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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第2章 魔王と戦争

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すれ違い

 ミサオの部屋にやって来てから、ミコトとミサオが風呂に入っている間に寝入ってしまっていた。風呂から上がってきたミコトとミサオに肩を揺すられ、目を覚ます。


「……カ、ア……カ、アスカ!」

「うぅん?」

「もう、何寝ているのよ」

「あれ? 俺寝てたのか?」

「寝てるなんてものじゃなかったわよ。いくら起こしても全く起きなかったんだから。ミコトなんて心配でしょうがないって顔してたわよ」


 ミコトの方を見てみれば、俺が目を覚まして、本当に良かったと安堵していた。


「おかしいな。そんなに眠気があった訳じゃないんだけどな」


 二人が長風呂だった?


「長風呂だった?」

「そんなに長く入ってないわよ」

「うん。三十分位かな?」

「そう。何で寝てたんだろう?」

「知らないわよ」


 二人が風呂に行って、キマイラの核石を見ていたら、寝てしまったのか。


 うん? 待てよ。まさか、こいつのせいか?


 鑑定で見ても分からなかったけど、あの山羊頭の睡眠の効果がこの石にはあるのかも。


「なあ、この石だけど」

「ああ、それ。アスカにあげるよ」

「私もいらないよ」

「まだ、何も言っていないんだが……」


 話の途中で二人が俺に石をあげると言い出した。


「まあ、貰えるならいいんだけど、それより、これのせいでさっき寝ていたかもしれないんだ」


 二人は首を傾げ、不思議そうな顔をしている。


「この石を鑑定したらリトルキマイラの核石って名前だったんだけど、あのキマイラの核なら、山羊頭の力をこの石は秘めている可能性があるんじゃないか?」

「確かに、そう言われたらそうかもね」

「で、その影響で寝てしまったんじゃないかと思う」

「持ち主に影響が出るって、どうなの?」


 このまま核石として持っているのもなぁ。


「取り敢えず、貰えるのなら<錬装>してみよう」


 手の甲の部分に獅子、山羊、竜蛇の顔と思える装飾のある武器が出来た。その名もキマイラブロウ。今まで手に入れた武器で一番性能が良い。


「これは中々良い武器だ」

「そう? 見た目は怪しさ満載だけど」


 ミサオの言うとおり、見た目は悪役みたいだけど、悪役みたいだから使わないというには勿体ない位の高性能だ。


「まあいいんじゃない? それよりあなたもお風呂に入って、今度は本当に寝るわよ。明日、ブラッドに会うんでしょ」

「そうだな。じゃあ、入ってくる。先に寝ていてもいいぞ」

「嫌よ。寝ていたら何されるか分からないもの」

「アスカは何もしないよ」

「ミコトの言うとおりだ。何もするわけ無いだろう」


 ミサオの奴は本当に人を何だと思っているんだ。まあいいや。風呂に入って寝よう。あれ? そういえばアルの奴、ここに来てから姿を全く見せないけど?


「アル、お前も風呂入るか?」


 <空納>の中に隠れているアルに声をかけてみるが反応は無かった。


「寝てるのかな? まあ、いいや」


 俺は風呂に入り、ゆっくり休んでから、風呂から上がると、二人はもうベッドで寝息を立てていた。


「結局、寝てるじゃんか」


 俺はソファーに寝転び、そのまま寝ることにした。


 次の日、朝起きると二人も丁度目を覚ましたらしい。


「「「おはよう」」」


 挨拶をして、準備を済ませると、俺たちはミサオの案内のもと、ブラッドのいる謁見の間へと向かった。


「さぁ、この部屋が、謁見の間よ」

「中に人の気配がしないんだけど?」

「そんな事ないでしょ? いつもここにいるわよ」


 扉を開けて中に入ると、やはり謁見の間には誰も居なかった。


「あれ? おかしいな? いつもこの時間にはここに居るのに」

「他に執務室のような場所はないの?」

「無いわよ」

「誰かに聞いたらどうだ?」

「そうね」


 ミサオは他に人が居そうな部屋を順に回っていったが、どこにも居ない。次に侍女達の塔へと向かうと、漸く人に出会えた。


「ミサオ様、おはようございます」

「おはよう! じゃ、なくて!」

「いかがなされましたか?」

「ブラッドは? 近衛の人達も見当たらないけど」

「ブラッド様は昨日から戦地へと出陣なさっていますが」

「は?」


 ちょっと待て。戦地へ行っている? 大将自ら出て行っているとは、すれ違いもいい所だ。


「って言うか、何で昨日誰も言ってくれなかったのよ!」

「お前、聞いていないだろ?」

「う……」

「それで、戦地って何処なんですか?」

「サウザートとサウスバレンの国境近くという話です」

「じゃあ、まだ実際には戦闘は始まっていないか。でも、追いつけるのか?」


 実際、こっちは徒歩に対し、軍隊だから馬を使っているに違いない。一日の差はかなり大きいと思って間違いないだろう。追い付く頃には既に戦闘中ということもあり得る。


「兎に角、急いで追いかけないと」

「そうね」


 ミサオが申し訳なさそうに俺たちの方を見て、侍女に質問する。


「あたし達が使える馬車とか無いよね?」

「申し訳ございません。生憎、城の馬は全て出払いました」

「そうよねぇ。ううん。気にしないで」


 俺たちは急いで城を出ようと入口へと戻った。入口の扉が開き、中庭に出る。


「取り敢えず、<感知>の範囲内には居ないと思うけど、一応試してみるよ」


 <感知>の範囲内に居れば、まだ十分追い付けるかもしれない。戦争をする為の軍隊だ。かなりの人数の行軍だから、もしかしたらという期待も無い訳じゃない。


「<感知>」


 城下町の住人の数は変わらないようだ。遠い距離は、やっぱり軍隊のような大人数は居ないな。


 うん? 何か、高速でこっちに飛んでくる。普通の速度じゃないし、物凄く小さい。


 これは!


「二人共! 今すぐ飛べ!」

「「え?」」

「早くっ」


 慌てて二人は横に飛び退けば、俺たちの立っていた地面に小さな穴が空いた。


「何?」

「これって」

「狙撃だな。この跡、弾痕だ」


 こんな攻撃が出来るのは俺が知る限り、一人だけだ。


「ヒデオ」


 ミサオがその名前を口にする。俺は頷き、弾が飛んできた方向を見る。


「弾だけを感知したから、ここから最低でも三キロメートル以上離れた所から撃ってきたぞ」

「嘘」

「嫌な予感がする」


 弾が飛んできた方向がゴス村側、つまりブラッド達が進軍しているのと反対から弾が飛んできた。これが何を意味するのか。


「まさか、俺の狙撃を躱した?」


 ゴス村とブラッド城下町の間にある岩山の頂上に居るヒデオは、ブラッド城から出てきたアスカ達に自身の攻撃を躱され驚いていた。


「偶然じゃない。俺の攻撃に気付いて動いた」

「如何なされました? ヒデオ様」

「アゲートさん、異世界人達の狙撃に失敗しただけさ」

「それはまた。防がれたのですか?」

「いや、躱された」


 アゲートはヒデオの答えに少しの間考え込んだが、ヒデオに進言する。


「どうしますか? このまま予定通り進軍し、ブラッドを挟撃いたしますか?」

「そうだな。仕留められはしなかったが、ここで粘ってもしょうがない。行こう」


 アゲートは頷くと、後ろを向き号令を出す。


「全軍、進軍開始。魔王ブラッド軍を挟撃する」

「「「おぉおおおお!」」」


 ヒデオ、アゲート率いるセドニー軍、千人が進軍を開始する。

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