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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第2章 魔王と戦争

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格上

 アスカ達がセドニー軍との戦闘を開始した頃、アルはブラッドの下へと飛行中だった。


「アスカは、竜使いが荒いんだからぁ。いつもみたいに異空間の中でぼーっとして戦闘が終わるのを待っていたかったのにぃ」


 文句をブツブツと言いながら飛行して、かれこれ一時間。ブラッド軍の姿は一向に見えてこない。


「でもぉ、ブラッド、セドニーのどちらにもぉ、死なれるのはぁ、困るからなぁ。この戦闘で、出来れば二人共会話出来るといいなぁ」


 アルの本体の力を取り戻すには、どちらにも死なれてはいけない。そのためにもアスカ達は戦争を止めようとブラッドに会いに行ってくれた。ヒデオとの戦闘よりも優先にして。


 そして、そのヒデオが今アスカを狙って戦闘を仕掛けている。この分担が、ベストなのはアル自身も分かってはいるが、アスカと出会ってからは、普段このように長時間飛行していない。


「うぅ。最近楽しすぎなのかなぁ。疲れたよぉ」


 いい加減休憩しようかと迷っていると、アルの第六感が全速力で飛べと言っている。


「何か嫌な感じがするよぉ」


 後ろをチラリと見てみると、何かがこっちに向かって来ているのが見えた。少しずつだが、自分との距離が縮まっているように見える。


「あれは何だろう? 凄く嫌な感じぃ。急ごうっとぉ」


 疲れた翼を力強く羽ばたかせスピードを上げる。


 一方、アスカはアゲートの着けている装備を見て、この男がただの一般兵では無いという事にすぐに気が付いた。恐らくこの隊の中で一、二の実力の持ち主。


「ヒデオとの戦いの邪魔はして欲しくないんだけど、譲ってくれたりしないよな。やっぱり」

「当然です。私はセドニー様よりヒデオ様を守るように命じられておりますので」


 俺は溜め息を吐き構えを取る。


「そもそも、敵兵を殺さず、状態異常にて戦闘不能にするだけの、相手を殺す覚悟も無いような者がヒデオ様と戦えると思わないで戴きたい」


 アゲートの持つ剣の切っ先が光を帯び出す。アゲートの持つ剣は刀身が細身で斬るのに適さない形状。所謂、刺突剣だ。相手を突き刺すのに適したその形状から突きが来るのは間違いないだろう。


 アゲートが一歩踏み込み、刺突剣を突き出す。突きが来ると予想していたからこそ、何とか躱す事が出来た。だが、アゲートの突きの速さは力を封印される前のカオスドラゴン、メタルスライムの次に速い。ある意味特殊なこの二体を除けば、俺が対峙した中で一番だ。


「速いな」

「私の初撃を躱しましたか。目は良いようですね」


 剣の切っ先の光が少し大きくなり、輝きも増した。あの光は何の意味があるんだろう?


「ヤバいぞ。アゲート様が本気を出そうとしている。離れろ。退避! 退避ぃいいい!」


 俺の周りを囲んでいた敵兵達が慌てて離れていく。


「不甲斐ない兵とは言え、これからブラッドを挟撃するのには必要な戦力。そこらに転がっている者は邪魔ですね」


 何か小さな声でブツブツと呟き始めた。呪文? 魔術の詠唱か?


 詠唱が終わったアゲートは左手の掌を空に向けて上げると、状態異常で動けない兵士達の体が宙に浮いた。そして、左腕を後ろへと振り下ろすと、浮いていた兵士達が後ろへと飛んでいった。


「これで邪魔は消えました。あなたの思惑も崩れたでしょう」


 そう。俺は敢えて動けない敵兵をそのまま放置し、障害物として敵兵に囲まれるのを防いでいた。

 

「あんた、強さも頭の方も他の奴らとは段違いみたいだな」

「当然です。私はセドニー様の世話人。あらゆる事に優れていなければいけません」


 これは中々の大物だったか。今の俺で相手になるのか分からないが、やれるだけの事はやる。アゲートが動く。突きを躱すのに俺も横に動く。突きは攻撃が点だから初動が分かれば躱しやすい。そう思っていたらアゲートの剣の軌道を突きから切り払いに変える。


「その剣じゃ斬るのに適さないだろう」


 だが、アゲートの顔には余裕が見られるのが気になる。触れると不味い。直感がそう言っている。後ろに飛び退くと、切っ先の光が地面へと飛び爆発する。


「うわぁっ。くぅぅっ」


 後ろに飛んでいた所に爆発の衝撃波がやって来る。飛ばされたら追撃が来る。飛ばされないように踏ん張っていると、予想通り。


「はっ」

「やられてたまるかっ。<紅蓮>」


 アゲートの剣の腹に<紅蓮>で作った炎の剣を当て、僅かに軌道を逸らすと、心臓を狙っていたアゲートの切っ先は、狙いを外し、俺の左肩を貫通した。


「くぅっ」

「面白いですね。まさか、今の攻撃を凌げるとは思いませんでした」


 剣を抜き、後ろへ下がったアゲートは、俺が攻撃を凌いだ事に驚いてはいるが、表情にはまだまだ余裕がある。


 <紅蓮>を剣の形から拳を纏ういつもの形状に戻し、貫かれた左肩は<癒やしの光>で治療する。


「傷を癒やす力も持っているとは驚きの連続ですね」


 アゲートは剣を振り、切っ先に付いた俺の血を払うと、今度は剣全体を光が包み込む。


「これは耐え切れますか?」


 アゲートは剣を地面と水平の状態で、剣を持つ右手を後ろ、左手を前に出し、今から突きを繰り出すというのが見え見えの構えを取る。


「突くのが分かっていても躱せない攻撃を放つ。そういう事なんだな?」


 俺の質問にアゲートは不敵に笑う。俺の言った事が正解だと言わんばかりに。


「<シャイニングスティンガー>」


 剣を覆っていた光が大きく広がり、巨大な光の針となって俺に迫ってくる。突きの速度もこれまでとは比較にならない程速い。


 この攻撃を防ぐ術は何か無いか。また<紅蓮>を剣状に変えて。いや、あの大きさの光の針を弾いて逸らす程の力は無いか。


 そもそも弾けたとしても体に当たってしまうだろう。当たればきっと爆発でやられる。なら躱すしか無いな。でも、横に飛んでも針先は躱せても腹が当たってしまう。


 なら後ろへ飛ぶか。いや、突きのリーチから逃れられても恐らくあの光の針が飛んでくるんだろう。その証拠に俺の後ろには敵兵の気配が無い。皆、巻き添えを食わないように散開しているんだ。


 つまり、敵兵がいる所まで一瞬で離れるしか手が無い。俺のAgiじゃそんなのは無理だ。


 うん? それにしてもまだ当たらないのか?


 あんなに速い突きだぞ? あれ、まだ届かないな?


 おかしい。あぁ、これがスポーツでいうゾーンという奴か。死に直面した所に集中力が爆発的に上がって、周りがスローに見えているんだな。思考だけ早くても、体が速く動かないとな。


 あそこの兵士の元に一瞬で行けたらな。光の針が俺の所に届く。終わったか。俺は死を覚悟して目を閉じてしまった。


「馬鹿なっ!」


 アゲートのこれまでにない乱暴で驚嘆の声が俺の耳に入る。


「えっ?」


 死を覚悟して閉じていた目を開ければ、さっき行けたらと考えた兵士の目の前に立っていた。


「貴様、いつの間に俺の目の前に!」


 兵士も突然目の前に現れた俺に驚き、剣を振り上げた。慌てて、その兵士の鳩尾に一撃を喰らわし、殴り倒す。


「何が起きたんだ?」


 自分自身、何が起きたのか分からなかった。

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