表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第1章 救世主と聖女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/227

ボーナスモンスター?

 サウスバレン行きの船が出る翌日までに出来ないかとアンファ村に居た時は遭遇出来なかった銀色のスライムの討伐クエストを受注した。元の世界のゲーム感覚で言えば、メタルスライム。きっと経験値が高いと思う。


 成功報酬も一万ゴルと中々良い金額だった。何より失敗時のペナルティ無しというのも、今日残り半日程しか無い俺たちには都合の良いクエストだ。


「アスカ。大丈夫なのかな?」

「何が?」


 メタルスライムを探しに近くの草原を歩いているとミコトが質問してきた。


「その新種のスライム討伐。今日見つけられなかったら、全くの骨折り損だと思うよ」

「その時はその時さ。元々、あっちのゲームでも遭遇率の低いモンスターだし」


 完全にゲームのメタルスライムと同じ扱いをしている俺に心配そうな目を向けてくる。


「ゲームとは違うよ?」

「二人共ぉ、何の話しぃ? ゲームってなぁにぃ?」


 俺たちの会話についてこれないアルが質問してくる。


「ゲームっていうのは、玩具だよ。その中に出てくるモンスターに似たようなスライムが出るんだ」

「ふぅん」


 玩具と聞いて興味を失くしたのかアルは素っ気ない返事を返した。


 暫く歩くと、メタルスライムがよく目撃される通りに着いた。


「ここだな」


 ここはエスティや他の村へと続く分かれ道。それなりに人通りがある道だ。確かにこんな所で、メタルスライムが暴れたら迷惑この上ない。


 しかも、討伐に向かった冒険者達を悉く退けているというのだから、ゲームに出てくる経験値ボーナスモンスターとは一緒にしない方がいいのかもしれない。


「アル。上から見て分からないか?」

「ちょっと待ってねぇ」


 アルは俺の肩から飛び上がり上空へと上がって周囲を見渡す。


『この辺にはそれらしいのは居ないみたいだよぉ』


 念話を使って周囲には居ない事を伝えてきた。


「居ないみたいだな。もう少し先に行ってみるか」

『ちょっと待ってぇ。向こうで何か動いているよぉ。こっちに向かって来てるぅ』

「ミコト。こっちに何か来ているらしい。準備はいいかい?」


 ミコトは神器のスモールロッドを構える。


「大丈夫。いつでもいけるよ」


 スライム相手なら斬撃特性が付く装備の方が良いか。斬撃特性のある右手にオーガファング、左手にゴブリンハイクローを装備し、こっちに向かって来るという何かに備える。


『来るよぉ』


 アルの念話を聞く頃には、近くの草がガサガサと音を立てていたから俺も既に察していた。このサイズはスライムで間違いない。ただ、通常のスライムとは比較にならないくらい速い。


 メタルスライムだ。間違いない!


「す、スライムなの?」


 ミコトはスライムとは思えないスピードに動揺している。


「ああ、きっと奴だ。来るぞ!」


 草が蛇行しながら揺れている。的を絞らせないようにするためだろう。スライムなのに知能も高そうだ。


 ガサッ!


 草の中から銀色の流線形ボディの塊が飛び出てきた。やっぱり、奴だ。飛び出てくると同時に、体を変形させ、無数の針をこっちに伸ばして来る。


「<ホーリーバリア>」


 ミコトは動揺していたにも関わらず、障壁を直ぐに張ると、メタルスライムの攻撃を防ぎきる。


 自分の攻撃を防がれたメタルスライムは、直ぐに草の中へと入っていった。草の陰に隠れはしたが、気配を感じる。逃げてはいないようだ。


「ミコト、油断しないで。あいつは隠れているぞ」


 初撃を防いでミコトは少しホッとしていた。俺はミコトに注意する。


「大丈夫。今度はこっちの番よ」


 ミコトの前に三本の水の矢が現れ、障壁を解除すると当時に、奴が隠れた草の方へと撃つ。その内の一本がメタルスライムの体に当たる。


 ベチャッ……


 うん? ベチャ? 魔術が当たった音じゃないぞ。全く効いていないのか。魔術が効かないのか、単純に魔防が高いのか? どっちか分からないけど、効かない事には変わらない。メタルスライムは反撃とばかりに炎の矢をミコトに向けて放つ。不意をつかれたミコトは炎の矢を受けてしまった。


「きゃっ」


 ミコトにダメージが通った。


 ちょっと待て。ミコトの魔防でダメージが通るという事は、紙防御の俺が喰らえば一撃で終わる?


 冗談じゃない。ボーナスモンスターなんて考えどころじゃない。ボスモンスター級だ。ゲームと一緒に考えた俺が甘かった。


 だけど、こいつのスピードから考えたら逃げるのは無理だ。さっきの<ホーリーバリア>だってよく間に合ったと思った程だ。たぶん、あいつはAGIが三桁ある。それに対し、俺は十二。<アクセルブースト>を使った所で倍の二十四。どう足掻いても追いつけないし、逃げられない。だったら覚悟を決めて戦うだけだ。


「ミコト、援護頼む!」

「分かった! <ウォーターアロー>」


 ミコトが五本の<ウォーターアロー>をメタルスライムへと放つ。自分にダメージが入らない事が分かったからか、避けようともしない。だが、牽制にはなる。


 俺は横から近付き右ストレートを叩き込む。ガチッ。スライムを殴った音じゃない。やっぱり硬い金属を殴ったような感触と音だ。一切ダメージが通った様子が見られない。メタルスライムの意識がこっちに向いた気がする。


 俺は咄嗟に横に飛ぶと、その後を一本の針が通り過ぎる。あいつの攻撃は速くて一瞬でも逃げ遅れれば直撃を免れない。ただ、攻撃が単純で体を針のように真っすぐ伸ばすか魔術による攻撃の二種類。両方共、直線状の攻撃だ。来るのが分かっていれば、どんなに速くても避ける事は出来る。


 攻撃が通らないのもいつもの事だ。<衝波>を叩き込むだけだ。あとは、あいつの体力がスライム程度である事を祈る。


「アスカ! 大丈夫」


 ミコトが俺に<ホーリーバリア>を張ろうと構えを取った時、草の中からメタルスライムと共にスライムが五匹ミコトに向かって突進してきた。


「こいつ、今スライムを召喚したぞ」


 今までメタルスライムの気配しかなかったのに、スライムが五匹突然現れた。召喚されたとしか思えない。


 ミコトは自身の<ホーリーバリア>を張り、メタルスライム達の体当たりを防ぐ。障壁にぶつかり、反動で後ろに飛んできた所に俺は<衝波>をメタルスライムに叩き込んだ。奴の体内に衝撃波が通り、ダメージが入るが、光の粒子に変わる素振りは見えない。やっぱり。体力もスライムとは全く違うのか。


 スライム五匹は、ミコトの障壁に向けて消化液を飛ばし続けている。何でも溶かす消化液は、障壁に当たってジュウジュウと音を立てている。魔術の障壁も溶かすのかよ。


 メタルスライムはというと、動きが止まった。全く動こうとしない。その間に俺は<錬気>でOPを回復し、魔力回復薬を飲んだ。


「どうしたんだ?」


 今のうちに次の<衝波>を当てるか。俺が動こうとした時、メタルスライムの前後左右に四つの魔術陣が現れ、そこからリーフスライムが現れた。

 現れたリーフスライムはメタルスライムに緑色の光を当てる。しまった。体力回復か。


「させない」


 リーフスライムを攻撃しようと近付く俺をメタルスライムが体を針のように伸ばし邪魔をする。


「くっ」


 近付けない。このままでは折角与えたダメージが全て回復されてしまう。そう思った時、リーフスライム四体が水の矢に貫かれ、光の粒子と変わる。ミコトの<ウォーターアロー>だ。


 奴の意識がミコトへと移る。その隙を逃す俺じゃない。<衝波>一撃で倒れないのならと、今思い付いた事を試してみる。


 <毒手>発動。俺の右拳が紫に染まる。その右拳で<衝波>をメタルスライムの背後から叩き込むと、右拳の当たった場所が錆びたように茶色に染まる。


「!!!」


 メタルスライムが声にならない悲鳴のような甲高い声で鳴いた?


 錆色の部位が少しずつ体全体に拡がっていく。苦しいのだろう。見るからに動きが鈍くなってきた。


 <錬気>でOPを回復させ、止めを刺そうと構えるが、錆びた部分が体全体を覆ったメタルスライムは動きを止め、そのまま光の粒子へと変わった。その場に残ったのは銀色のスライムの核。


「やった。倒したぞ」

「良かった……」


 俺達は、緊張の糸が切れるとその場に腰を下ろし、暫く動けなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ