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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第1章 救世主と聖女

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カオスドラゴンとの再戦

 アルとプリメラがカオスドラゴンの気配を察知した頃、エスティでは住人達が騒いでいた。何故なら、突如として空が黒い影で覆われたかと思い、見上げてみれば巨大な黒竜が街の象徴でもある試練の塔の頂上に滞空していたからだ。


「な、なんだ。あの黒い竜は……」

「プリメラ様……」


 住人達は恐怖に駆られながらも、プリメラが守ってくれると信じ、逃げ出す者は一人もいない。その黒竜がエスティに居る全員に念話を送る。


『ここに奴の気配を感じた。奴がいるのならば我の前に連れて来い。さもなければ、この塔を破壊し、街も全て火の海に変えてくれよう。十分待つ』


 住人達には黒竜が誰の事を言っているのか分からない。「奴」と言われても助かるために連れてくる事など出来るはずも無く、恐怖に怯え建物の中で震えるしかなかった。


「アル。あいつが言っているのは、お前の事か?」


 俺はアルに質問する。アルは静かに頷くと


「そうだろうねぇ。たぶん」

「奴の狙いは、あの方の分身である、お前なのね。そう。私との会話で気配を察知されてしまったのね」


 プリメラも何故カオスドラゴンがここに現れたのか理解した様子だが、あの方?


「プリメラ様、あの方とは?」


 ポーラもプリメラの言葉に引っかかったのか、プリメラに質問をすると、プリメラは困った表情をして返事をした。


「そうね。あの方はあの方よ。アルの本体。でも、まだその存在はあいつの力でまだ明らかに出来ないの。私は、あの方と繋がりが出来たから認識出来るようになったわ。でも、まだ名前を名乗る事も存在を説明することも上手く出来ないの。ごめんなさい」


 アルも分身なのに本体の事を話すときはノイズで聞き取れなかったのと同じ理屈なのだろう。でも、プリメラには、アルの本体を認識出来るようだ。


「それはともかく。どうしますか? 私たちでは、あの黒竜と戦う事なんて出来ないですよ」


 ミコトの言う通りだ。俺達はあいつの力を目の当たりにしている。ベント村を一瞬で焼け野原に変えた奴だ。それにどう見ても俺達の攻撃が通用しそうな奴じゃなかった。


「プリメラ様なら戦えるのではないかしら?」

「ポーラ。それは無理よ。あなた達、いえ、アルと出会う前の私なら何とか戦えたかもしれないけれど、今の私は力の一部をあの方にお返ししたの。戦っても私の方が殺されてしまうでしょう」


 そこまであのカオスドラゴンは強いのか……。じゃあどうする?このまま十分経過して、奴の攻撃で殺されてしまうだけなのか?


 何か方法がないのだろうか?皆が沈黙している中、プリメラが口を開く。


「そうですね……。一つだけ方法があるかもしれません……」


 プリメラの言葉に俺達は耳を傾ける。


「あなた達であの竜を倒すのです」


 いや、それが出来るんだったら、あいつは今ここに居ないだろう。あれは俺達とは次元が違い過ぎる。


「どうやって倒すのですか?」


 ポーラも当然の疑問をプリメラに向ける。


「今のままではあなた達ではあれを倒すのは無理でしょう」

「だったら……」


 プリメラが俺の話を遮るように、手を前に掲げる。そして、俺達でも倒せる手段を口にした。


「今から説明をします。最後まで話を聞いてくださいね。確かに私は力を失いました。でも、私は女神の力を全て失くした訳ではありません。戦う事が出来なくても、あれの力を封じる事は出来ます」


 成程。話が見えて来た。あいつの力を封じた所を俺達で倒すという事だな。でも、封じる事が出来るのなら、力を封じた後に自分で倒せば良いのでは?


「力を封じている間、私は動けません。ですから、あなた達に倒して頂きたいのです」

「分かりました。やるわよ。アスカ、ミコト」

「そうだな。どっちにしろ倒さない事には俺達も助からないだろうし」

「はい。守備は私に任せてください」

「僕は、無理だよぉ。みんな、頑張ってぇ」


 アルの緊張感のない間延びした話し方で、緊迫したこの雰囲気が一気に和んだ。


「ふふふ。アル。あなたはアスカの<空納>の中に隠れていなさい」

「分かったよぉ」


 アルが俺の胸に突っ込んで来て、ふっと消える。あいつ、勝手に<空納>の入り口開けられるんだから、いちいち俺の胸に飛び込んでこなくてもいいと思うんだけど……。


「さあ、準備をしますよ。力を封じる術を使うのに五分はかかります」


 あいつが待つと言った十分まで残り三分といったところだ。つまり、二分は時間を稼ぐ必要があるのか?


 あれ相手に二分なんて保つのか? 一瞬で消し炭になりそうだが……


 そして、十分が経った。


『さあ、時間だ。奴を出せ』


 当然、エスティ中の人間は誰も動かない。俺達も静かに様子を伺っている。


『出す気は無いという事だな。ならば、この街諸共消えてしまうが良い』


 カオスドラゴンが大きな口を開くと、口の中に黒い炎が現れると、試練の塔に向かって勢いよく放つ。黒い炎のブレスが試練の塔の頂上に当たると、塔が破壊され、俺達の姿が晒された。


『そこに居たのか? いや、奴の反応が無い。確かにここに奴の気配を感じた。貴様らどこに隠した』

「どなたの事を仰っているのか分かりませんが、私の塔を破壊したのです。ただで済むと思わないでください」

『劣等神の分際で粋がるな。我はお前程度に殺られはせぬ』


 そう言うとカオスドラゴンは、再びブレスを放とうと大きく口を開く。俺はプリメラを見るが、首を横に振る。まだ準備が出来ていないようだ。これはヤバい。


「させない! <ソニックエッジ>!」


 ポーラが口の中の黒い炎に向けて、斬撃を飛ばす。しかし、ポーラの斬撃は黒い炎に呑まれるだけで全く効果が無かった。


「そんな……。全く効かないなんて……」

『くはは。お前のような虫けらの攻撃が我に通用するとでも思ったか。身の程を知れ』


 カオスドラゴンが黒い炎を俺達に向けて再び放つ。あれは避けるなんてレベルの炎じゃない。塔を覆いつくす程の黒い炎が俺達に向かって来る


「まだ! <ホーリーバリア>っ!」


 ミコトが全力で<ホーリーバリア>を張るが、澄んだ青いバリアは簡単に砕け散り、再び俺達に襲い掛かる。


「一枚で駄目なら、何枚だって!」


 ミコトはありったけのMPで<ホーリーバリア>を何重にも張る。一枚、一枚とバリアは破られていくが、最後の一枚で何とか防ぎきる事が出来た。


『ほう。まさか我のブレスを虫けらが耐えるとは。だが、次は無いぞ』


 全MPを使い果たしたミコトは膝を付いている。カオスドラゴンは三度ブレスを吐こうと口を開いた。


「プリメラ!」

「お待たせしました。〝我が力、我が名の下に命ずる。其は荒れ狂う力を封じる風。其は悪しき力を戒める剣。ここに出でて、彼の者の力を封殺せん〟<破邪封殺>」


 プリメラの詠唱と共にカオスドラゴンの頭上に風の刃が形成される。その刃がカオスドラゴンの頭上に突き刺さるとすっと姿を消した。


『なんだ、今のは? 全く効かぬぞ。そんなこけおどしの攻撃で我を倒せると思ったか。これで終いだ』


 カオスドラゴンがブレスを放とうとしたその時、プリメラがフフッと笑い、小さな手をカオスドラゴンに向け拳をぐっと握り込む。


「<縛>!」


 カオスドラゴンの体から白い光が溢れ出すと同時にブレスが放たれた……。

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