洞窟突入
魔器を手に入れる為に入った洞窟で、早速モンスターの出迎えが来た。狼のような姿をした小柄のモンスターが六体こっちに向かって走ってくる。
「あれは、グレートファング。ちまちまダメージ受けて鬱陶しい奴よ。群れで来ると厄介だけど、あの程度の数どうってことない! いけ! PD」
ミサオの命令でPDがグレートファングの一体に向かって走り出した。
「馬鹿! いきなり前に出るなよ」
PDがグレートファングを蹴り飛ばそうとしているところを他の個体がPDを取り囲み一斉に噛み付いた。
「あら? ダメージ〇みたい? ミコトのバフのお陰ね。これなら何も気にしなくていいわ!」
PDが蹴り飛ばしたグレートファングが俺の方へと飛んでくる。さて、スライムブロウでダメージを与えられるか?
洞窟に突入する前に、俺は両拳に<毒手>を使っている。<紅蓮>の方が攻撃力としては高いが、こっちは敵を毒に侵す事が出来れば、その効果で弱体化させることが出来るからだ。放っておけば、そのうち勝手にくたばるし。飛んできたグレートファングを下から突き上げる。
「ギャゥン」
お、これでもダメージ通るぞ。思ったより難易度は低いのかもしれない。
PDに群がるグレートファングの様子を見ながら、さっきの突き上げで上空から落ちてくるグレートファングに追撃を加える。攻撃が通るならアーツは控える。この先にまだ控えているモンスターがこのグレートファングだけならいいが、通じない相手が出た時が困るからな。
左右の連打を当てると、PDの方へ吹っ飛んでいった。PDの腕に噛み付いて離れなかった個体にぶつかる。俺の殴り飛ばしたグレートファングはそのままぐったりして動かなくなった。
あれ? 光の粒子に変わらない?
PDはダメージを受けない事をいい事に、グレートファング達を一方的に殴ったり、蹴ったりしている。大半のグレートファングがヨロヨロと動いている。
PDが止めを指すのに近付くと、グレートファング達は洞窟の奥へと逃げ出した。
深追いはせずゆっくりと奥へと進む。どうせ後でまた戦闘になるんだ。慌てる必要は無い。
「さてと、こいつらは消えないみたいだな」
「そうね。前に挑戦した時も死体が転がっていたよ。でも、次に挑戦する時には消えているんだけどね」
自然発生したモンスターではなくブラッドが産み出したモンスターだからか? そういえば、プリメラのファミリアも光の粒子にならないで崩れるだけだった。人為的なものとそうでないもので違うのかもしれない。
奥へと歩み始め、俺は<探知>で周辺を確認しながら進む。<探知>の方が詳細に分かるし範囲も狭いから情報が少なくて頭痛もしなくていい。
「上!?」
頭上にジャンボバットがいた。数は三体。名前からケイブバットのような蝙蝠か。
上を見上げれば体長三メートル位の蝙蝠がこっちに降下してきていた。
「でか!」
「何あれ!? 前には居なかったわよ」
難易度というより、出現するモンスターの種類と頻度が高くなるのかもしれない。ジャンボバット達が一斉に<ダークアロー>を発動する。
「ちぃっ! あの高さじゃ攻撃が届かない」
「任せて! <ウォーターアロー>」
ミコトの放った水の矢とジャンボバットの放った闇の矢が交差し、一体の翼に穴を開けた。
翼に穴が開いたジャンボバットは宙に浮いておれず、地面へと落ちる。ジャンボバットの放った闇の矢は、PDがミサオを庇ったが、これもダメージを受けていないみたいだ。
「ミサオ、俺たち本当に必要だったのか?」
「あの狼達と一緒に現れていた別のモンスターが厄介だったのよ。今は居ないみたいだけど」
ミサオの言うモンスターが現れた時が本当の戦闘ということか。その前に今はこいつらだな。
「PD!」
ミサオの命令を受け、PDがジャンボバットに向けて手を翳し、そこからレーザーのような攻撃が放たれた。ジャンボバットは、その巨体のせいで避けることも出来ない。
プスプスと煙を上げながら地面へと落下したジャンボバットに俺は拳を叩き付け、三体のジャンボバットを呆気なく倒した。
「ミサオ、お前が苦戦したモンスターってどんなのだ?」
「でっかい目玉に翼が生えた奴」
それは中々強烈な姿だな。
「気持ち悪そうね」
「うん。気味悪いよ。あれは」
「じゃあ、そいつに気を付けながら進もうか」
暫く進むがモンスターはあれから襲ってこなかった。それは良かったのだが、問題が一つ。
洞窟には灯りがなかった。
まだ入口付近は、入口から入る明かりで明るかったが、奥に進めば進むほど暗くなっていく。もう、二メートル先も見えない位真っ暗だ。
「おかしいな。こんなに暗く無かったよ。今までは」
ミサオの言う事が確かなら、洞窟の中をわざと暗くしたということになる。それが意味するのは……。
<探知>を使えば、しまった。使うのが遅かった。
「くっ。囲まれている。それにこいつか! フライアイ!」
闇夜に乗じて、グレートファングが周りを囲っている。そして、その上をフワフワと漂うように直径八十センチくらいの大きな目玉に翼が生えたモンスター。フライアイがいる。
「ヤバいよ。これ、あたしがいつも退散する羽目になったパターンだ」
グレートファングの攻撃は、PDなら大丈夫だろう。問題はあのフライアイか。どんな攻撃をしてくる? グレートファングが一斉に襲い掛かってきた。
「<ホーリーバリア>!」
ミコトが張った障壁にグレートファング達は侵入を防がれる。
「危なかった」
「ミコト、凄い!助かったよ。PD、今よ!」
障壁の中からPDは飛び出しグレートファングに殴りかかる。
「ギャン」
俺も追撃に外に出ると、ミコトの強化バフの効果が切れた。それはPDも同じだ。見れば、これまで全くダメージを受けていなかったグレートファングの攻撃で少しずつだが傷が付き始めている。俺の強化スキルはまだ切れていない。魔術の効果時間が短くなっている?
「気を付けろ。バフの効果が切れているぞ!」
ミサオはPDがダメージを受け始めていることに気付いていないみたいだったので注意する。
「ほんと!? あ、ダメージ受けてる!」
全く。人形に自分の身を守らせるんだから、しっかり管理しろよ。フライアイはまだ何もしてこない。ただ空中をフヨフヨと漂っているだけだ。
それがまた不気味なんだが。
少しずつだが、グレートファングの数も減ってきた。残り六体とフライアイ一体。すると、フライアイが瞬きしたかと思うと、フライアイの前に黒い球が現れ放たれる。
「ちょ。PD!」
ミサオの呼び掛けにPDがミサオを守るように体を覆う。
ドォォオン!
PDを中心に黒い球が爆発を起こす。直撃を受けたPDの腕が千切れかけている。
「おいおい。こいつマジか!」
ミサオがこいつのせいだと言っていたのがよく分かった。グレートファングよりもフライアイを先に倒さないと全滅するかもしれない。
「<ウォーターアロー>」
ミコトがすかさずフライアイに水の矢を放った。フヨフヨと漂っているだけのフライアイは避ける動作をすることもなく水の矢を受ける。
「やった? う、嘘だろ」
ミコトの魔力は攻撃魔術士程高くは無いがそれでもかなり高いはず。だが、フライアイは殆ど無傷でフヨフヨと浮いている。
「あいつ、魔術系の攻撃殆ど効かないくせに浮いているから苦労するのよ」
あの高さにいるフライアイを物理攻撃しろと。弓でもなけりゃ届かないぞ。さて、どうするかな?




