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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第1章 救世主と聖女

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上級冒険者

 アルの質問に対する答えを考えていた時、ポーラとミコトが冒険者ギルドから帰って来た。入って来た二人の顔が妙に思いつめたようなのは気のせいだろうか?


「おかえり。どうしたんだい? 二人共、何か思いつめたような顔しているけど?」


 アルも気になったのか、二人の傍へすいぃっと飛んでいくと周りをくるくると回りながら、二人の顔を眺めている。


「アスカ。ごめんなさい」

「どうしたんだ? 急に謝ったりして」

「あの、私たちと一緒にギルドまで来てもらえますか?」


 俺がギルドに? 何かあったのかな?


 俺が尋ねるよりも先に、ポーラが口を開いた。


「アスカ。実はあなたとビリーが決闘することになってしまったの……」

「は?」


 ビリーと言えば、ミコトと一緒にアンファ村へやって来たあの如何にも騎士といった格好をしていた男だよな。


「何でビリーと俺が決闘することに?」

「実は……」


 二人が俺に事情を説明してくれた。


 簡単に言うと、ポーラは試練の塔に挑む俺の実力をポーラの父が確かめたい、ミコトはマリー達と別れ俺と旅に出るのなら、俺がミコトを守れる実力を持っているのか確かめたい。その結果、ビリーに白羽の矢が立ち、今から戦う事になったと。


「何だよ、それ。まあ、俺の力が信じられないのは仕方がないことだとしても、二人の意思を無視して力で押さえつけようって考えは納得出来ないな。分かった。どこまで戦えるかは分からないけど、やってやるよ」


 俺は一旦アルの質問については後回しにする事にして、二人と共に冒険者ギルドへと向かった。さて、やってやると言ったは良いものの、あの頑丈そうなビリーに俺の貧相な攻撃力でどこまでやれるのか。おそらく、ダメージを与える事が出来るのは<衝波>だけだろうし。


 戦い方を考えている間に、ギルドへと着いた。中へ入ると、待っていたとばかりにビリーが俺の前にやって来た。


「よく逃げずに来たな。君のような女性を痛めつけるのは不本意だが、ミコトとポーラのためだ。相手をしてもらうよ」

「それはこっちのセリフだよ。二人の意思を尊重しないで、自分たちの意見を頭ごなしに押し付けようだなんて。二人のためにも俺の実力を見せてやるよ」


 トーマも俺の元へやって来ると、俺をじっと見てくる。


「お前、レベルは?」

「あんたに言う必要はあるのかい?」

「生意気な口を聞くな。私はここの、エスティレの冒険者ギルドのトップだぞ。お前達の力を把握しておくのは当然だし、お前達冒険者は、私に報告する義務がある」


 ポーラの父親とは言え、ちょっと態度が悪くないか。悪口は言いたくは無いけど、これは所謂、パワハラに当たるぞ。するとセレスがトーマの肩を叩き、注意した。


「父さん。その言い方は無いでしょう。ポーラの仲間だからと冷たく当たらないの」

「なっ。私はそんなつもりは無い。おっほん」


 軽く咳払いすると、俺に向かって言い直す。


「すまん。どうやら口調が厳しかったようだ」

「いえ、冒険者の実力を知っておく必要があるというのは、立場的に言われればそうかもしれないですし。俺のレベルは十一です」


 この間のオーガ討伐でまた一上がっていたからな。まあ、どうせレベルが低いことを隠すつもりもない。正直に俺が答えると、トーマがふぅっと溜息をついた。


「レベル十一で試練の塔に挑むのか。無謀にも程がある。ビリー、力の差を見せてやりなさい。ただし、実剣と神器を使うのは禁止だ」

「当たり前ですよ。鎧も着ませんよ。こいつと同じ防具で挑むし、獲物は訓練用の木刀を使います」

「よし、では修練場はこちらだ。付いてきなさい」


 皆に付いていき、修練場へと到着すると、俺とビリーの二人だけが修練場の中央へと足を運んだ。


「勝負はどちらかの降参、もしくは気絶によって決する事とする。二人共良いな」

「「はい」」


 ビリーは小手を身に着けず、それ以外は俺と同じ装備を付けている。


「いいのかい? 自慢の鎧をお披露目しなくても」

「鎧を着けていては、君が何も出来ないだろう。もっとも、この装備でも君の力では、僕に傷を付けることは出来ないだろうけど。君は真剣を使ってくれて構わないよ。上級冒険者の実力、とくと見せてあげよう。ミコト、君を守れるのは僕だ」


 うん? ビリーのミコトを見る目が……。こいつ、ひょっとして……。そういう事か。


「なるほど。ミコトに良いところを見せたい、自分の傍に置いておきたいと。好きなんだな。ミコトが」

「な、何を言っているんだ。君は! さ、さぁ、始めるぞ」


 俺の言葉が図星だったビリーは動揺を見せるが、木剣を構えるとすぐに気持ちを落ち着ける。流石は上級冒険者か。俺は両手にリーフスライムの核で作った緑色のスライムブロウを装備する。


「そんなもので良いのかい? 僕も舐められたものだな」

「どうかな? いくぞ。<アクセルブースト>!」


 ビリーに向かって駆け出す。ビリーは一瞬俺のスピードに驚いたが、動じることなく木剣を真っすぐ俺の方に向けて待ち構えていた。


 右拳をビリーの顔面目掛けて真っすぐ突き出すと、ビリーは気に留める事もなく俺の攻撃を受けた。


「やっぱり、君の細腕ならこの程度か」


 予想通り、全く効いていない。俺の攻撃を受けたままビリーが木剣を俺に向けて真っすぐ振り下ろす。その攻撃を横に回り込み躱すと、脇腹を殴りつける。これも効いていない。自身の横を取られた事で、ビリーは木剣を横に薙ぐ。その攻撃を後ろに飛んで躱す。


「君のスピードは確かに大したものだ。でも、決定打にかける。こんな貧相な攻撃では、ミコトを守ることなんて無理だ。旅をしたいのなら、諦めて一人で旅立つんだ」


 ビリーが俺に向かって走って来るが、俺から言わせれば、攻撃と防御は確かにビリーの方が高い。でも、スピードが全く駄目だ。ほら、こんなに遅い。ビリーが目の前に来ると同時に木剣を縦に振り下ろすが、振り下ろしきった時には、もう俺はビリーの目の前にはいない。<アクセルブースト>を使った俺はビリーよりも速い。上級冒険者と言っても、俺を舐めているのか攻撃が単調で読みやすい。


 攻撃を読んでいれば、動きを見た後に動いても間に合う。そのままビリーの背後へと回り込み、ビリーの背中を殴りつける。


「攻撃が効かなくても、お前の攻撃も俺には当たらないよ!」

「そうかな? 僕はまだ君に力を見せていないよ」


 俺の方へ振り返るのと同時に木剣を振って来た。俺はしゃがみ込み、伸び上がるのと同時にビリーの顎に一撃を加える。


「言ったろう。君の攻撃は通用しない。それに引き換え、君は僕の攻撃一発で動けなくなるんだよ!」


 ビリーが木剣を俺の足目掛けて突き付ける。最小の動きで放った突きは、俺の太ももを掠めた。


「くっ」


 後ろに飛び退き、ビリーとの距離を取る。掠めた足が痛む。何でだ? ほんの少し掠めただけだぞ。


「アーツ、<ペインパライズ>。今、君が受けた攻撃だよ。これで君のスピードは封じた。これでお終いだ」


 ビリーは俺の方へと駆け出し、木剣を振り上げる。足が動かない。<ペインパライズ>の効果か。


「<パワースラッシュ>!」


 ビリーが木剣を振り下ろす。その攻撃が修練場の床を思い切り叩きつけ、ダンッという大きな音が鳴った。トーマ達は、俺の負けで終わったと思った。だが、その場に崩れ落ちたのはビリーだった。一同が驚愕の声を上げ、勝負は俺の勝ちで終わった。

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