出会い 4日目~7日目
4日目
犬には留守番してもらって、食料の買出しに出かける。
(あと3日で預かり先を探さなくては。いくら手がかからなくて可愛くても、いつまでもこのままではいられない)
犬は今まで一度も吠えていない。
体格は大型犬そのものなのに動きがしなやかで静かだ。
帰ると犬が玄関の前で尻尾を振りながらお座りをしていた。
お風呂は昨日と一緒の状態になってしまった。
(どんどん情が移っていく。早めに手放さなくては……)
5日目
犬の様子が落ち着かない。
朝からなんだかそわそわしている。
夜の帳が下りたころ、犬がドアの前でクゥクゥと小さく鳴き始めた。
近づくとじっとこちらを見つめる。
ふいに、犬は元いたところへ帰るのだと解った。
犬の前に膝をついて目線をそろえる。
すると犬がほっぺたをぺろぺろと舐めてきた。
目を閉じる。
犬は温かい舌で顔中を丹念に舐め回した。
最後に優しく唇を舐めた。
唇に牙が軽く刺さり血が出る。
犬はそれを舐め取る。
目を開くと間近にブルートパーズの瞳があった。
しばらく見つめあったあとに、重い腰を上げてドアを開けると、犬はそこから音も無く外へと出ていった。
6日目
保健所や警察には探し主が見つかったと嘘の連絡を入れた。
ネットの迷い犬・里親探しの掲示板からは犬の情報を削除した。
部屋を掃除したあと、その日一日はぼんやりと過ごした。
7日目
何事もなかったかのように休みを謳歌する。
ショッピングをして、お茶を飲んで帰ってきた。
次の日から仕事が始まるのだから、気持ちを切り替えなくては。