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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第2章 魔王と戦争

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砂の悪魔

 翌日、朝七時、ヒデオとアゲートは兵舎の奥にある装置の前に今日の作戦に参加する兵達と共に集合していた。


「このような早朝に集まってもらったのは、今からお前たちに、サウスバレンとの戦に現れた三人の召喚者の捕獲作戦に参加してもらうためだ」


 兵達はヒデオの言葉に驚き、ざわつき始めた。それもその筈。今、この場に集まっている兵の数は三千人。召喚者といえど、たった三人の為にここまでの人数を集める必要があるのかと疑問に思う兵がほとんどだ。疑問に思う兵は本隊に参加していた者たちだった。


「静粛に」


 アゲートの一喝で再び静寂が戻るとヒデオが作戦の全容を説明する。それは、最優先で捕獲するのは七人目の召喚者であるアスカ。セドニーがアスカに興味を持っており、生かして連れて来いという命令を下した。残りの二人については、ついでに捕獲出来れば良し。


 三千人の兵でサウスバレンとの国境に転移。そこからサウスバレンへと侵攻する。攻め込まれたサウスバレン軍は、国境付近に構えている拠点から出兵してくるはず。サウスバレン兵は二千人の兵で対処。ブラッドはヒデオとアゲートが、召喚者三人を千人の兵で対応。召喚者を捕縛後、すぐに撤退。国境まで引き上げ、転移陣を使用しパグザへ戻るといった内容だった。


「ヒデオ様、召喚者の捕縛に千人では少ないのでは?」


 ヒデオの分隊に参加していた兵が質問をすると、隣にいた兵が質問者を馬鹿にしてヒデオの代わりとでも言わんばかりに話し始めた。


「お前、馬鹿か? 千人なんて大人数で捕縛に当たる方が間違っているんだぞ。これは周りの兵を無力化しながら、召喚者を捕縛するための戦力だ。多すぎる位だ。それなのに、そこまでの人数を割り当てるって事は、この作戦は失敗出来ないという事を言っているんだろうが」

「お前こそ何を言っている?ああ。そうか、昨日はお前本隊にいたんだな」

「そうだよ。それがどうした?」

「俺たち分隊、二千人が召喚者三人にいいようにやられたんだよ。特に最重要と言われている一人にな」

「は?」


 二人で会話をしていると、ヒデオが注意をする。


「そこの二人、うるさい。勝手にしゃべるな。質問したお前」

「は、はい」

「お前の言う事は尤もだ。俺もアゲートも人数は足らないと思っている。だけどな、昨日、こっちの戦力はサウスバレン側は、あのモンスターと召喚者、バラトレスト側もバラトレスト軍、女神デイジーにやられて負傷者が多い。今、用意出来る人数がこれで限界なんだ。この人数でやるしかないんだよ。俺もアゲートもセドニーに進言はした。したが、捕獲があいつの中で最優先になっているんだ。なら、やるしかないだろう。今、用意出来る最大の人数で」


 ヒデオの言葉に再び兵達が動揺しざわつき始める。


「ヒデオ様は何を言っているんだ? たった三人相手に……」

「一人が千人分の戦いをすれば、数なんて足りる訳がないだろう。俺達は目の前であの召喚者の強さを見て来たんだ。お前も実際、目にすれば分かるさ」


 ヒデオが魔銃を空に向けて一発撃つ。その音で兵達が黙り込んだ。


「静かにしろ。いいか。今から一時間後、国境へ転移する。準備を怠るな。以上、解散!」


 ヒデオの号令で三千人の兵達は解散し、作戦に向けて各々が一時間という短い時間で準備を始める。


「やれやれ、分かってはいたが」

「そうですね。しかし、セドニー様の命令、実行するほかございませんので」


 ヒデオとアゲートは溜息を吐きながら、作戦開始の時間まで、待機するのであった。


 一時間後、三千人の兵が出兵のため再び装置の前に集合する。


「よし、時間だ。今より出撃する」


 ヒデオが装置に魔力を展開。


「<ゲート>」


 装置が起動し、ヒデオの使用した<ゲート>が大きく広がり直径百メートル程の黒い入り口が出来た。これが、サウザート軍が遠征先に拠点を構える必要が無くなった理由。


 本来<ゲート>は一人だけの移動転移魔術だが、セドニーがヒデオの<ゲート>を見た時に思い付いた装置により、集団で通ることが出来る程に入り口を拡大。これで一度に大量の兵を移動させる事が出来るようになった。


 問題があるとしたら、ヒデオが訪れた事のある場所しか移動出来ないという事。装置の起動、運用にヒデオのMPを大量に消費する事くらいだ。


「よし、行くぞ」


 三千人の兵が門をくぐり、一瞬でサウザートとサウスバレンの国境へと移動した。昨日のモンスターとの戦闘の爪痕がしっかりと残っており、ヒデオはモンスターを仕留めそこなった事を思い出し、不快になっていた。


「またあのモンスターが来るかもしれない。早く準備しろ!」


 自分の苛立ちを他の兵へとぶつける。アゲートはすぐにヒデオの様子に気付き、ヒデオに声をかけた。


「ヒデオ様、お怒りを納めてください。この場所が不快なのは十分に分かりますが、兵達へ八つ当たりするのは、どうかと」

「分かっているさ。だが、俺の言う事も無い訳じゃないだろう」

「それは確かにそうですが……」


 二人が会話をしている間に、三千人の兵が門を通り集まった。そして、黒い門は姿を消す。


「全員通り終わったな。よし、サウスバレンへ攻め込む。進軍……」

「うわぁああああっ」


 ヒデオが進軍開始の号令を出そうとした時、後ろから兵の悲鳴で遮られてしまった。


「何事だ!? 敵の待ち伏せか?」


 だが、爆発音や剣戟の音は一切しない。ただ兵の叫び声が次々と上がるだけ。状況を確認するためにアゲートが<感知>持ちの兵に状況の確認を指示する。兵が<感知>をすると、隊の中心に一際大きな生物の反応を見付ける。だが、<探知>ではなく、<感知>のため、それが何かまでは分からなかった。


「何か大きなものが隊の中心に居ます」

「何だ、その大きなものとは? そんなもの何処にも見えないぞ」


 ヒデオが隊の中心に目をやるが、大きなものと呼べるようなものは何一つとして無かった。そして、次の悲鳴が起きた時、兵が地面の中へと引きずり込まれるのを目撃した。


「砂の中か! 昨日は空、今日は砂の中、一体どうなってやがる。ここは!」


 砂に引きずり込まれた兵が再び地上へ戻る気配はなかった。大体、砂漠の砂自体、そうそう簡単に人を引きずり込める程、すかすかではない。しっかりと踏みしめて歩けるし、大きな荷物を載せた荷車も走る事が出来る。


 そんな砂の中に人を引きずり込むようなモンスターの存在など、ここに来てから一度も聞いた事が無かった。アゲートにモンスターの心当たりが無いか確認しようと顔を見た時、アゲートの顔が真っ青になって、焦りと動揺を隠せないでいた。


「い、今すぐ、<ゲート>を。早く! このままでは何も出来ないまま全滅してしまいます!」


 ヒデオは、アゲートの異様なまでの焦った姿を見て、すぐに<ゲート>を開き、全軍撤退させた。


「アゲート、あれは何だったんだ?」

「あれは、砂の悪魔です。誰も手が出せない。出会ったら最後、何も出来ず、ただ一方的に蹂躙されるだけ。まさか、あれが現れるなんて……」


 他の兵達も怯えて、再出撃どころではなさそうだった。ヒデオはあのモンスターを知らないのは自分自身のみだという事に気付いた。


「砂の悪魔……か。今度会ったら俺が仕留めてやる」

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