自問自答
「疲れた
もう、なにもしたくない
言いなれないセリフを言ったからだろうか
身体の疲労感がすごい
今にも眠ってしまいそうだ」
大罪を犯した自覚はあるのか?
「誰だ?
聞き慣れた声だ、毎日聞いてる、いつもの声
だが、誰かわからない
おい、お前は誰だ!」
自分のこともわからないままでよくあんな口を叩けたな、夜野海星
「誰だと言ってるんだ!お前は誰だ!」
しょうがないから出てきてやるよ
「……お前は……!」
俺は夜野海星、誰でもないお前自身だよ
そんなことより、お前、自分が犯した罪をわかってねえのか?
「罪ってなんだよ……」
はあ……まだわかってねえのかよ……
お前、いつまでヒーロー気分でいるつもりだ?
「……!」
零ちゃんを助けて?奏撫さんも救って?大層なご身分ですこと
なあ、お前はヒーローじゃねえんだよ
お前、自分で言ってただろ?「俺は普通だ」って
なんで普通のくせに人助けしてんだよ
「それは……!」
「普通」でも人が困ってたら助けますってか?
確かにそうだな、「普通」でも人を助ける権利くらいはある
でもな……
行き過ぎた手助けをする奴は、「普通」とは言わねえんだよ
「……!」
なあ、お前は「普通」に生きたいんだろ?なら面倒事が起きても「自分は関係ありません」「貴方達の問題は貴方達でなんとかしてください」って言えば良いじゃねえか
それが「普通」のやることなんだろ?
面倒事には絡みたくないよな、「普通」なら
「……」
おいおい、自分の立場が危なくなったらだんまりか?とんだクソ野郎だな
これじゃ「ヒーロー」にも「普通」にもなれねえな
お前に合うのは「悪役」だ「悪役」
性格が悪いクズ役が向いてるだろうな
「……そうだよ?」
あ?
「そうだよ……俺は……」
「俺は「普通」なんだ……いや「普通」でないといけない」
「「ヒーロー」でも「悪役」でも駄目なんだよ」
「俺は「普通」どこにでもいる「普通」の高校生」
「俺が演じるのは「モブ役」だ、みんなより特出した点もなく、劇が終われば忽ち忘れられるような「モブ」が似合ってるだろう」
「認めるよ、俺は大罪人だ」
……そうか、認めるか……
ならもう一つのことも認めねえとな
てめえさっきから誰に話してやがる?
「……」
俺にこんな言葉を述べさせて
「……」
言いたくない言葉を述べ
「……」
あまつさえ自分は「モブ」だと貶す
「……」
さっきから誰に話してやがる?
「俺だよ」
「誰でもない俺自身」
「さっきから話してるのは、俺が作った空想上の俺」
「このストーリーの中での役は、俺がヒーローでお前が悪役だ」
「今もそうだ、こうやって一人二役をして、なんとか気持ちを落ち着かせたいだけなんだ」
そのために俺を生み出したのか?
「そうだよ、俺にとって都合の悪い相手を作ることで、自分の弱さを自覚するんだ」
はっ、都合のいいおつむだな
「それでもいい、俺は今を必死に生きてるんだから」
「じゃあ、そろそろ現実を見るよ」
「俺は「ヒーロー」でも「悪役」でもない」
「一般的でなんの特徴もないただの」
「「普通」だ」