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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第2章 魔王と戦争

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悪霊のいる村

 バランの治療を行うために近くの村。ゴス村へと商隊は向かっていた。ゴス村まではあと二時間も掛からないそうだ。


「なぁ。あの噂。どう思うよ」

「どうだろうな。噂は間違いであって欲しいけどなぁ」


 護衛の冒険者達が小声で話をしているのが耳に入った。噂ってなんだろう?


「こんな事が無ければ、出来れば寄りたくなかったよなぁ」


 別の冒険者が今度は俺達にも聞こえるように話す。


「馬鹿! 声がでかいって」

「あの、ゴス村って何か問題でもあるのですか?」


 ミコトが冒険者たちに質問をすると、ばつが悪そうに冒険者達は教えてくれた。


「聞こえたのならしょうがない。実は今から向かうゴス村なんだが、出るらしいんだ」

「出るって? 何が?」

「幽霊だよ」

「幽霊!」


 ミコトが大声を出す。ひょっとしてミコトってお化けとか苦手なタイプかな?


「それってモンスターのゴーストとかの話ですか?」


 俺が質問すると冒険者は首を横に振った。


「いや。モンスターじゃない。死んだ人間の魂の方だ」


 本当に幽霊の類というのを聞いたミコトの顔が青ざめる。


「ミコト? 大丈夫?」

「わ、私。お化けとか幽霊とかホラーものが昔から苦手なんです」


 やっぱり。有り体と言えばそうだけど、ホラー系が苦手という人は少なくない。俺は、虫は嫌いだけど、ホラー映画とかは大好きな方だ。でも、本当に幽霊とか見た事は無いからいざ本物が現れた時、まともに動けるかと言われるとよく分からない。


「あくまで噂だからな。ただ、気を付けろよ。二人共」


 俺達が何故気を付けないといけないのだろう?


「何をですか?」

「ゴス村に出る幽霊。若い女を狙って現れるらしいからな。何でも女に恨みを持ったまま死んだ男の霊らしいぞ」

「は、はは。お、脅さないでください」


 ミコトの顔が引きつっている。まあ無理もないか。苦手な幽霊に襲われると言われればしょうがない。


「ミコト。大丈夫。俺が一緒にいるよ」

「アスカぁ。君も姿は女の子なんだからぁ、襲われる対象だよぉ」


 アルが要らない一言を言う。俺がアルを睨みつけると、視線を外し、俺の頭に飛び乗ってきた。


「だってぇ……」

「ミコトが怖がっているだろう。だって、じゃないよ」

「ごめぇん……」


 そんな話をしている内にゴス村へと辿り着いた。幽霊が出ると噂されてはいるが、見た目は至って平凡な村だった。幽霊など現れるような感じではない。


「バラン。さあ、君はこっちだ。他の者は、出発までゆっくり休んでいてくれ。先の戦いで傷付いた者は、付いてきてもらっても構わない」


 何人かの冒険者はバラン達と共にこの村にある治療院へと向かって行った。俺は、この村の冒険者ギルドへと向かった。例の噂の情報が何か分からないかと思ったからだ。


 冒険者ギルドに着くと、中は閑散としていた。アンファ村の方がまだ数人は冒険者が居たものだが、ここは本当に誰もいない。何しろ、受付すらいないのだ。


「本当にここは冒険者ギルドなのか?」


 クエストボードには、数件の依頼が貼りつけてある。冒険者ギルドで間違いないようだ。


「どうしたんだろう? 何で受付すら居ないんだ?」


 アルがすいっとカウンターの奥へと入っていく。


「あ、こら! アル!」


 カウンターの奥へと入って行ったアルが戻って来ると、奥から男が一人面倒くさそうに出て来た。


「はぁぁぁ……。誰だ? こんな所に何の用だ?」


 こんな所にって……。冒険者ギルドだろ。ここは。


「すみません。ここは冒険者ギルドですよね?」


 俺を見た男は驚いた様子で俺の質問に質問で返して来た。


「いや、お前みたいな女が何でこんな所にいるんだ? 早く出ていった方が身のためだぞ」

「それはひょっとして噂に関わることですか?」


 男が頷き俺の知りたかった話を始めた。


「そうだ。噂をどういう風に聞いたかは知らないが、この村には今、悪霊が棲みついている。それも若い女ばかり襲う奴だ。そいつのおかげで受付嬢は辞めて出ていくし、悪霊退治のクエストは受けた者が次々と返り討ちにあって、冒険者がついに寄り付かなくなっちまうし、散々なんだよ。ここはもう駄目だな」

「その割には、村から出ていかないんですね?」

「出られないんだよ」


 出られない? どういう事だ?


「どういう事ですか?」

「どういう理屈か分からん。この村出身の者は、何故か村から出ていくことも出来ない」


 悪霊の呪いみたいなものか?失礼と思いつつも、男に<鑑定>を使ってみる。


 名前はウィズ。ここのギルドマスターか。あ、やっぱり。ステータスの状態異常欄にモーレス・マッシュの呪いというのが付いている。


「何か誰かに覗かれているような気がするが?」


 周りをキョロキョロとウィズは探る。やばい。<鑑定>を止めるとウィズも周りを見渡すのを止めた。


「何だったんだ? 一体? まあいい。そういう訳でお前みたいな若い女はこの村から早く出ていった方がいい」

「出たくても連れの怪我の治療が終わらない事には出ていけないですから。その悪霊に心当たりは?」


 少し考えるようにして、ふぅっと溜息を吐くと口を開いた。


「たぶん。あいつだろう……。この村の誰に聞いても同じ奴の名を答えるはずだ……」


「モーレス・マッシュ……。この村の恥だ……」


 ウィズの話はこうだ。この村に二年前までモーレス・マッシュという青年が居た。その青年は無類の女好きで、村の女達から嫌われていた。この冒険者ギルドには外からやって来る冒険者が居るため、モーレスはよくこのギルドに足を運んでいたという。


 ある日、一人のきれいな冒険者がこのギルドへやって来た。モーレスはその冒険者がひどく気に入ったらしく、すぐに声を掛けたが、あっさり断られた。


 それでも諦めなかったモーレスは、冒険者が止まっている宿に夜侵入し、寝込みを襲おうとしたが、手練れだった冒険者が襲われる前に切り伏せたという。


 モーレスは即死の傷を負ったにも関わらず、冒険者に迫ったらしい。あと一歩で冒険者の体に手が届くという所で、不気味な笑みを浮かべながら事切れたという。


 完全に変態だ……


 それから、若い女が夜寝ると、胸を触られる感じや足を何かが撫でられているような感じを訴え出したらしい。気味悪がって、村にいた若い女は皆、村を出ていったらしい。その時はまだ出られたらしいが、女が居なくなると、他の村人は一切村から出られなくなったという。


 そして、この悪霊が出たという噂が広まり、外からの訪問者も殆ど無くなり、村はかなり厳しい状態なのだという。


「悪霊か……。ミコト大丈夫かな?」


 とりあえず、ミコトが待っている馬車まで戻り、俺が聞いた話をミコトや他の冒険者に話す。ミコトは嘘でしょと嘆いていたが、悪霊は夜に出るから、ここを離れれば問題無いだろうという話をしていると、バランの治療に三日は掛かるという話が出た。


「う、嘘……」


 ミコトが気を失いそうなくらいショックを受けていた頃、一人の女がこの村の入り口にやって来た。


「ここね! やっと着いたわ!」


 その女は冒険者ギルドへと足を運ぶのだった。

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