表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第2章 魔王と戦争

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/227

暴れ熊

 洞窟の奥へと進んでいくがフライアイ達と戦闘して以降、他のモンスターと全く遭遇しなくなった。


「おかしいな」

「そうね。アスカ、<感知>ではまだモンスター残っていたんでしょう?」

「ああ。数はかなり減っていたけど」

「ふぅん。で、この洞窟はあとどれくらいあるの?」


 ミサオの質問に俺は溜め息をつく。


「はぁ……。お前、それを俺に聞くのかよ」

「だって、今までこんなに奥まで来れなかったもん。ここがどれくらい奥まで続いているのかなんて、知らないわよ」

「まだもう少し続くよ。ただ、モンスターが全く居ないのはおかしいんだけどなぁ?」


 休憩中の<感知>が正しければ、この辺りにはモンスターがまだ居たはずなのだが、全く居ない。悩みつつも進んでいると奥の方から何か音が聞こえてきた。


 ブン! ブン! ブンッ!


 何かを振り回すようなその音は奥へと進むにつれて、大きくなってくる。


「さっきから、バットを素振りしているようなこの音は何だ?」

「なんか、少しずつ大きくなっているね」

「嫌な予感……。PD、ちょっと先に行って!」


 ミサオがPDを先行させ、一分位経った。その時、


「うわっ! 何こいつ!」


 ミサオが驚くのとほぼ同時にPDが吹っ飛んで来た。


「どうしたんだ!?」

「なんかでっかい熊が襲ってきた! あいつよ!」


 それは体長三メートル位の見た目は熊に近いモンスターだった。かなり興奮しているようで、こっちに向かって走ってくる。


 PDの前に来ると立ち上がった。立ち上がると八メートルはある巨体だった。そのモンスターがPDに思い切り腕を振り下ろすと、ブンッと風切り音が鳴る。


「今までのバットの素振りみたいな風切り音はこいつか!」


 あの硬いPDを吹き飛ばす程の力だ。俺が当たれば只じゃ済まないぞ。PDは振り下ろされた熊の腕を両手でガードしたが、再び後ろへ吹き飛ばされた。


 熊はすぐに振り下ろした腕とは反対の腕を下から振り上げた。ゴウッと音を立てたかと思ったら、何かが地面に傷を付けながらPDへ向かっていき、腹に五本の切り傷が入った。


 風の刃か何か?


 遠近どちらもいけるパワータイプ。しかも素早さもそれなりにある。体が大きいから、避けるのも大変ときた。たぶん、こいつがこのダンジョンで一番強いモンスターだな。


「<ドールリカバー>」


 ミサオが傷付いたPDを癒やすと、PDを突っ込ませる。PDのパンチがモンスターの腹に当たると、ダメージに顔を歪ませる。


「こいつ、見かけ倒しじゃないの!」

「ギャァアアアッ」

 

 モンスターが威圧するように大きな声で叫ぶが、ミサオは気にせずPDに追撃をさせるとカウンターと言わんばかりに、モンスターが左腕でPDを宙へと殴り上げた。


 PDはモンスターの顔面付近まで飛ばされると、モンスターが両手を振り上げ、空中で無防備のPDにその豪腕を連続で叩き込み始めた。PDの体があっという間に傷だらけになると、光の粒子となって消えてしまった。


「あぁ! 嘘でしょ! 暫くPDが使えないじゃないの!」


 ミサオがPDを倒され叫んでいる。モンスターはその声を聞いて次はミサオを標的にしたようだ。


「グルル……」


 四つん這いになり唸り声を上げて、ミサオに向かって走り出す。


「ちょっ、待ってよ!」

「ミサオ! あぶない!」


 ミサオを庇えば俺が、ひとたまりもない。注意をこっちに引き付けてやり過ごすしかない。


「はっ」


 <空破>をモンスターの側面に向けて放つと、衝撃波でモンスターの体勢が崩れた。


「体勢を崩すだけか」


 オークを吹き飛ばす位の威力はあるはずだが、あの巨体は吹き飛ばすことは出来ないみたいだ。だけど、こっちに注意を向けることには成功した。ミサオからこっちへ進路を変えて向かって来る。


「よし。こっちに来るな。さぁ、どうするか!」


 取り敢えず、様子見の一撃だ。俺の目の前まで来ると、モンスターは立ち上がると同時に豪腕を叩き付けてくる。


 その攻撃を躱し、肘に<疾風>を放つ。

 ドゴッと鈍い音がするが、攻撃は通用したのだろう。痛みで後ろに下がる。が、すぐに襲い掛かってきた。


「グワァァ!」

「当たるか!」


 腕を掻い潜り、モンスターの右側に回り込むと、右膝に<双牙>を使った<疾風>を当てる。ガクッとモンスターが右膝を地面につける。


「PDの与えたダメージが大きいみたいだな。このままいかせてもらうぞ!」


 俺が追撃しようと構えると、モンスターの動きが早く、俺を払い除けるように右腕を下から上に振り上げた。


「うぉっとぉ!?」


 ギリギリ躱したが、腕を振り上げた勢いで起きた風圧で体がよろけてしまった。


「しまった!」


 よろけた俺に振り上げた腕を真っ直ぐ叩きつけてくる。しまった。これは避けられない。直撃を覚悟して、両腕を頭の上でクロスガードの姿勢を取る。直撃は只じゃ済まないと、思わず目を瞑ってしまった。


 ガコッ!


 頭上で鈍い音がした。だが、衝撃は無い。恐る恐る目を開けると、目の前にPDとは違う人形がモンスターの攻撃を受け止めていた。


「アスカ! 何してるの! GD(ガードドール)が耐えている間に、そいつやっちゃってよ!」


 GDと言ったな。名前から見ても分かる。防御特化型か。助かった。いや、助かっていない! 慌てて俺はその場から離れる。


「何で離れ……!」


 モンスターが両腕を振り回す。さっきPDを倒した時と同じだ。GDがみるみる傷だらけになっていき、光の粒子となって消えた。


「はぁああ!?」


 いとも簡単にGDが倒されミサオが驚きの声を上げる。


「いや、当たり前だろ! PDが簡単に倒されたんだろう? それと同じ防御力なんだから、俺が離れたらすぐに退かさないと!」


 尤も、あの怒涛のラッシュが始まったら逃げようもないけど。<鑑定>でモンスターの状態を探ると、残りのHPが残り四割を切っていた。一気に畳み掛ければ押し通せるか?


「<紅蓮>、<双牙>」


 両拳に炎を纏い<双牙>を発動させる。


「これで、どうだ!」


 モンスターに向かって走ると、モンスターもPDに使った風の刃を飛ばして来た。地面を斬り裂きながら進んでくるから、刃は見えなくても、軌道は分かる。横に飛び風の刃を躱し、すぐさま前に飛び出し、拳を突き出す。


「<疾風>!」

「グルァァアアア!」


 モンスターも雄叫びと共にあのラッシュを始める。俺の左右の連打が入ると同時に、モンスターの下から掬い上げる腕が俺の腹に直撃する。


「かはっ」


 その豪腕から繰り出された攻撃は俺の体を宙に浮かせるには十分。次の攻撃で地面に叩きつけられるかと覚悟を決めた。その瞬間、モンスターの体が俺の方へと倒れて来た。


 押し潰す気か。空中では躱しようがないし、何より力が入らない。俺はそのままモンスターの体に押し潰される形で地面に落ちる。


「お、重い…」


 モンスターは俺の上に乗ったまま微動だにしない。なんとか這いずり出てモンスターの様子を見れば、既に息をしていなかった。


「ふぅっ。何とか倒せたな」

「アスカ、大丈夫?」


 ミコトがやって来て<ヒール>を掛けてくれた。アルも出てきて、モンスターの死骸を食べたが、残念ながら素材は出なかった。治癒を受けている間に<感知>を使ってみたが、何故かこの先にモンスターの気配は感じない。


「よく分からないけど、もうモンスターはいないみたいだ」

「本当!?」


 ミサオが嬉しそうに聞き返す。俺は頷き、傷も癒えた所で起き上がり先へと進んだ。途中、モンスターが居なくなった理由が分かった。


「成程ね。妙にブンブン音がしていたのはこういうことだったのか」


 あの熊みたいなモンスター、暴走していたのか自分の近くにいたモンスターを殺していた。そこらに死骸が転がっていたのだ。


「お陰で楽が出来たね」

「そうだね」


 ミコトとミサオが戦闘にならずにすんだ事に安堵していた。そして、これまでとは違う広い空間へと辿り着いた。奥には祠が見える。


「あ、あれがそうだよ! やっと着いた!」

「ちょっと待て。ミサオ!」


 祠を見付けて走り出したミサオを静止する。ミサオは何よという顔をしながらこっちを見ている。祠の前にこの広い空間。どう考えても……。


「え、あれ何よ!」


 予想通りだ。空間の中心に魔術陣が現れ、そこからモンスターが現れた。


「最後の番人って奴だな。さぁ、やるぞ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ