目覚ましが痛い
高雄・鳥海・愛宕・摩耶の活躍をおバカ展開で書いてみたのでお気楽に。
1942年8月08日夜
「痛いですわ」
ここはどこかしら?え~と、海図台を見るとガダルカナル沖ですって?知りませんわ。どのような海域なのでしょうか。
そして、誰が私を傷つけたのかしら。
連合軍って?アメリカ海軍?それなら仮想敵としてさんざん訓練はしましたわ。
艦橋の縮小工事を受けて眠っていましたが、この起こされ方は嫌ですわ。
ぷんすこ
起きてしまったのでは仕方がないですわね。お姉様や妹たちと連絡は出来ないかしら。
頭が小さくなってしまったせいか、上手く考えがまとまりませんわ。私がおバカなのではなくて、起きたばかりで頭がはっきりしないでせいですわ。きっとそうですわ。
1942年月11月14日昼
「きゃあ!」「熱い、燃えてる」
早く消して。魚雷はポイよ。早く早く。
ここはどこなの。ソロモン海域?なんでこんなとこで戦争してるの。マーシャルではないの?
お姉ちゃんはどこ。
頭悪くなったのかな。連絡できない。まさか沈んでないよね。
1942年月11月14日夜
「痛~」
誰よ。私のかわいい体に穴開けたのは。ああ、お醤油が。もったいない。
それはそうと、ここはどこなの。
ガダルカナル沖?どこそれ。姉さんはどこ?
1943年11月05日昼
「ぎゃあ!」
あら、はしたない。言い直しますね。
「きゃー」
痛いわね。まあ、傷ついてしまったわ。戦争しているのね。ここはどこなの。
ラバウル?どこなの?
妹達はどうしているのかしら。まさか沈んでいないと思いたいわ。
「お姉ちゃん。目が覚めたの?返事して」
「愛宕なの。もっとおしとやかにしなさい。目は覚めたわよ。頭がぼうっとしていますが」
「お姉様。おそらく艦橋縮小工事の影響かと思いますわ」
「鳥海ね。そう言えば、あの工事の後眠りに就きましたね」
「姉さん。おはよう」
「摩耶、おはようで、いいの?」
「いいの」
本土で修理を受けた四姉妹が再び戦場に姿を現したのはフィリピンだった。
1944年10月23日 パラワン海峡
「四隻揃った私たち姉妹に怖い物はないわ」
「お姉様。それは言いすぎではなくて」
「そうそう。頭も悪くなったしね」
「愛宕はそんな事言わないの」
「ブー」
四姉妹は少し前から艦の掌握を試みていた。眠っている間に装備が変わっているのだ。艦橋周りなどアンテナだらけである。*眠る前より
四隻揃い踏みしないと、頭が悪くなったせいか上手くいかない。この時が最後の機会であろう。
そしてそれは成功した。ついでに性能もなぜか上がっている。
「お姉ちゃん。右舷22号電探に反応あり」
「愛宕は潜水艦警報よ」
【愛宕より。右舷に潜水艦らしき電探反応あり】
【愛宕だと】
【追信「岸波は対潜戦闘開始せよ」】
【『艦橋、機関室。いきなり機関増速しました。原因不明』】
【機関室、艦長だ。そんな訳『艦橋、操舵室。舵が勝手に動きます。取舵』あるか‥なんだ?】
【それよりも潜水艦だ。全艦、艦長だ。対潜戦闘始め。爆雷戦用意】
【本艦が潜水艦警報だと。誰が出した】
【分かりません。勝手に出ています】
【なんだとー!】
【『艦橋。こちら操舵室。舵輪、勝手に動きます、制御できません。本艦面舵』】
【操舵手!ふざけているのか】
【『ふざけてなどおりません。事実です』】
【舵輪を艦橋へ寄越せ。こちらで舵を取る】
【『了解。舵渡します』】
【なんだ。本当に舵が取れんぞ】
船体が左へ傾き面舵だと分かる。
【岸波。隊列離れます。潜水艦警報出しています】
【なんだと。岸波に問い合わせよ】
【岸波より返信「我敵潜水艦機械音探知」】
【岸波より追信「これより爆雷攻撃をせんとす」】
「岸波は経験不足だし、まだ小さい子だから私達が手助けしないとね」
周囲にも影響を及ぼせるようになっていた。一番近いのが愛宕だった。ただ、まだその範囲は狭い。
しかし岸波の位置が近いことも有り、本来の電探と聴音機の性能なら絶対に探知できない潜水艦2隻を撃破した。
艦隊司令部と動いた艦はパニックだった。それはそうだ。勝手に動く船、何故か探知できた潜水艦。それを撃破してしまった。
天佑と言う者もいたが、そんなものではないと誰もが感じ取っていた。
他の艦はのどかなものだ。岸波に奮闘を称える信号送っている。
艦隊はパラワン海峡を無事通過した。
1944年10月24日 シブヤン海
「敵機ね。私たち四姉妹がいるわ。全部は無理でも半分くらいは」
「お姉様。きっと摩耶が活躍しましてよ」
【電探室より艦橋。敵機接近中】
【対空戦闘用意】
【各艦、所定の行動を取れ】
「高雄先輩。敵機が近いです」
「武蔵はシャキッとしなさい。せっかく高角砲が倍になったのです。威力見せてください」
「そうですよ、武蔵。一番強力な対空火力は私たち姉妹です。全艦を守るくらいの気概を見せてね」
「はい。大和姉さん」
輪型陣は艦数が多いため前後の2群に分かれている。駆逐艦が15隻しか同行していないために、外周防御は薄い。もっとも、高角砲を積んでいない駆逐艦では賑やかししか期待できない。
しかし、賑やかしでも機銃は本物で平射砲である主砲よりも頼りになる。
第一遊撃部隊 第一部隊
島風
秋霜 能代 早霜
鳥海 愛宕
大和
藤波 岸波
武蔵
浜波 沖波
長門
高雄 摩耶
第一遊撃部隊 第二部隊
浦風 野分
矢矧
妙高 羽黒
浜風 金剛 清霜
熊野 鈴谷
榛名
利根 筑摩
磯波 雪風
スカスカの隊形であり、駆逐艦は相互掩護など望むべくもない。
「駆逐艦達は自艦防御に徹してもらうことになります。良いですか」
「「「「「「「はい!高雄姉様」」」」」」」
「いい子達ですね。必ず帰りますよ」
「「「「「「「はい!高雄姉様」」」」」」」
「あの子達は良いけれど、長門姉様が目を覚まさないわ。どうしましょう」
「長門姉様ですか。擦り傷程度だと目が覚めないのでしょう。どうします大和姉さん」
「当たらないことを祈るだけね」
「摩耶が守ります。高角砲が増えましたから」
「あら、お願いしますね」
「私も高角砲が八九式になり高射装置も新型になりましたので頼ってくださいまし」
「頼もしいですね。では高雄さんにお願いしましょうか」
「お任せあれ」
岸波艦橋
【砲術。先程勝手に艦が動いたが、今回も動くかも知れない】
【艦長、どうしますか】
【任せる】
【はっ。・は?任せるとは】
【艦に任せる。機銃と砲弾の装填はやれ。照準も発砲タイミングも艦に任せてみろ】
【よろしいのですか】
【勿論、操作するのは我々人間だ。だが、先程も通常では探知できない敵潜を探知し爆雷攻撃も正確だった】
【そうでした。水雷の顔が引き攣っていました】
【操舵室から操舵手の悲鳴も聞こえたし、俺も操舵が出来なかった。それで戦果は撃沈2隻だ。だから基本的な操作は我々がやるが、細かい照準や発砲タイミングを任せてみよう】
【しかし艦長】
【言いたいことは分かる。訓練を積んできたのだ。より当たるからと言って艦任せには出来ないだろう。しかし、前部機銃台だけでも任せてみないか】
【前部機銃台くらいでしたら、賭けてみるのも良いかと思います】
【よろしい。機銃指揮にはよく言い聞かせてくれ。どうしても不満がるならここまで連れてこい】
【はっ】
(前部機銃台の九六式25ミリ3連装機銃2基だけなの。もっと任せてもいいんだよ。仕方ないなー)
【何か聞こえなかったか】
【いえ、私の耳には】
【空耳だったか。すまんな】
対空戦闘は始まっていた。40機前後と少ないが直衛機のいない艦隊には驚異であった。
雪風
「こっち来ちゃいやー」 取舵一杯
【勝手に舵が】
浜波
【撃てません。機銃が言うことを・「お前なんてこうだ」ガガガガガ・あれ?】
【命中した?撃墜だ】
【弾切れだ。弾倉交換急げ】
大和
「甘いわね。照準はこうやって付けるの」
【高射装置、勝手に旋回します】
【なんだと、故障か】
【いえ、敵機には追尾しています。高角砲も連動しています】
「撃」
ドーン ドーン
【勝手に発砲信号が】
大和の片舷6基の高角砲は3基1群として高射装置2基が指揮を取っていた。
弾幕に捕らえられた敵機が2機墜ちていく。
【は?墜とした?何でだ】
【機銃指揮装置、勝手に追尾中。こら、そいつじゃないぞ】
「いえ、こいつでいいのよ」
ガガガガガ
【また墜ちただと。どうなっている】
【高射長。こうなったら任せませんか】
【任せるだと】
【正確に狙えて、そして結果が出ています】
【そうだが・・・・よし。神様が助けてくれるのかもしれん。弾倉交換と装填を急げ】
最初にやって来た敵攻撃隊は武蔵前甲板に小型爆弾1発を命中させただけで半数近くが撃墜されてしまった。
次にやって来た攻撃隊はもっと悲惨だった。命中弾無し。半数が墜とされた。
敵の第3次攻撃隊は100機近い機数で突入してきた。
さすがに捌ききれるものでもなく、
武蔵被雷1、被弾2。戦闘および航行に支障なし
長門被弾3。火災発生。鎮火せず。 機銃多数使用不能。
妙高被弾2。右舷カタパルト損傷、後部指揮所損壊、機銃多数使用不能。
矢矧被雷1。傾斜回復せず。
野分被弾2。後部砲塔使用不能。後楼倒壊。機銃多数使用不能。2番発射管使用不能。
多数の艦で機銃掃射を受け機銃員を中心に被害が出ている。
敵機は30機ほど撃墜し、20機以上を撃破した。
この空襲後、矢矧は野分と共にマニラへ後退する事になった。マニラはいつ空襲を喰らうかわからない事から、応急修理地に使うだけでその後は本土に回航する。
次回更新 02月29日 05:00予定
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