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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第2章 魔王と戦争

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ブラッドの依頼

 翌日、朝飯を食べた俺達はブラッドに呼ばれ、謁見の間へと向かった。


「おはよう。昨日はよく眠れたか?」


 ブラッドが謁見の間へと入ってきた俺達に挨拶をする。


「「おはようございます」」

「おはよう」


 俺達もブラッドに挨拶をすると、早速ブラッドから話を持ちかけられた。


「さて、昨日話した通りセドニーとの戦争はこのまま続けるのだが、一つ困った事が出来た」

「何ですか?」


 俺が聞き返すとブラッドは右手に魔力で球を作り出す。


「この魔力球が何か分かるか?」

「いいえ」

「それってブラッドの魔力弾じゃん。分かるも何も、そんなこと聞いてどうするのよ?」

「ミサオ、お前は少し黙っていろ。私はその二人に聞いている」


 俺とミコトにだけ質問? どうしてと俺が首を傾げているとミコトがブラッドに尋ねた。


「あの、ひょっとして魔力弾の威力が弱いと言いたいのですか?」


 ブラッドが静かに頷く。


「よく気が付いた。あの方に力を返した事で、かなりの力を失ったらしい。今のままではセドニーと戦っても、間違いなく負ける。というよりも、容易く殺されてしまうだろう」


 プリメラもそう言えば弱くなってしまったみたいな事を言っていた。まぁ、力を返すのだから当たり前なのだと思うけど。


「そこで、お前達にはセドニーと会って、奴の力もあの方へ返すようにして欲しいのだ」

「それは、そのつもりだったので構いませんが」

「頼む。だが、その前にバラトレストへと赴き、女神デイジーに会ってもらいたい」

「それは何故ですか?」

「実は、今回の戦争だが、私はデイジーと手を組んでいるのだ。もし、セドニーが力を失えば、デイジーが奴を殺してしまう可能性がある。それは、この世界を守るためには、防がなければならない」

「手を組んでいるなら、女神デイジーにその事を伝えれば良いのでは?」


 ブラッドは苦笑いしながら首を横に振った。


「いや、あれは記憶が戻っていないとセドニーが弱体化したと喜んで殺しに行くだろう」


 何その危ない女神は。俺の中の女神のイメージが崩壊する。プリメラは悪戯好きと言っていたが、まだ女神らしい所もあった。


「それに、俺の弱体化を知れば、そのままこっちに攻めて来るだろう」


 完全に危ない女神だな。そのデイジーという女神は。


「分かりました。女神デイジーに先に会いに向かいます」

「そうしてくれ。それと、ミサオ」

「何?」

「お前も一緒に行って来い」

「良いの? あんたを守らなくて?」

「私には、クロスが居る。それに、弱体化したとはいえ、お前達やクロスよりも私の方が強い。お前に守ってもらおうなどと思ってなどいない」

(尤も、レベルが五十位まで上がれば分からぬがな。異世界人のステータスは馬鹿に出来ぬ)


 ミサオは了解と手を上げ、俺達は謁見の間から出ていった。


「さて、じゃあミサオ。改めて宜しくな」

「こっちこそ。二人と一緒に行動出来るの嬉しいよ」

「私もよ。宜しくね」

「ねぇ、でもぉ、デイジーに会いに行くのは良いけどぉ、どうやって行くのぉ? ここ、サウスバレンからバラトレストに行くにはセドニーのいるサウザートを抜けないといけないんだよぉ」


 アルが言う事はもっともだ。戦争真っ只中の敵国を抜けて、その隣国に入る。しかも、その隣国もサウザートと戦争真っ只中。サウザートから入国する者を受け入れるとは思えない。


「確かにアルの言う通りだな。簡単に会えそうには無いぞ」

「そうね。ミサオ、何かブラッド様に紹介状とか用意してもらえない?」

「うん? そんなの必要無いと思うけど」

「いや、有った方が良くないか? 敵国から来た人間を快く受け入れないだろう。普通」

「ああ、二人はバラトレスト知らないのか」

「どういう事?」

「あそこ、密林のジャングルなんだよ。人に会う事なく宮殿まで行けると思うよ。どっちかと言えば、サウザートを抜ける方が大変だと思うなぁ」

「ミサオ、お前、道に詳しそうだな? 行った事があるのか?」

「一度だけね。ブラッドに連れられて。戦争の前よ。今思ったらあの時にデイジーと手を組んだんだね。きっと」

「それなら、道案内頼める?」


 ミコトのお願いに、頬に人差し指を当てながらミサオは何か考え始めた。


「うーん。大丈夫かなぁ。あまり道覚えていないもんねぇ」

「サウザートを抜けるのに安全なルートは無いだろうから、気にするなよ。取り敢えず、準備だけはしっかりしていこう」


 今思えば、俺の服ボロボロだ。ヒデオの攻撃で神器と魔器以外、破れまくっているからな。買わないといけない。


「そうね。アスカの服、ボロボロだもの」

「ダメージ加工と言うにはボロボロ過ぎるよね」


 ミサオがクツクツと笑う。


「でも、敵を魅了するには良いんじゃない。上手いこと、見えそうで見えない感じに破れたよね。それ」

「うるさい」


 俺は城下町の防具屋を訪ねた。


「いらっしゃ、い!?」


 店主が俺の格好を見て驚く。


「じょ、嬢ちゃん、その格好は一体……」

「サウザートの異世界人にやられたんだ。何か良い防具はあるかい?」

「すまねぇな。今この戦争のお陰で防具はほとんど売れちまった。そうだな。残っているとしたら、生憎と、今、嬢ちゃんが着ているのと同じ旅人シリーズしか在庫は無いな」

「同じものがあるのなら、それで良いよ」


 もう少し防御力の高い新しい防具に変えるというのも有りかと思っていたが、売っていないのならしょうがない。新しい旅人の服とズボンを購入し、奥の試着室で着替えて来た。


「準備しようにも戦争中で品物が少ないんだな」

「それじゃあ、まずはサウザートに行こっか」

「うん。出発しよう」


 城下町を出て、昨日ヒデオ達と戦った丘までやって来た。昨日とは打って変わって静かなものだ。


「近くには誰もいないみたいだ。先へ進もう」


 ヒデオ達の偵察が居るかもしれないとも思ったが、気にし過ぎたか。この辺りには誰も居なかった。丘を抜けて、再び平らで何も無い荒野が続く。何も無い分、視界も開けており待ち伏せなんかには向かない。


「これだけ何も無かったら待ち伏せも出来ないな。ここらで休憩にしようか」

「そうね」

「賛成。ごはん、ごはん」


 <空納>から敷物と干し肉を取り出し、腰掛けながら食事を取る。


「ご飯、これだけなの?」

「しょうがないだろ。この先どれ位町や村に寄れるか分からないんだ。様子を見ながら行かないと」

「フロックスターリング、いないかなぁ」


 ミコトがボソッと呟いた名前をミサオが聞き返す。


「フロック、何?」

「あ、いや。なんでもないよ」

「ミコト。お前あれがこんな所に居るわけないじゃないか」


 まあ、気持ちも分からなくはないけど。あの焼き鳥は美味かった。


「ねぇ、フロックスターリングって何?」

「鳥だよ。これを焼き鳥にしたら美味かったんだ」

「へぇ。こっちにはそんなのがいるとは聞いた事ないな。今度、食べさせてよ」


 ミサオのリクエストに返事をしようとした、その時、上から何かが降ってきた。

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