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【完結】--新生--生まれ変わって山へ、宇宙へ  作者: 浅間 数馬
第二章 山へ

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15. 家族

「結婚してください」


山から帰るなり、話があると光が言う。神妙な顔をする光と向き合うと冒頭でいきなり光からプロポーズされた。ちょっと急すぎないか?

惚けていると説明された。


「あの時はごめんなさい。皆さんには迷惑をかけたと思ってる」

「いや、それは済んだ話だからもう良いよ。急な雨のせいだし、天候に気をつけていなかったのは俺と(特に)翔先輩のミスだ。楽しくて浮かれてたんだな。済まなかった」

「ううん、良いの。それで、あなたにおぶられて山を下りているとき、朦朧として、走馬灯のような夢を見てた。熱が下がって落ち着いたら、なんだか不安になったの。あたしの人生って、なんだかフワフワしていて不安定だなって。

そう思うと、逆におんぶしてくれた孝の背中が温かかったな、ってしみじみ思った。

あたしには孝、あなたが必要なの」

「そうか」

「あなたにあたしは必要ない?」

「まだそういうことを考える時期じゃないと思ってた。だけど…… 君との暮らしは悪くないって言うか、自然にそうなるかなっていう予感はあった。必要かどうかじゃやなくて、一緒に居るのが自然なのかな、って」


2人とも少し黙った。ちょっと考える。


「よし! じゃ決まり! 結婚しよう! 早速、市役所に行きましょ」

「え!? 今? 証人はどうするの?」

「何十年前の話してるの? 証人が廃止されてずいぶん経ってるわよ。だけど今でも入籍はオンラインじゃできないから。ほら、さっさと行くわよ。その後、食事して乾杯しましょ。孝には言っていなかったけど、夏のボーナス出たの」

「え? 入社1年目でかい?」

「ご祝儀程度だけどね。お祝いしましょ」


こうして8月31日の夜。入籍してしまった。20歳で。やっぱり振り回されてる感が……


「だって、事務手続きが面倒でしょ」


光は夫婦別姓を選んだ。なんか、一緒に生きる感が薄いんですけど… まあ、確かに替えるのは面倒そうだ。俺が原姓を名乗ったって良いんだが、そう考えるとやっぱり面倒だ。

女性が姓を変えるのが当たり前だという古い考えがまだ頭に残っているんだろうな。この際だ。夫婦別姓で頭を切り替えよう。




そして9月の最初の日曜日、大至急で茨城にある前世の妻、紗綾香の墓参りに2人で来た。

長野に移住する前に来て以来、1年半ぶりか。ちょっと空いてしまったな。


『妻さん、以前宣言した通り、妻さんとは別の人と結婚することにしたよ。この人と一緒に生きていく。予想より大分早くなったけど、前世で長すぎる独身生活を過ごしたから、まあ良いかと思っているよ。じゃ、また。これからも時々墓参りに来るよ』


光も墓石の前で神妙に手を合わせてくれている。


「あなたの奥さんだった人だと思うと、他人とは思えないのよ」


そんなことを言ってくれた。ありがたいことだ。




3年生になった。

結婚したので冬の住み込みバイトは止めて、リモートで山や設備の管理を手伝ったり、社長夫妻の家庭教師をした。収入は減ったがまだ蓄えはある。光の負担にはなっていない。


時間が余ったので冬の間も週3回ぐらい弓道の練習をした。集中講義を選択した部員や、住み込みバイトに行っていない部員がちらほら練習にやってくる。院生も時々練習に来る。

毎回雪かきをしないと練習できないから結構大変だ。

その甲斐あって、春の昇段審査で参段になれた。すごく嬉しい。光も祝ってくれた。次は卒業までに四段をとるぞ。


授業が忙しい中、そろそろ就活もしなければならない。

サカイ林業に入っても良いのだが、一応他の仕事も調べている。何も知らずに決めるのは良いことじゃない。決してサカイ林業を滑り止めにしているわけではないぞ。


大学のガイダンスによると、過去の実績では意外にも公務員になる人が多いようだ。上は農林水産省から下は市町村まで、山や森林管理をしている役所は多い。他にも森林組合とかが多い。公務員やそれに準ずる職は安定しているからな。無理もない。

そして残る少数の人は大手住宅メーカーなどに行くようだ。国産材の確保などの仕事があるようだ。給料はまあまあだ。

なるほど、サカイ林業に大卒者が来ないわけだ。参ったな。どうするか?




就職が決まらない中、勉強と部活で時間が流れる。もう秋だ。

なんと光が妊娠したよ。来年春に生まれる。俺も父親か。長い間このときを待っていたぞ。感無量だ。まだ21歳だけど。


子供が生まれるとわかると考えも改めなきゃいけないよな。二度目の人生はもっと楽しもう、って思ってたけど。子供の養育を妻に任せて好きなことやるって、昭和以前じゃあるまいし、あり得んな。ちゃんと家族を守ろう。

少子化対策のお陰でいろいろ公的サービスが受けられる。経済面でも助けてもらえる。市と光の職場から手当が出るそうなので出産費用はおつりが来るくらいだ。出産後もいろいろ手当がもらえるらしい。

とはいえ、給料安くても良いから楽しい仕事、なんて選択肢はもうないな。


週末、1人でオンデマンドバスに乗ってサカイ林業に行った。社長と奥さんに面会し、直接伝える。


「俺、役人になります。サカイ林業にはお世話になりました。どうもありがとうございました」

「そうかい。残念だけど、あんたの人生だ。しっかり生きなさい」


社長はがっかりした表情で何か言いたそうだったが、その前に奥さんがすっきり送り出してくれた。こういうとき、奥さんは頼りになる。


「で、どこの役所に行くんだい?」

「それはまだ決めていないというか、併願でいくつか採用試験を受けるつもりです。行き先は結果次第ですね」

「そうかい。ま、どこに行くとしても、あたし達の新生後の支援を頼むよ。孝はあたし達のブレーンだからね」


奥さんはしっかり大局を見る人になっている。すごいな。学力もどんどん上昇している。

この人に必要だったのは危機感とか使命感というものだったのかな。社員の話によると、以前から災害発生時とか経営危機の時は社長を差し置いて陣頭指揮を執っていたという。


「もちろんです。それと、学生のうちはお二人の家庭教師と、リモートでできる仕事があればアルバイトも続けさせてほしいんですけど」

「それはこちらも望むところさ。よろしく頼むよ。それと、今まで通り、大学で習ったことや調べたことを教えておくれ。将来の政策立案のためにね」

「はい」


こうしてサカイ林業とのパイプが確立した。




河内からメッセージが届いた。大手新聞社に就職が内定したという。

河内とは合宿所を出てから1度も会っていないが、時々メッセージ交換はしている。

大学では前世よりも交流が広がったが、心を許せる友と言える存在はできていない。一番気が合うのは河内だ。一緒に過ごした時間は短かったが、一番解り合えた。

そんな河内の就職内定はとてもめでたい。めでたいのだが、ちょっと心配だ。


『その新聞社、左の最先鋒だよな。報道の仕方に強い偏向を感じるぞ。大丈夫か? 流されるなよ』


翌日、返信が来た。


『俺は権力に惑わされない。大丈夫だ。それより役所は大学よりももっと面倒なところだぞ。お前のメンタルの方が心配だよ』


やっぱり解ってくれている。嬉しいぞ。


『今度は一人じゃない。支えてくれる家族が居る。守るべき家族が居る。責任持ってやっていくよ』


そうなんだ。メッセージを返信しながら、俺は決意を新たにした。




春。四年生に進級してまもなく子供が生まれた。光と相談して名前は未来にした。

女の子だ。姓は原にした。光と相談して、女の子が生まれたら原、男の子が生まれたら留浦にしようと決めていた。

生まれるまで性別は確かめなかった。今時珍しいな、と周囲からは言われたが、今世では自然を大切にしたいと思っているんだ。

山の仕事、弓道、育児、その他いろいろ、自然の流れに逆らわずに無理なくやっていきたいと思うんだよ。なぜ? って聞かれると困るけど、なんか、そうするべきだって強く思うんだよな。根拠ないけど。


そして公務員試験と採用試験を受けた。中央はあえて避けた。転勤で日本全国異動するのは辛い。俺だけじゃないからな。それに、社長夫妻が後輩として入ってくるとやりづらいしな。

長野県とその周辺の自治体をいくつか受けたのだが、結局、長野県庁に入ることにした。


育児はちゃんとやっている。おしめも交換しているし、お風呂にも入れているし、時々ミルクもあげている。近頃は光も自然体を意識していて、未来には母乳を与えている。ミルクを与えるのは夜中に光が爆睡しているときとか、光が体調不良なときなど、補助的だ。


そして卒業だ。

結局、弓道は四段をとれなかった。3回も審査に落ちた。もっと心を磨かないといけないな。就職後も続けていきたいと思っている。



=====

「楽しい学生生活も終わりですね」

「ああ、私の学生生活よりも充実していたようだな。ちょっと羨ましいな。概念として」

「未来ちゃんは可愛いですね。なんだか孫のよう」

「そうだな。二代目を子供の様に見守っていたから、その子は孫のようなものだな。しかし、公務員か。想像もつかないな」

「あら、夫さんも公務員だったでしょ?」

「まあそうだが、大学教員と役所じゃ仕事内容がまったく違うからな。どうなるものか……」

「時間はたっぷりあります。ゆっくり見ていきましょう」

「留浦紗綾香です。異世界の4次元空間で私達と意識を共有してくださっている読者の皆さん。これで第二章は終わりです。次回から第三章が始まります。ここまでの感想を聞かせてください」

「どうも。初代留浦孝です。私からもお願いします。一方的にメッセージを送っているとやりにくいというか…… 感想、お待ちしています」

「『いいね』は忘れずに毎回押してくださいね」

「忘れていた人は『≪前へ』で時を遡って押してください」

「そして、ここまでの★評価をお願いします」

「この先、つまらなくなったら戻していただいても結構です。プロローグから読んだ回までの総合評価として毎回更新できます」

「「よろしくお願いします!!」」

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