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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第1章 救世主と聖女

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出発

 風呂でポーラの一撃で気を失った俺だったが、風呂から上がり服を着たミコトの<ヒール>で意識を取り戻した。わざとじゃないのに。ポーラの一撃はきついぞ。


「もう。アルをだしにして」

「まったく。懲りないんだから」


 わざとじゃないんだけど、見てしまったのは本当だから何も言えない。ミコトが目を合わせてくれない。これから短い間かもしれないけど、一緒に旅をするというのに、これじゃあいけないな。この先の風呂はよく考えないと。


「ほら、裸を見られたのにミコトが<ヒール>をかけてくれたんだから、お礼を言いなさい」


 あ、ミコトが見られたのを思い出して、顔が紅く染まった。


「ミコト、その、ごめん。<ヒール>ありがとう」

「い、いえ。その、ずっと目を瞑っているのも辛いですよね。私こそ変なもの見せてごめんなさい」

「いや、変なものだなんて! きれいだった。って、何言ってるんだ俺……」


 あれ、ミコトが満更でもないような顔している。何でだ?


(綺麗だったって……。何でだろう。嫌な気がしないな)


「うん。お風呂は今後の課題ということにしましょう」


 俺達は頷き、部屋へと戻ると早速旅立ちの準備を始める。買い出しに必要な物を見繕いリストアップする。食料、回復薬、テント……。買わないといけない物がかなりあるな。あれ、これって、俺の所持金じゃ全然足らないぞ。


 そういえば、まだバーグの護衛クエストの報酬受け取っていなかった。それで当面の分は足りるはず。


「報酬取りに行くか」


 ギルドに行くとマスターとパルの話し声が聞こえてきた。


「マスター、ポーラさん帰っちゃうんですか?」

「そうだな。彼女が旅をするのなら、きちんと父親と話をつけないと駄目だろう。こっちに飛ばされたのは、彼女の命を守るためだというのを知らないからなぁ」


 どういう事だ?

 ポーラの命を守る?


「その話、前に少ししか聞いていないんですけど」

「君は詳しく知らなくても良いんだよ」


 俺は聞いていた方がいいんじゃないか。その話。


「その話、俺に教えてくれませんか」

「アスカくん! 立ち聞きとは良くないな」

「すみません。未受理の報酬を取りに来たら、話し声が聞こえてしまって」

「まあいいよ。でも、これはポーラくんには内緒だよ」


 俺は頷く。マスターはパルにも肯定を促すと、パルも頷いた。そして、マスターは俺達にポーラがこのエスティレの最果て、アンファ村に派遣されたのかを説明した。


「そう……ですか……」

「ま、これが本当かどうかは別の話だがね。でも、あいつはそれを信じている。君は当事者の可能性が高いから話をしたんだ。いいかい。これは、ポーラくんには絶対内緒だよ」

「分かりました……」

「あ、そうでした。アスカさん、報酬を受け取りに来たんですよね。ちょっと待っていてください」


 パルは奥に入り、報酬を取ってくると俺に手渡した。


「はい。バーグさんが色を付けてくれていますよ」


 俺に渡された報酬は、確かに依頼報酬よりもかなり多い。この村の生活から考えたら、かなり無理をしていると思う。バーグに心で感謝を述べると、報酬を受け取った。


「ありがとう。それじゃあ、旅に出たら暫く会えないだろうけど、いつか、またここに来るよ」

「はい。また会える日を楽しみにしていますね」


 ギルドを後にして俺は足りなかった物資を買い込み、宿へと戻って行った。それにしても、マスターから聞いたポーラの話。パルは納得したような感じだったが、こっちの世界ではそれが当たり前なのか?


 エスティにいた有名な占い師にセレスとポーラの将来を占ってもらった時、ポーラが将来エスティでの戦闘で命を落とす。そんな占い結果が出た。それで、エスティから遠ざける事でポーラが命を落とさないようにしたそうだ。たかが、占い。それを信じて娘をこんな辺境に飛ばすなんて。この世界では占いは絶対と思っているのかな?


 だけど、今回の旅でエスティに向かう事になった。そして、占いの結果で命を落とすのが丁度今年らしい。だから、俺が当事者になる可能性があるという事だった。あの強いポーラがそう簡単に死ぬとは思えない。


 今、エスティにはセレスだっている。そう簡単に死ぬような事はないだろう。むしろ、ポーラが殺されるような事があるのなら、ポーラより弱い俺の方が先に命を落としそうだが……。


「まあ、所詮は占いだ。当たるも八卦、当たらぬも八卦というし」


 宿に戻ると、俺より先に買い物を終えていたポーラとミコトが出立の準備を丁度済ませていた所だった。


「アスカ、遅かったわね。何をしていたのかしら?」

「私たちはいつでも出発出来ますよ」


 ミコトはまだ視線を合わせようとしてくれない……。

 この旅の中で少しずつ信頼を取り戻せればいいけど。


「この間の報酬を受け取って、買い物をしていたんだよ。俺も準備出来たよ。よし、じゃあ出発しようか!」

「その前にパーティ登録をしませんか?」

「パーティ登録?何だい、それは?」


 ポーラの方を見ると、ポーラがしまったという表情をして視線を逸らした。


「え?今までポーラさんと行動一緒にしていたから、てっきりパーティ登録をしているのかと思っていましたけど」


 ミコトの言葉にポーラが俺の方に手を合わせ、


「アスカ、ごめんなさい。私こっちではずっと一人で活動していたから、パーティ登録の事をすっかり忘れていたわ」


 ミコトが笑っていた。


「パーティ登録をしておけば、そのパーティが倒したモンスターの経験値がパーティ全体に入るんですよ。あと、本当かどうか分からないですけど、ドロップアイテムの個数と確率が上がるらしいです」


 それは今までに討伐したモンスターを考えたら、もう少し俺のレベル上がっていたんじゃないのか? 本当にゲームみたいな世界だな。ここは。でも、ゲームとは違う。死んだら生き返るなんて出来ないのが現実だ。


「どうすればいいんだい?」

「ステータスプレートを」


 俺はミコトに言われプレートを取り出すと、ミコトが俺のプレートに自分のプレートを重ねた。その上にポーラも自分のプレートを重ねる。三枚のプレートが白く光る。


「はい。これで完了です。私たちはこれでパーティです。改めて、よろしくお願いします」

「「よろしく!」」


 俺達は宿を出て、村の入り口へと歩いて行った。すると、パルが見送るために入り口で待っていた。


「皆さん」

「パル。見送り、ありがとう」


 ポーラがパルに挨拶をするとパルの目に少し涙が浮かんでいた。


「気を付けてくださいね。本当に。またこの村に帰ってきてください」


 それは、あの話を聞いたからか。俺はこくりと頷き、パルに別れの挨拶を告げた。


「ああ。皆で帰って来るよ」

「「「行って来ます」」」

「いってらっしゃい」


 パルに見送られ、俺達はエスティ目指し、アンファ村から出ていった。この先、何が待ち受けるのか。力をつけて、アルの言う俺にふざけた呪いをかけた奴をぶっ飛ばしてやる!


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