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【完結】--新生--生まれ変わって山へ、宇宙へ  作者: 浅間 数馬
第三章 宇宙へ

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5. 新しい人生

新生した日の夕方、介助を受けて重湯を飲むように食べた。初めての食事に胃腸が驚いて動いている。ああ、この感じ。ちょっと懐かしい。

食後、することもなく微睡んでいると、全自動車椅子に乗って若い女性がやってきた。どこかで会ったことがあるような。


「やっと逢えたね。今度は同い年だよ」

「光!?」

「うん。無理言ってね、同じタイミングで新生させてもらったの。あたしは2日前に。また一緒に生きられるね!

それにしても酷いよ。『管理職だから危ないところには行かない』なんて言っておいて崖崩れに飲み込まれちゃうなんて。あたしを未亡人にするなんて許せない!」


全く記憶にない。そりゃそうだ。ソーシャルワーカーさんから聞いたところによれば、俺が死んだのはニューロンパターンをスキャンした翌年のことだからな。どうも、死ぬ前に言った言葉らしいが、知ったこっちゃない。知らないが、取りあえず謝っておくか。


「済まない」

「『済まない』じゃないよ! 全くもう!」


いや、しかし……


「前より目が大きくなったんじゃないか?」

「目だけじゃないよ」


胸を張って強調してくる。


「『期待してて』って言ったでしょ!」


何のことだか解らずキョトンとしていると光が慌てた。


「そっか、そっか、何でもない。それでね、顎のラインもシャープにしてもらった」

「おお! そう言われれば。一層キレイになったな」


俺の褒め言葉に光は気を良くしている。フリかもしれない。何か言いにくいことがあるのかな。ま、そこは追求しない。それが夫婦円満のコツだ。

あれ? 俺、死んだし、光も新生したから婚姻関係消滅してるか? ま、光がいつも通りだから気にすることないかな。


「で、子供達は?」

「未来と樹家族が揃って明後日見舞いに来るよ。孝が車椅子移動できるようになったら面会室が使えるからね」

「樹家族って? 結婚したのか?」

「うん、孫もできたよ。今、2歳半。ソラちゃんていう女の子よ。可愛いわよ」

「へー。未来は?」

「あの子は独身。結婚する気があるのかないのか、いい人がいるのかどうかも話さないわね。あ、それでね。話戻るけど、孝もDNA少しいじってもらったよ」

「どこを?」


答える代わりにニヤニヤしている。また意地悪か。まあ、可愛いと言えば可愛いが。




前回の新生から40年近く経っているが、リハビリとかのやり方はほとんど変わらない。多少器具が進歩したかな、とか、人の言葉遣いが変わったとか、その程度だ。


新生3日目。車椅子移動が可能になった。午後、子供達が見舞いに来てくれた。

全自動車椅子で面談室に行く。光も歩行器でやってきた。歩行器は遙か昔から変わらない。自力で歩くためのものだからな、自動化とか意味がない。


初めて会う息子の嫁さんはすぐに受け入れてくれた。

だが、孫は戸惑っている。もうある程度言葉を理解している。社会性も出てきている。俺に対しても父親より若いお兄さんを『おじいちゃんと呼べ』と教えてもキョトンとしている。

それよりも、1ヶ月前と別人で、しかも母親よりも若いお姉さんが『おばあちゃんだよ』って言ってもねぇ。寄りつかないよ。


そんな様子を微笑ましくながめていると。


「父さん、ちょっと良いかな」


樹に促されて面会室の片隅に移動した。


「俺、L1-1に転勤になった。しばらく単身赴任だ。2人を頼む」


31歳か。働き盛り。見るからに頼もしく育ってくれた。嬉しいぞ。


「そうか。ま、俺はまた若輩者になっちまったが、できる限り協力しよう。しっかり働いてこい」

「ありがとう。それでね……」


ちょっと沈黙した。


「話は変わるけど、父さんはこの先どうするんだい?」

「そうだな。想定外の事態なんでな、まだ考えていないんだよ」

「そっか」

「ところで、お前達は光から遺産をもらったのか?」

「ああ、法定通り。がっぽり税金取られたけど、結構残った。お陰で金銭的な不安はないよ」

「そうか、それは良かった。光もそれなりに財産が残っているだろうが、2人で遊んで暮らせるとは思えんな。やはり、何か仕事をしないとな」

「ああ、それでね…」

「うん?」


また沈黙だ。父親として子供を見守り、待ってやろう。

ようやく意を決したようだ。


「父さんに手伝ってもらいたいんだ」

「何を?」

「コロニー建設」

「!? どういうことだ?」

「既に4つのコロニーが完成しているけど、早くも問題が出てる。コロニー内環境だよ。畑とか公園を作っているけど、どうも不十分なようだ」

「宇宙の閉塞空間だからな。難しいだろうな」

「ああ、そうなんだ。俺は長野で生まれ育って、父さんが守ってきた山や森を見て育った。宇宙にも森が必要だと思う」

「揚げ足を取るつもりはないが、森はダメだ。林だ。必要なのは自然林に近い健康な人工林だろう」

「さすがだな。その父さんの知見が必要なんだよ。植物学だけの学者の意見じゃ上手くいかない。理工学の素養があって、実際に山と林と向き合ってきた父さんじゃなきゃ、コロニーの環境は作れない」

「どの分野でも学問は欧米風だからな。ミクロなことにとらわれて全体の調和をあまり考えないからな。で、具体的にはどうするんだ?」

「もう会社には話してある。上も乗り気だ。父さんが承知してくれればすぐに研究員として入社できる。そこでコロニーに必要な環境を研究してほしい」

「お前の望みは解った。だが、これはこの先数十年の私の人生の方向を決めるものだからな。しばらく考えさせてくれ」

「ああ、そうだな。期待してるよ」




基本的なリハビリを終えて合宿所に移動した。光と俺はそれぞれ個室を割り当てられたのに、なぜか光はいつも俺の部屋にいる。狭いぞ。

俺の事故で戸籍上の婚姻関係は消滅している。そして、新生後も婚姻届は出していない。今のところ交際関係にある。


若いと言うことは困ったことだ。目の前にフェロモンを全放出している若い娘がいる。

しかもだ。俺は女性の好みについて光に話したことはなかったはずだが、なぜ知っている? 見事に寄せてきたな。こっちもホルモンが溢れてる。当然そうなるよな。

おまけにあそこの具合も良くなっているぞ。って、俺のもか! いじっておいたって…… 一体どうなっているんだ? 最近の遺伝子操作技術は!

こりゃたまらん。売店で頻繁に避妊具買うのが恥ずかしい。アンドロイド店員が俺の購買履歴をデータ化しているに違いない。どこでどう悪用されるのか…

それにしても少子化対策の一環なのか、避妊技術は後退している気がするぞ。


それはさておき、日々、講義を受けて時の流れを認識している。

樹の依頼についてはまだ返答していない。地球というか、長野の環境問題もまだ残っているというのに、宇宙? どうも実感がわかないな。

空いた時間にスペースコロニーについて調べている。日本語の情報は表面的なものばかりだ。日本の技術が凄いとか、頑張ってるとか。河内! マスコミの体質は変わってないぞ!

英語で調べるといろいろ問題があることが解る。まず、植物が安定して成長できないようだ。

宇宙ステーション時代は小さな水槽のような容器で植物を育成していたからな。ミクロ環境で上手くいったからといっても、ある程度広くなるとバランスが取りづらいだろう。

畑も思ったほど上手くいっていないようだ。なんとか収穫はできているようだが、種作りまではできていない。食べても問題ないが、蒔いてもほとんど芽が出ないようだ。そのため、毎年地球から種を運んでいるという。

ましてや樹木レベルになるとろくに実験もせずに植えたようだ。木だけ植えれば良いってもんじゃない。地中の微生物とか下草とか、総合的に育てなきゃ行けないことを欧米の技術者は知らないようだ。


不思議なもので、調べていると自分だったらどうするか、という妄想をしてしまう。妄想を繰り返していると、やる気が出てきてしまう。どうしよう。やってみるかな。

やってみたい気もするが、長野が気になる。サカイ林業も気になる。


で、新しく入手したPDAを使って連絡することにした。以前のPDAは俺の遺体とともに発見されて光が保管していてくれた。データ記録媒体は無事だったので、新しいPDAにコピーしてすぐにネットワークに復帰することができた。

とりあえず、気になる人々に新生の挨拶メッセージを送った。


県庁という組織はしっかりしたものだ。課長一人消えたぐらいでは何の問題もない。俺を死に追いやったという超々大型台風の被害からもすっかり立ち直って、以前よりも環境は良くなっているようだ。安心した。

安心したが、メッセージの行間に『戻ってくるなよ』と書かれているような気がした。気のせいか?


サカイ林業も順調だ。規模も大きくなった。人も増えた。翔社長は4年前に入社してきた新生日原さんの扱いに困りつつも立派に経営している。ここに俺が入ったらさらに翔社長がやりにくいかもしれないな。


堺元社長にもメッセージを送った。奥さんは大臣やってるっていうからな。直接のメッセージは遠慮した。

元社長からの返信によると、奥さんの体制は盤石で、林業界だけでなく、農業や土木建築、河川環境など、かなり広範囲に環境改善に取り組み、かなりの成果を上げているようだ。

俺が協力しなくなって8年。俺なしでも何の問題もない。俺にも好きに生きろと応援してくれた。頼もしいと同時にちょっと寂しいぞ。



=====

留浦1「やあ、光さん。初めまして。初代留浦です。今までどこに?」

光2「初めまして。原光です。こちらの世界に来て、事情を理解したので、まずは私の遺伝子の持ち主だった初代原光さんに挨拶に行っていました。彼女がこちらの世界に来てから、4次元空間の時間で50年以上が経過していました。とても穏やかな心で、勝手に遺伝子を頂いたことに対して快くお許しくださいました。私も救われました」

紗綾香「それは良かったですね」

光2「あ、紗綾香さん。お会いできて良かった。私はあなたの二代目でもあるんですよね」

紗綾香「そうですよ。私は光さんのことをずっと見守っていました」

光2「ありがとうございます。それと、川野先生にも挨拶してきました」

留浦1,2「「あいつに!?」」

紗綾香「あなたたち! いつまでそんな態度を取っているんですか? この世界に来て何年も経つのだから、そろそろ落ち着いてください」

光2「川野先生も良かれと思って私を新生させたのです。初めは混乱しましたけど、孝と暮らしてとても幸せでした。新生させてもらえて良かったと思っています。許してあげてください」

留浦2「光がそう言うなら。そもそも、俺は川野に関する記憶はあるが、それは初代のもので俺が直接奴と関わったわけではないからな。それに、俺も光との暮らしは幸せだったよ。冷静になれば許せなくもない」

留浦1「私はまだ許せん。光さんは悪くないが、奴が紗綾香のニューロンパターンを勝手に使ったことに対して詫びを入れてもらわなければな!」

紗綾香「はいはい、そのうちにね。光さん、あなたも一緒に三代目さん達を見守っていきましょうね」

光2「はい、よろしくお願いします」

留浦1「とりあえずブックマークお願いします」

留浦2「3代目の行く末にも影響しますので、評価をお願いします!」

光「更新通知チェックもお勧めですよ」

紗綾香「感想には数日後に返信が来ると思いますから確認してくださいね」

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