対面
しばらく歩くと、人が集まっている場所に出た
フードコートだ
「おい、俺達以外にも生きている人達がいたぞ!」
「……誰……この人達……」
フードコートには、色んな人がいた
十代から四十代までだろうか
よく見ると、子供もいた
霞ちゃんや桃ちゃんよりも、明らかに小さい
「霞ちゃん……?」
「え……零!?」
「ほんとだ……零だ……」
「知り合い?」
「う、うん……友達の……」
俺が見かけたちっちゃい子は、霞ちゃんと桃ちゃんの友達だった
三人とも、かなり距離が近い
「霞ちゃん、この人達は?」
「私達と一緒に、ここにつれてきてくれた人達……」
「夜野海星だ、よろしくな」
「木谷神奈よ、よろしくね」
「狭山零です……よろしくお願いします……」
「おい零!早く戻ってこい!」
「おい田村宮、そんな風に言わなくてもいいだろ……!」
「ああ!?俺に意見すんのか!?門藤!」
「ご、ごめんなさい……」
零ちゃんは、泣きそうな表情で、男達の元へ走っていった
「あの、そんなに言う事ないんじゃないですか?」
俺の中で、なにかが弾けた
「ああ!?なんだお前」
「そもそも、こんな世界なんです、争いをするだけ無駄じゃないと思わないんですか?」
「頭が悪いんですか?それともただのロリコンですか?どちらにしても気持ち悪いですね」
クソガキィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「殺してやる!!」
大柄な男がこちらへ全速力で走ってきた
「はいはい、落ち着いてくださいよ田村宮さん」
「邪魔すんな!浅田!」
「この人の言う通りだと思います、今はこんな争いしてる暇はない」
それを、一人の小柄な男が静止させた
「くっ……」
「驚かせちゃってごめんね、この人……田村宮さんも焦ってるんだ、この先どうすればいいか」
「悪気はないと思うんだ、だからどうか恨まないであげて」
「別に……恨むわけじゃ……」
「僕は浅田来夢、十四歳だよ、君の名前は?」
不思議だ、来夢の言葉を聞いていると、気分がぽかぽかしてくる
こんなのは初めてだ
「夜野海星……十七歳……」
「あ、歳上だったんだ、ごめんね、いや、ごめんなさい、タメ語で喋っちゃって」
「いや、いいよ、敬語使われるの苦手だし……」
「あ、マジ?よかったー……」
「それにしても、『海星』か……」
「いい名前だな……」
初めて言われた
神奈にも、そんなこと言われたことなかったのに
「私は木谷神奈、同じく十七歳よ、よろしくね来夢」
「私もタメ語でオッケーだよ」
「うん!よろしく、海星、神奈!」
「仲良くやってるか、お前たち」
振り向くと、そこに居たのは神谷さんだった
「神谷さん……」
「皆さん!一旦集まって貰えませんか」
後ろには江川さんもいた
そして、フードコートにいた全員が神谷さんと江川さんの近くに集まった
「結論から言う」
「もうこれ以上、人が増えることはない」
「え?」
「どういうことですか?」
「……トーキョーで唯一残っている建物がここだけ、ここは水道、ガスこそ通ってないが、どういうわけか電気はある」
「ここはショッピングモールだ、万一の時のために、食糧や水の備蓄はあるはずだ」
「それに、先程アラ川を見てきましたが、汚れていました」
「そして水底に、死体が大量に落ちていました」
「そんな……」
「ここ以外に、人が避難できる場所はないんですか?」
「儂は地理は詳しくないから、適当なことしか言えんが……」
「少なくともオーサカ、アイチ、ホッカイドーと海外は残っていると儂は考えておる」
「今、自衛隊がフル稼働で救援物資を各地に届けておる、いずれ、ここにもくるじゃろ」
「それまでは、ここで大人しく生活するしかないな」
俺はただ、黙って話を聞いていることしかできなかった
全てが日常と違い、今までなんの疑いもなく俺が送ってきた日常は、薄氷の上にあったものだったと思い知らされた
「そんなわけで、まずはここにいる全員で自己紹介と行こうか」
「自己紹介?」
「ああ、これからここで同じ釜の飯を食う仲間だ、まずはお互いに名乗らないとな」
「では、儂から時計回りで名乗っていこう」
そんなわけで、自己紹介が始まった
俺は四番目に自己紹介することになった
「儂は神谷茂蔵、御歳八十四歳の老耄ジジイじゃ、よろしくな」
「江川花梨、二十六歳です、自衛官やってます、よろしくお願いします」
「浅田来夢、十四歳です、よろしくお願いします」
俺の番になった
「夜野海星です、十七歳です、えっと、よろしくお願いします」
「き、木谷神奈です、えっと……不束者ではありますが、皆さんのお役に立てるよう精一杯頑張ります!」
「紫乃霞、十三歳よ、桃に変なことしたら殺すから、よろしく」
「えっと……し、紫乃桃です……霞とは双子で……えっと……よろしくお願いします……」
「門道雷、二十歳だ、よろしく」
「田村宮丸、四十六だ、よろしくな」
「さ、狭山零……十歳です……あ、よろしくお願いします……!」
「間宮奏撫、十八歳です……」
「烏鷺凛斗……二十歳……です……」
「谷上信士、五十六だ、よろしくな」
「有明瑠美……十四歳……愛に近づいたら容赦しないから……!」
「瑠美……もう、やめてよ恥ずかしい……あ、鬼灯愛です……十四歳です……」
「文谷仁、二十二だ、よろしく」
「小倉高敏三十七やよろしくな」
「……古見倫太郎……三十二……歳……です……」
「これで全員かの?」
「はい」
こうして、長い長い自己紹介が終わり、これから、もっと長い共同生活が始まることになった
「では、各々で三人班を作ってくれ」
「班?」
「ああ、これから生活していくからな、できるだけ少人数のほうがいいと思う」
「各々の相性とかもあるじゃろ、この人なら上手くやって行けるみたいな」
班……か……
そんなものを作るのは、中学校以来だ
別に、班行動に文句がある訳では無い
ただ、俺に人が集まるかと言われたら、そんなことはない
カースト最下位の、底辺グループに入れられるのかな
「海星、私と班組まない?」
「え?いいけど……俺でいいの?」
「いいに決まってるでしょ?私達、もうお互いの大事なものあげたんだし」
「……そっか……」
まさか、神奈から求められるとは思ってなかった
神奈は、霞ちゃんや桃ちゃんと組むと思っていたから
「ねえ、そっちはもう決まった?」
「来夢……」
「いや、まだ決まってないけど……入る?」
「え!?いいの!?」
「もちろんだよ、来夢」
「やったー!海星と神奈がいるなら安心だね!」
「そうかな……」
俺のところは決まった、あとは他がどうなるか……
なかなかに癖が強いメンバーだったから、どうなるかは心配だな
一時間経ち、結果がわかった
茂蔵さんがその情報を紙に書き、壁に貼った
一班
浅田来夢
木谷神奈
夜野海星
二班
江川花梨
紫乃霞
紫乃桃
三班
有明瑠美
烏鷺凛斗
鬼灯愛
四班
小倉高敏
文谷仁
谷上信士
五班
神谷茂蔵
古見倫太郎
間宮奏撫
六班
狭山零
田村宮丸
門道雷