空からの来訪者
見通しの良い荒野で休憩を取っていた俺たちを突然何かが上から襲ってきた。
「うわっ。何だ!?」
「びっくりした!」
「鳥?」
「あっ、ロックバードだよぉ」
上から襲ってきたのは、一体のロックバード。フロックスターリングの話をしていたら、それとは似ても似つかない、体長一メートル位のロックバードだった。
「ケェエエエッ」
ロックバードが俺たちを頭を突き出し、羽を広げ威嚇してくる。
「アル、これがお前の言っていたロックバードか?」
「そうだけど、違うよぉ。あいつはこんなに小っちゃくなかったよぉ。これの倍以上の大きさだったぁ」
「これ、普通より小さいサイズね。あたし達のこと、餌と思っているわよ」
敵対心剥き出しのロックバードに身構える。だが、ロックバードは威嚇として叫ぶだけだった。
「何だ? こいつ敵意剥き出しのくせに威嚇しかしてこない」
「来ないなら、こっちからいくよ」
ミサオがMDを呼び出す。
「やれ! <ダークアロー>」
ロックバードに向けて闇の矢が真っ直ぐ飛んでいく。ロックバードは羽ばたくと垂直に飛び上がり闇の矢を躱す。
「甘い!」
MDがもう一発闇の矢を飛び上がったロックバードに向かって放っていた。ミサオがロックバードの動きを読んでいたのか?
「ミサオやるな」
「あたしじゃないよ。MDの自動攻撃」
「あ、そう……」
でも、前はそんな能力は無かったはず。奏魂の指輪の効果か? そして、闇の矢が翼に命中するとロックバードが地面に墜落した。ロックバードが悲鳴を上げ、バタバタと地面で藻掻いている。
「何だ。見掛け倒しなのか」
右手に<紅蓮>、<双牙>を発動させ、ロックバードへと駆け出す。俺の援護にミコトが<ウォーターアロー>、MDが<ダークアロー>を撃つ。
「ピィイイイッ」
水の矢、闇の矢がロックバードへと刺さり、悲鳴を上げている所に、右拳を振り翳すと、
「<疾風>」
そのまま顔面に高速突きを当てる。ロックバードは瀕死の状態になったのか、力無く頭を地面に下ろし、動かなくなった。
「これってモンスターだよな?」
「うん。死んだら消えるよ」
ミサオは前に倒した事があるのだろう。まだ消えていないということは微妙にHPが残っているのか。また回復して襲ってきても困るなと止めを刺そうとしたその時、
「皆、上っ」
ミコトが上を見ながら叫ぶので、上を見るとバカでかいロックバードとその周りに三体のロックバードがこっちに向かって降下してきていた。
「あぁっ! あいつだよぉ。僕を追い回して来たロックバードはっ」
あのデカいのがアルを追い回していた奴なのか。
「うわぁ。本当にデカいね。あんなの見たこと無いや」
デカいロックバードの前に魔術陣が展開される。
「魔術陣!」
「<ホーリーバリア>」
ミコトが咄嗟に<ホーリーバリア>を展開すると、ロックバードの魔術陣から突風が吹き出す。突風は障壁に阻まれ俺たちには影響は無かったが、瀕死になっていたロックバードが目を覚ました。傷付いた体に力を振り絞り、仲間の下へ戻ろうと羽ばたき始める。
「あ、逃げるな」
だが、障壁の外は突風が吹いていて出られそうに無い。このままでは折角瀕死に追い込んだロックバードを逃してしまう。
「あの突風を出す魔術、どうにか出来ないか?」
「無理」
「無理かな」
二人は首を横に振る。魔術の効果が切れるのを待つしか無いか。
「ねぇ、何であの大きいロックバードしか魔術を使って来ないの?」
ミコトがミサオに質問すると、ミサオは知らないとばかりに首を横に振る。
「なぁ、ミサオ。お前が前に見たロックバードはどんな攻撃をしてきたんだ?」
「あたしが戦ったのは、嘴で突っついてきたり、鉤爪で引っ掻いてきたり、体当りと言わんばかりに突っ込んできたかな」
「魔術は?」
「使って来なかったよ」
基本は物理攻撃のみか。同じ質問をアルにする。
「アル、あいつは?」
「えっとねぇ、火球を吐いたり、今やっている魔術を使って動きを止めようとしたりかな」
あのデカいのは遠距離攻撃が基本か。
「何それ。全然、ロックバードとは違う攻撃ばっかりね」
「そうなのぉ?」
「そうよ。あたしが戦ったロックバードが一般的かな。ブラッドの所の兵士の人達も言ってたよ。獰猛で狙った獲物はとことん追い掛けて来る面倒なモンスターだって。ただ、攻撃は単調だから、気を付けて戦えば魔術が無くても倒せる、って」
魔術が無くても倒せるという事は、突っ込んで来た所にカウンターを入れればいいということだな。じゃあ、デカいのは? まさか。
「アル、あいつから邪神の気配は?」
「そう言われるとぉ、少し感じるかもぉ」
「そうか。邪神の影響で生まれた突然変異という奴か」
それで能力が増え、知能も他のロックバードより高いのかもしれない。
「あの周りに飛んでいるロックバードは手下って所か」
話をしていると魔術陣が消え突風が止まった。
「今だ」
俺は障壁の外へ出ると同時に右拳の炎を瀕死だったロックバード目掛けて投げつける。ヨロヨロとゆっくり飛んでいたロックバードだが、既に地上とデカいロックバードとの丁度中間位の距離まで進んでいた。
「届けぇっ」
俺の投げた炎は真っ直ぐロックバード目掛けて飛んでいく。その距離も段々と縮まっていく。
このまま行けば当たる。そう思っていると、デカいロックバードが雄叫びを上げると、近くを飛んでいたロックバードの一体が、急降下し始めた。そして、瀕死のロックバードを庇うように、炎をその体で受け止める。
「まさか、庇ったのか?」
「大丈夫!」
ミサオの言葉の後に、瀕死のロックバードに<ダークアロー>が突き刺さっていた。ロックバードは光の粒子となって消えていく。
「ギャァアアア!」
デカいロックバードが雄叫びを上げるのと同時に三体のロックバードが俺達に向かって急降下を始める。
「来るよ!」
「空飛ぶモンスターは面倒なのに!」
ロックバード達との戦闘が始まった。




