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アルとメリアの怪異奇譚  作者: 阿本くま(もちまる/榎本モネ)
パリの都
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不思議な婚約者③ -迷推理-


 翌日、俺が目を覚ました頃には、メリアがアンドレ様の調査から戻ってきていた。


 テーブルを挟み向かい合って椅子に腰をかける。メリアが用意してくれたホットミルクを飲みながら早速報告を聞いた。


 まずはバーベナ姉さんから得た情報。ここでもアンドレ様はいつもとは違う行動をしていた。日中、今までとは違って使用人に用事を任せているとなると、アンドレ様は仕事が忙しくて手が離せないのか?それとも、まさかとは思うが愛人を作って入れ込んでいるのではないだろうか。

 もしそうだとすると、ルイーズ様とのお茶会を夜にずらし、愛人との逢瀬を日中にしているとか……。アンドレ様の人柄を考えると、ないとは思いたいが、様子が変わったきっかけが愛人の影響という可能性も捨てきれない。


「なにそれ。ほんとにそうだったらアンドレ様最低」

「まだ決まったわけじゃない。あくまで可能性があるってだけだ」


 怒るメリアをなだめて次の情報を促す。次は屋敷の使用人からの情報だった。これが1番謎めいていた。屋敷中のカーテンを閉め切り、鏡を捨てさせる理由は何だろうか?


「私、カーテンはよくわからないけど、鏡についてはわかる気がするんだ」


 わかるのか?メリアはいつになく真面目な顔をして俺をみている。そして意を決したように口を開いた。


「太ったからかもしれない。太った自分って見たくないでしょ?それか顔に出来物でもできたのかも」


 一瞬でもメリアに期待した俺が馬鹿だった。


「残念だがそれはハズレだな。昨日お会いしたアンドレ様は体型も以前と変わらないし、顔に出来物もなかった」

「なんだ、違ったのか」


 よほど自信があったのか、メリアは目に見えてガックリしている。なんであんな迷推理でそんなに落ち込めるんだ。双子とはいえ、こいつの感性がわからない。


「でも、それならなんで鏡を捨てたのかな?カーテン閉めてるのもよくわからないし」

「そうだな……。鏡についてはわからないが、カーテンについては2つの可能性がある。1つは病気だ」

「病気?」


 そう、陽の光が苦手で日中は部屋に閉じこもっている息子がいるという話を、以前ランタン持ち仲間から聞いたことがある。陽の光が目に入ると眩しくて仕方がないらしい。


「じゃあアンドレ様もその病気かもしれないってこと?」

「ああ」

「じゃあもう1つの可能性は?」


 アンドレ様がカーテンを閉めている理由がもし病気ではないとしたら、考えられるもう一つの可能性は……。


「悪魔だ」


 俺の言葉にメリアの顔がこわばった。


 事件が落ち着いた頃、あの悪魔の行動を思い返してどうしても引っかかることがあった。夜に活動するイメージが強い悪魔が日中も活動していたことだ。あの悪魔が日中も活動できていたのは薄暗い森だからであって、通常はやはり陽の光が苦手なのではないか?

 悪魔と陽の光について気になった俺は、図書館で悪魔に関する本を読み漁った結果、個体差はあるが悪魔は陽の光が苦手だということがわかったのだ。


 悪魔に取り憑かれたレオンは陽の光は大丈夫だった。となると、アンドレ様は悪魔に取り憑かれたのではなく、成り代わられた可能性があるのではないだろうか?


 そのことをメリアに説明すると。


「病気はともかく、悪魔かどうかなんてどうやって調べればいいの」


 そう言ってメリアは頭を抱えた。俺だって同じ気持ちだ。病気については屋敷の使用人から聞き出すことができるだろうが、悪魔についてはどうしたものか。


 とりあえず、悪魔かどうか見分ける方法は後々考えるとして、他の情報はないかメリアに尋ねる。


「そうだった!とっておきの情報があるよ!こっちだったら悪魔よりなんとかなりそうなんだけど」


 そう言ってメリアはキース伯爵家の隠し子騒動について語り始めた。

 なるほど隠し子か。もし隠し子がアンドレ様に成り代わっているとしたら?偽物だとバレないようになるべく部屋に閉じこもっているという可能性もあるな。

 病気なのか、悪魔なのか、それとも隠し子なのか……ここをもっと調べるべきだろう。


「じゃあ明日はアンドレ様が浮気しているのか、病気を患っているのか、隠し子に成り代わられてないかどうかを調べるんだね?」

「ああ、悪魔の見分け方がわからない以上、まずは悪魔以外の可能性を調べて、潰していくのがいい」


 今日は幸い仕事が入っていないため、明日俺もメリアと一緒に調査ができる。

 明日の夜、ルイーズ様の付き添いで再びキース伯爵を訪れる前に、ある程度答えが出てくれるといいんだが。


 話し合いを終える頃には外は茜色に染まり出していた。夕飯を済ませた俺たちは明日に備えて早めに寝ることにする。


 ついさっき起きてきたばかりだから眠くはないが、メリアと一緒にベッドに入り目を瞑った。明日の調査でもしアンドレ様が浮気をしているわけでもなく、病気でもなく、隠し子に成り代わられているわけでもなかったとしたら……。


 嫌な想像はやめておこう。とにかく、明日何らかの答えがでるはずだ。そう自分に言い聞かせて、スースー聞こえてくるメリアの寝息を聞きながら、俺も眠りについた。


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