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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第1章 救世主と聖女

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ガートリア道中

 サウスバレンへと渡るためエスティレにある唯一の港町であるガートリアへと出発した俺達は平原を歩いていた。


 エスティからガートリアまでは徒歩で三日程掛かるらしい。


 馬車を借りれば、二日程で着くらしいが、少しでも出費を抑えるのとモンスターを討伐しながら、レベルを上げるため徒歩で向かう事にした。


「ミコト、どうだい? 覚えた攻撃魔術は?」


 俺達二人だけで旅をするのであれば、やっぱり攻撃の手が俺だけだと心許ないという事で、エスティで光属性と相性が良い水属性の<ウォーターアロー>の巻物(スクロール)を購入し、取得したのだ。


 ミコト自身は聖属性で光属性とは異なるが、俺のゲームの知識で光と聖は似た属性であることから購入した。


「うん。今までサポートしか出来なかったから、覚えて良かった。このもらった神器。スモールロッドも私の仕様になっているみたいで、INTとMND両方の補正があるから助かるわ」


 ミコトの<ウォーターアロー>で串刺しになり、光の粒子に変わっていくゴブリンを見ながら、俺は買って良かったと思った。高かったからな。あの巻物。足下見過ぎだろ。あの巻物屋。


 初級魔術なのに、巻物が貴重だからと一万五千ゴルもしたから。


「これからは私にも任せて」

「頼りにしているよ」


 はぐれゴブリンを討伐してからは暫くモンスターと出会う事もなく、問題無く進んでいた。太陽が落ちかけて来た頃、野営の準備をしているとアルが念話で話しかけて来た。


『アスカぁ、今日ずっと後をつけて来ている人がいるのはぁ、気付いているぅ?』

『ああ。流石に街を出る前からずっとつけて来ていたから、気付いているよ』

『どうするのぉ?』

『どうって? 別にまだ何もしていないからな。今はまだ放っておくよ』

『ミコトはぁ?』

『どうだろう? 気付いていないかもしれない』


 俺はこれまでの戦闘経験からその辺の気配を察知するのに慣れて来ていたが、ミコトは今までセレス達に守られながら活動をしていた。そういうのはまだ不慣れかもしれない。


 さりげなく聞いてみるか。


 夕飯の準備をしているミコトの傍に近寄り、手伝うついでにそっと聞いてみる。


「ミコト、静かに聞いてくれ。エスティからずっと俺達を付けている奴に気付いている?」

「え? そうなの?」


 どこに追跡者がいるのか探そうとするミコトを止める。


「探さないで。気付かれる。気付いていなかったのなら、頭の片隅に置いていてくれるかい? どういうつもりか分からないから、様子を見ているんだ」

「分かった」


 夕飯の準備を済ませ、食事を取るとそれぞれのテントに入り、眠りにつく頃、俺達を追跡していた奴がこっちへ近付いてきているのが分かった。


「へっへっへ。あんな大金を女二人だけで持ち歩くなんて。俺はなんて運が良いんだ」


 その男は俺のテントの前に来ると、中へと入って来た。


「さて、大金の入った袋はどこかな?」


 侵入してきたのはやっぱり金目当てか。つまり、冒険者ギルドで俺がカオスドラゴンの素材を換金した所を見ていたか、或いはそれを聞いて後をつけてきていたという事だ。


「ちっ……、どこにもねぇ。なら、あの姉ちゃん達を襲って、遊んだ後に、金を奪うか……」


 舌舐めずりしながら寝ている俺の方に近付いて来る。男が俺の毛布をバサッと剥ぎ取った瞬間、俺の拳が男の顔面を思いっ切り強打していた。


「ぶべっ」


 男がテントの外へと吹っ飛んでいく。俺の貧弱なSTRで吹っ飛ぶとは只の雑魚か。


「てめぇ、何しやがる!」

「それはこっちのセリフだろう。人の寝床を襲って来ておいて、何を言っている!」


 男の叫び声にミコトも起きてテントの外に出てきた。


「アスカ。何があったの?」


 男の姿をみたミコトが状況を把握する。ミコトの前に水の矢がいつでも発射出来るように準備された。


「強盗、強姦だ。容赦しなくてもいいんじゃないかと思うけど、どうかな?」

「いいんじゃなぁい?」


 アルの返事に合わせてミコトも頷く。

 男は慌てて走り去ろうと後ろを向くと、男に向けてミコトが準備していた<ウォーターアロー>を放った。男に真っ直ぐ飛んでいった水の矢は、男の頬を掠め離れた地面に突き刺さる。


 男はゾッとしてこちらを振り向く。


 ミコトは次の矢を既に準備している。


「次は当てます」

「濡れたら寒いだろう。火も準備してやるよ」


 俺は<紅蓮>を使い、右手に炎を纏わせる。


「ひ、ひぃぃぃ。お、覚えていろよ!」


 慌てて男は全力でその場から退散していった。


「やれやれ。後をつけてたのはあいつで間違いなさそうだな」


 簡単に気配がばれる程のお粗末な相手で良かった。ふと、ミコトの方を振り向くと、よく見ればミコトは寝間着のまま。そして、強盗にあったからか体を震わせていた。


「あ、あの。アスカ」

「うん?」

「その、嫌ならいいんだけど、一緒に寝たらダメ?」


 な、女の子と一緒に寝るだって。いや、俺も今は女の子の体か。撃退したとはいえ、怖かったのだろう。まだ震えている。まあ、いいか。ミコトが良いのなら別に。


「いいよ。ミコトが大丈夫なら」

「良かった。ありがとう」


 ミコトのテントを片付け、俺のテントで一緒に寝た。二人でも十分なスペースがあった。


「あの、明日からも野宿の時は一緒に寝てもいいかな?」


 自分一人だけで襲われるのが怖いのだろう。


「いいよ」

「良かった。心細かったから。頼りにしているね」


 女の体でも、可愛い子に頼られたら悪い気はしない。これからもミコトをしっかり守らないと。そう心に誓い、俺は眠りについた。


 翌朝、俺が起きた時、隣に寝ていたミコトの姿が見えなかった。


「あ、おはよう。アスカ。もうご飯の準備出来ているよ」


 ミコトの用意した朝食を取り、ガートリアへの道を進む。昨日の強盗は完全に立ち去ったみたいだ。もう後をつけて来ている気配はない。この日は全くモンスターとも遭遇せず、一日が終わった。


 そして、エスティを出て三日目。このエスティレ唯一の港町ガートリアへ辿り着いた。


 港町というだけあって、エスティ程ではないにしろ人が多く行き交い、賑やかな所だ。

サウスバレンへ出航する船を探しに港の方へ向かう。


 港に着けば、サウスバレン行きの船は、明日の正午に出航予定の便があるとのことだ。


 俺達は、乗船を予約した後、宿を取り出発までに小銭程度でも稼げればと冒険者ギルドに寄ってみた。


「何か直ぐに片が付くような依頼なんてあるかな?」


 依頼ボードを見てみると、気になるクエストを見つけてしまった。


「これは……」


 受付嬢に依頼を受けた後、達成出来なかった時の話を聞いたが討伐が難しいから今日出来なくてもペナルティは無し。これは受けるしかない。


 《銀色の新種スライム討伐 報酬一万ゴル》

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