イドの崩壊
「ねえ、海星」
俺がベッドで横になっていると、来夢が話しかけてきた
「さっき間宮さんと何話してたの?」
「え、見てたの?」
「うん、気分転換に外出たら二人が居たから」
「盗み見とか趣味悪いなあお前」
「えー?それはそっちもだろ?」
「んー?なんのことー?」
「たく……」
俺は起き上がり、水を一口飲んだ
この崩壊世界では水は貴重だ、大切に飲まないと
「それで?なんの話してたの?」
「別になんでもねえよ、ただの世間話だ」
「神奈にこの事言っていい?」
「別にいいけど……変に脚色するなよ」
「へえ、隠さないんだ」
「やましいことはないからね」
来夢は驚いたような表情をしてから、そっと微笑んだ
「やっぱ、海星は素直だね」
「なんのことだよ」
「別にー?」
「ふっ、なんだよそれ」
俺は久しぶりに心から笑えた気がした
神奈とデートした時も、恐らく俺は心から笑ってなかっただろう
所詮は上辺だけの笑顔、外面のためだけに上手く仮面を被っただけの偽物
神奈を悲しませないためだけの、ただの嘘つき
来夢、俺は素直なんかじゃない
ただの偽善者だ
正義のヒーローみたいな言葉をつらつらと並べて相手を自分の思い通りにする
最低な男だ、俺は
「ねえ……海星」
神奈だ
「どうしたの?」
「その……さっきはごめん」
「きっと……傷つけちゃったよね、海星のこと」
「……それはこっちのセリフだよ、ごめん」
「神奈は悪くない、勝手に俺が荒れただけだから」
またかよ
その口を閉じろ、馬鹿者が
「その事について神奈が謝る必要はない、俺が悪かったごめん」
黙れ黙れ黙れ黙れ
その口を開くな!
上辺だけの言葉なんて気持ち悪いんだよ!
「神奈」
「どうか許してくれ」
「……わかった」
「でも絶対!今後私を悲しませないでね!約束だよ!」
「……うん、約束!」
そう、約束したはずなのにな
その日の夜、俺は眠れなかった
いくら寝ようと目を閉じても、枕を変えても、ベッドを変えても寝れなかった
目の前には、寝ている神奈がいた
「ん……誰かいるの?」
声にならない声で、神奈はそう言った
「かはっ……!?」
なにを思ったか俺は、無言で神奈の首を締めた
「かい……せい……?」
神奈の顔が、どんどん赤く染まっていった
それを見て俺は奇妙な興奮を覚え、更に首を強く締めた
「やめ……て……」
神奈は気を失ってしまった
もう、俺の心は限界だった
自分自身に追い詰められ、自分のせいで神奈を悲しませてしまった
もう、なにが正解でなにが間違いかがわからない
「もう……いいや」
神奈が纏っている布を脱がせ、その下にも履いている布も捨てた
そして俺は自分の男根を露出させ
一心不乱に神奈を犯した
他の人にバレないように、最も近くにいる来夢にバレないように
神奈の声を漏らさぬように
首を締め、喉を手で塞いだ
漏れ出すのは甘い吐息と、ぐちょぐちょ言うお互いの性器だけだ
気がついた時には、もう遅かった
横を見れば、全裸で横たわった神奈がいた
口からは涎と鼻水が吹き出していた
そして性器からは、白くて粘性のある液体が流れ出てきた
「……ッ!」
俺は近くにあったゴミ箱に顔を埋めた
そして口からは液体が流れ出し、その間に理解した
俺は神奈を犯したんだ
田村宮に怒ったのはどこのどいつだ?
奏撫さんに説教垂れたのは
ドコノドイツダ?
狭山家を壊したゴミよりも、自分に価値がないといい自ら肉便器になろうとしたやつよりも、俺の方が何倍も惨めで最低じゃないか
殺せ 殺セ 殺シてクレ コロシテクレ
殺してくれ