そのさんっ 「でんりょく」
「チカちゃんチカちゃん」
「どーした、むっちゃん」
「この部屋寒くない?」
「寒いね」
摂氏零度とか。いやないけど。多分10度とかあるけど、フツーに。
でもまあ寒いよね。フツーに考えて暖かい部屋にいたいわけで、そもそも私とむっちゃんは好きこのんでこんな密室に監禁されてるわけじゃないんですよ。もっと快適にしてもいいと思うわけ。
「ヒーターつけよっか」
「うん、2台ともつけちゃおっか」
此処は中学の生徒会室で、そんな部屋にヒーター2台とか贅沢すぎるだろ、と思うかもしれませんがね、生徒会とかもはや慈善事業なんでそれくらいないとやってらんねーんですわ。なんでだーれも読まずにゴミ箱にポイされる学校新聞をこんな寒い中真面目に書かなきゃなんねーのって、思うわけです。だからヒーター2台に贅沢な温風を送って頂いたところで、罰など当たるはずもないと思うのですね。
「ねーチカちゃん、こっちのパソコンは?」
「あ、つけていーよぉ」
「うん、じゃあつけるぅ」
そのパソコンで、ネットに繋ごうっていう魂胆なわけです。むっちゃんと私は、この頃FLASHにハマってました。田代っ♪ちゃちゃちゃーん♪なんて口ずさみながら作業をしてたわけです。まああれです。ごほーびです。
「何かいいFLASHないなぁ」
「そういえば、この間先生が持ってきたカセット聴いた?」
「聴いてない」
「聴いた方がいいよね」
「聴いて欲しそうだったよね」
自作ソングってやつですよ。理科の化学記号を覚えちゃおうZE☆みたいなノリの替え歌。聴かなくてもよかったんだけど、っていうかどっちかっていうと田代に身を任せていたかったけど、思い出しちゃったので聴くことにしたわけです。
「これあれだ、赤いスイトピーだね」
「替え歌なんだろうね」
聞き覚えのある前奏が流れて、なんとまあ快適な作業部屋にもなった気がするし、さっさと打ち込んで帰りましょーか。寄り道禁止?しらないね。コンビニで暖かい肉まんでも買おう。
そんな雰囲気が一瞬にしてぶち壊れる瞬間が、訪れるとは、誰も思ってなかったわけです。
「ちょっ」
「あっ」
さよならブレーカー。
さよなら快適な生活。
こんにちは、お叱りの校長室。
半べそ書きながら職員室へ向かう2人なのだった。
ほんとにね、怒られました。
そんな電力あるかー!って怒られながら、
それでも職員室の電気と暖房はちゃんとついていることに、
なんとなく憤りを感じた中2の冬でした。