ストラトス先生がキュモの首元に手を伸ばして、やさしく白い毛をなでた。


「特に、首周りのこのマフラーのような“白帯”が立派なものほど、評価が高い。この子は――特に立派で美しい白毛だ。希少種かもしれんぞ」


 キュモは、まるでその言葉の意味がちゃんとわかっているかのように――

 誇らしげに胸を張ると、白くふわふわした襟元を、ふわりと揺らしてみせた。


「……キュモッ!」


 その様子がもう可愛すぎて、

 私とノアは顔を見合わせ、思わず――ぎゅっ。


 両側からキュモを抱きしめると、キュモはきゅも~っと甘えた声を漏らし、

 目をとろんと細めて、うれしそうに身を預けてきた。


 そしてふと賢者へ視線を向けると――

 ギルバート先生は魔導書をパタンと静かに閉じ、地面を指さし、淡々と語り出した。


「空中庭園の地下迷宮ダンジョンには、世界各地の魔力の流れに沿って、定期的にモンスターが転移陣を通して入り込む仕組みになっているからな。この個体も……おそらく、その一匹だろう」


(やっぱり……ダンジョンって、空中庭園の“地下”にあるものだったんだ)


 心の中でひとつ、疑問が解けた気がした。


 ギルバートは話を続ける。


「とはいえ、群れではなく、単体でキューモリが紛れ込むとは……」

「ふむ、こいつも……不運なやつだったかもしれんな」


 その言葉に反応したのか、キュモがぴょこっと一回転して、控えめに羽ばたいてみせた。


 でもその背中は――

 “それでも、ここに来れてよかった”って、どこかそう言っているように、私には見えた。


「……では、戻るとしよう」


 ストラトス先生がそう静かに言うと、

 その声に導かれるように、私たちはゆっくりと歩き出した。


 夕暮れの空に、キュモの小さな羽ばたきが重なって――

 私たちは、空中庭園の館へと、静かに戻っていった。


 ◇◇◇

 空中庭園ギルバート・レアー中央ロビー


 私とノアがロビーに入った瞬間――

 目に飛び込んできたのは、マルシス先生だった。


 まるで肖像画の一部みたいに、ソファにきれいすぎる姿勢で腰かけている。

 背筋はまっすぐ、視線は前を向き、動きひとつ乱れていない。まさに“完璧”。


 ……なのに、口のまわり結構な量の粉砂糖がついている。


 そのギャップに少し吹き出しそうになる。


 机の上には、すでに飲み干された紅茶のカップと――

 空になったスイーツの皿が、名残惜しそうに置かれていた。


「二人ともおかえりなさい。私も少し前に来たところです」


(……いや絶対、さっきまで優雅にお茶してたでしょこの人)


 その奥――

 アデル先生が通信用の水晶を手に、誰かと話している。

 黙々と、でもぺこぺこ頭を下げていて、あれはあれでなんか新鮮。


 相手は誰なんだろう。……たぶん、教会? 帝国? それともストラトス先生の関係者?


「カナリアさん。話は聞いています。ケガの具合を確認しましょう」

「先に行くので、落ち着いたら来てください」


 マルシス先生が、すっと立ち上がってそう告げた。

 姿勢を崩さず、美しいウォーキングで、そのまま廊下の奥へと消えていく。


「……あ、本人たちも帰って来ました!」


 アデル先生が通話水晶に向かってそう声をかけると、

 私たちの背中をぐいっと軽く押して、水晶の前へと立たせてくる。


「……話、合わせてくれ」


 そんな小声の一言とともに。

 促されるままに前へ出ると、そこに映し出されていたのは――


「お父さんと……お母さん!?」


 水晶の向こう、くっきりと浮かぶ二人の姿。

 父・エルドと、母・シンシアだった。


「今日は泊まっていくって……本当なの?」

 シンシアの声は、どこか不安そうで――でも、ちょっと嬉しそうにも聞こえた。


「ご迷惑じゃないのか?」

 エルドは相変わらず、他人様への気遣いが第一。


 (あー……あるある。他人のおうちに泊まるのに妙に厳しい親パターンだこれ。さてさて、どうやって説得したものか……)


「……っていうか、二人とも! なにその格好!? 泥だらけじゃない!」


 シンシアが、画面越しに身を乗り出してくるような勢いで、

 私とノアの服に注目して声を上げた。


 ノアが口を開きかけた、その瞬間。

 アデルの手が、すっと伸びた――

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