表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第1章 救世主と聖女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/227

焼き鳥

 首都エスティを目指し、アンファ村を後にした俺達はゆっくりと街道を歩いていた。


「そういえば、エスティまではどれくらいかかるのかな?」


 俺が尋ねると、ミコトが返事をする。


「私がエスティからアンファ村までに一週間かかりましたよ」

「そうね。何事もなければ、一週間くらいで着くと思うわよ」

「ふーん」


 二人の答えを聞いているとポンと俺の頭の上にアルが降りてきた。


「アル。お前、今までどこに行っていたんだ?」


 村を出る時、宿から出るまでは一緒にいたアルだが村を出るときには姿が消えていた。


「あの子がいたからぁ、見つからないように高い所を飛んでいたんだよぉ」


 パルに一度しか会っていないのに、ここまで苦手意識を持つとは。よほど嫌だったんだな。


「それよりぃ、一週間もかかるのぉ?」

「そうね。アルだけなら空を飛んで行けば、もっと早く着くかもしれないわね」

「転移出来ないのぉ?」


 ポーラが首を横に振る。


「転移魔術なんて高等魔術、あの村で使える人はいないわ」


 アルはそうなんだと俺の頭から、肩へと移る。


「アル、自分で飛べよ」

「嫌だよぉ。ずっと飛ぶのは疲れるもん」

「お前、軽くないんだぞ」

「失礼だなぁ。アスカ、女の子に重いなんて言ったら駄目だよぉ」

「え、お前、雌だったのか」

「この分体は男の子だけど、君と同じ呪いだよぉ。君が呪われたから僕も呪われたんだぁ」


 それは、つまり俺とアルには繋がりがあって、俺が戻ればアルも戻るということなのか。


「だからぁ、僕を大事にしてねぇ」


 結局、俺の肩から降りない。

 仕方なく歩き続けた。


「それにしても、モンスターとは思ったより出会わないものだな」

「そうね。街道沿いなら比較的安全に進めるわよ」

「アスカは、モンスターに出会いたいんですか?」

「そうだな。出会わないに越した事は無いけど、強くなるにはモンスターと戦わないといけないしなぁ」


 例のポーラの占いの事もあるし、少しでも強くなっておきたい。でも、モンスターと積極的に戦いたいかといえば、そんなことはない。戦うという事は、命の危険が伴う。俺一人じゃないし。


 ミコトは俺よりレベルは高いとはいえ、戦闘向きじゃない。俺とポーラが守らないといけないんだ。スライム程度なら問題はないけど、前に戦ったゴブリンの集団みたいなのが来たら、守りきれるか自信はない。


「アスカ?」


 そんな事を考え込んでいるとミコトが心配そうに顔を覗き込んできた。


「うん? あ、ごめん。ごめん。ちょっと考え事していた」

「アスカ、そろそろ今日休む場所を探すわよ」


 そうか。今日から野宿だからな。寝所の確保がいるのか。それにしても早すぎないか?


「もう?」


 俺はポーラに質問を投げかける。

 

「そうよ。あまりモンスターが出ないとはいえ、こんな街道にテントを立てる訳にもいかないでしょう。休める場所を早めに確保しておくのも大事なのよ」


 確かに言われてみればそうだな。暗くなってから活発になるモンスターだっているかもしれない。俺たちは、近くに今夜野宿をするのに丁度いい場所がないか付近を探していると丁度いい広さの大きな木の根元を見つけた。


「あそこはどうかな?」

「あら、いい感じじゃない。もし雨が降っても木が防いでくれるし。テントを張っても誰の邪魔にもならないわ」


 よし決まりだな。ちょっと今いる所からは離れているけど俺の見つけた木の根元まで行くことに決めた。俺たちが木の傍まで近付くと、風が吹いてきた。


「風?」


 その風で俺の顔が切れた。


「アスカ、顔が切れているけど、どうかしたの?」


 ミコトが俺の顔を見て不思議そうにしている。切れた場所を触ると、傷はそんなに深くは無い。指に付いた血を見ていると、ポーラが突然剣を構えた。


「どうした? ポーラ、剣なんか構えて」

「アスカも早く! あの木、フロックスターリングの棲み処だったみたいだわ。今の風、あいつらの攻撃よ」

「え?」


 その時、バサバサッと木の枝という枝が揺れたかと思ったら、木の上の空の色が黒く染まる。いや、違う。小さな鳥が大量に飛んでいるんだ。


「アスカ、あなた強くなりたかったのでしょう? 丁度良かったわね。あいつらは弱いけど、数が半端じゃないからかなりの経験値が入るわよ」

「そうなのか?」


 すると、さっきの風と違って今度は十本程の風の矢が俺達を狙って飛んできた。俺はバックステップで風の矢を躱す。俺の居た地面は風の矢によって抉れていた。


「<ウインドアロー>? そんな。ケイブバットもそうだったけど、フロックスターリングまで魔術を使うなんて……」

「あいつの影響でぇ、強くなっているんだよぉ。アスカ、僕ぅ、戦えないからぁ、君の中に隠れるねぇ」


 え? 俺の中に隠れるって? 俺が驚いていると、アルが俺の胸に向かって突っ込んできた。おい、胸に隠れる気なのか? 俺の胸に突っ込んだアルの姿が消える。は?どういうこと?


「次が来るわよ! ミコトは下がって!」


 ポーラの指示でミコトが後ろに下がると同時に俺とポーラが前に出る。フロックスターリング達の狙いが俺に集中し始めた。


「くそ。俺ばかり狙って来るし、降りて来ないぞ。あいつら!」

「<ファイアアロー>」


 ポーラの放った炎の矢が群れに向かって飛んでいったが、黒い空が割れ、その間を炎の矢が通り過ぎて行ってしまった。


「やっぱり駄目ね。すばしっこいから、私の<ファイアアロー>じゃ当たらないみたいだわ」

「そもそもあいつら何体くらいいるんだ? 百体位いそうだぞ」

「そうね。たぶんそれくらいだと思うわよ。大体百体位の群れに一体のリーダー、クラウンスターリングが混じっているはず」

「ごめんな。俺が選んだ木にあんなのがいるとは思わなかった」

「何を謝っているの?」

「そうですよ。あんなのが居るなんて分からなかったじゃないですか」

「いえ。むしろ、アスカ。あなたよく見つけてくれたわ」

「え? どういうことだ?」

「今夜のメニューは焼き鳥よ」

「は?」

「だから、焼き鳥。あいつら焼いたら美味しいのよ」


 うん? モンスターって光の粒子になって消えるよな?


「あれを倒したら、光の粒子になるんじゃないのか?」

「あれは、ラビと同じよ。モンスターじゃなくて小動物なの。ラビと違って縄張り意識が高いから、近付いてきた人を襲うけど」


 そうなんだ。食材になる上に経験値ももらえる鳥なんだ。でも、それは倒せたらの話だよな。そんな事を考えていると、再び大量の風の矢が飛んできた。


「くそ! こうなったらあの木を使って、直接殴りに行ってやる」


 ついでだ。ファイアリザードから入手した火蜥蜴の鱗を使って、<錬装>してみるか。<空納>を使い、右手に火蜥蜴の鱗を取り出し握り込むと、目の前の木に向かって走り出した。


「<アクセルブースト>! <錬装>!」


 火蜥蜴の鱗が形を変える。今にも燃えそうな真っ赤な籠手が俺の右手に装備される。


「うぉ。これは……。やばい、何か大量のOPを消費したぞ。とりあえず今は片手だけで……」


 左手にはスライムブロウを取り出し装備する。そして、右手が炎に包まれる。


「まじか! 右手が燃えた! って、熱くない? これがこの武器の特徴なのか」


 木を蹴って、三角飛びをすると群れの中に突っ込み、右手を振るう。ボトボトと炎に焼かれ、フロックスターリングが地面に落ちていった。


 暫くすると、他のより大きな個体が俺の炎に焼かれ落ちていった。すると、残ったフロックスターリングは一斉に逃げ出した。どうやら今のがクラウンスターリングだったみたいだ。頭をやられ、一目散に逃げていったのだろう。


「ふう。やっと終わった」

「アスカ、お疲れ様」

「お疲れ様でした。傷、癒しますね」


 ミコトが群れの中に突っ込んだ時に出来た切り傷を<ヒール>で癒してくれている間、ポーラは地面に落ちたフロックスターリングの死体をせっせと回収していた。


「焼っき鳥、焼っき鳥……」


 うれしそうに拾っているわ。そんなに美味しいのか?


 戦闘が終わったのが分かると、俺の目の前に<空納>を使う時の黒い入り口が現れた。


「何だ? <空納>は使っていないぞ」


 すると、その中からアルが出てきた。


「ふぅ。あ、アスカ、お疲れぇ」

「アル。お前、俺の中にって、<空納>の中に入っていたのか?」

「そうだよぉ。戦闘で邪魔にならないようにぃ、君に覚えてもらうために、巻物(スクロール)を宝箱に入れておいたんだぁ」


 あの宝箱、そういう役割があったのか……。まあ、便利だからいいや……。俺たちは、野宿の準備をすると今夜の食事はさっきのフロックスターリングの焼き鳥だった。


 まじで、旨かった。次見つけたら、もっと退治しよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ