パーティ戦闘訓練
カオティックナックルを装備する事が出来、満足な俺だったが、ふと思った。レベルアップしていないのに、何故ステータスが届いたのかと。そして、その疑問は独り言として、声に出ていたようだ。
「でも、何でステータスが満たせたんだ?」
「アスカ、ゴーレムと戦ってレベルアップしたんじゃないの?」
「してないな。レベルは変わってないぞ」
サキの質問に答えてみたが、基礎ステータスが何もしないで上がるとは思えない。
「あ、アスカは神器を装備しているんだよね。そっちじゃない?」
ミコトが俺の体を指差す。
「そうか! こいつらのステータス補正率か!」
俺は神器を<鑑定>で調べてみると、正しくその通りだった。全ての神器のステータス補正率が上がっていた。基礎力が上がればもっと効率よく強くなれるのだが、こればかりはしょうがないとしか言えない。
「あのゴーレムと戦うと神器の性能が上がるのかもな」
「僕のヘルヘブンもそう言われるとそうかも。でも、僕はレベルもそれなりに上がってきたけどね」
「ねえ、アスカ。ノルディアイスにはすぐに向かう?」
ミコトに質問されて俺は頷く。
「そうだな。アルとアルバの事を考えたら直ぐにでも向かった方が良いと思う」
「そっか」
「どうしたんだ?」
ミコトの残念そうな表情を見て質問してみた。
「三人でゴーレムと戦ってみたかったかなって」
あのゴーレムとパーティーで挑むとなると、かなり難易度が上がる気がする。それはサキも同じ事を考えていた。
「僕もしてみたい気はするけど、厳しいと思うよ。三人で挑むとなるとかなり難易度が跳ね上がるんじゃないかな」
「それでも、やってみたいの。私の特性も特異だし、味方の状況に合わせた訓練してみたいなって」
成程。確かにそれはそうかもしれない。回復、遠距離、近接それぞれこなせるようにはなったが、<ジョブチェンジ>を使わないと切り替えが出来ないとなると、タイミングとか慣れないと十分に活かせないか。
「分かった。一回だけな。サキも良いかな?」
「僕は良いよ」
「二人共ありがとう」
それじゃあ、折角だ。ここはもう一つ<錬装>でカオスドラゴンの素材を使った武器を作ろう。カオティックナックルは竜鱗を使った。残るは牙と爪、そして骨。恐らくこれらも砂竜の鱗が必要。砂竜の鱗は残り二枚。つまり二種類しか作れない。どれを使うか。牙と爪は今までの傾向から、斬撃特性を持った武器になるだろう。骨は打撃のみと思う。カオティックナックルは打撃のみだ。それなら、次は斬撃特性付きの方が良い。牙と爪。この二択。
「良し! 決めた!」
「「え!? 何!?」」
俺が突然大きな声を出したため、二人が驚き同時に聞き返してきた。
「ごめん。驚かせた。いや、もう一つ武器を作ろうと思ってさ。どの素材を使うか迷っていたんだ」
「そっか。びっくりしたよ」
「私も驚いたよ。それで何に決めたの?」
ミコトの質問に素材を見せて<錬装>を使う。
「これさ。<錬装>」
俺の右手に取り出された素材。カオスドラゴンの爪と砂竜の鱗。二つの素材が輝き混ざり合い、一つの武器へと変化する。
「出来た。カオスクローか」
出来上がった武器を鑑定して名前は分かったが、クローと言う名に合わず、その形はカオティックナックルと変わらない。いや、よく見ればカオティックナックルは指先まで覆われているのに対し、カオスクローはその指を覆う部位が無い。その代わりに四つの穴が空いていた。
「これはもしかして……」
カオスクローを装備して、意識をクローへと向ければ、その穴から長さ五センチメートルで指の太さ程の爪が現れた。
「やっぱりタイガーフィストと同じ仕様だ」
但し、爪の長さは非常に短い。とはいえ、こればかりはしょうがない。出来上がった武器の形状を変化させるのは無理だ。
俺は消費したOPを<練気>で回復させ、<癒しの光>でMPを回復させる。これで準備完了だ。
「お待たせ。行こうか」
「また武器を作ったの?」
「ああ。これでかなり火力アップしたかな」
「へぇ。それは頼もしいね」
俺たちは、再び訓練場へと向かう。訓練場の中央に辿り着くと大きな音を立てながら大地が盛り上がり、巨大な人の形へと変化していく。
「よし、やるぞ!」
ゴーレムの完成と共に俺は右手にカオティックナックル、左手にカオスクローを装備して、<瞬歩>を使うと、ゴーレムの頭上に一瞬で移動する。
「さあ、新しい武器に新スキル、アーツの大盤振る舞いだ! <光迅>!」
右手を頭に打ち下ろす。その突きは、正しく光速。放った自分ですら繰り出した突きを認識出来ない程の速度だ。
アーツを使うと同時にゴーレムの頭部を破壊した。
「え!?」
「嘘!?」
予想外の威力に俺自身驚きの声を上げ、サキも目の前の光景を信じられず声に出した。ミコトは、口をポカンと開けたまま立っている。
三人共拍子抜けした感じで呆けてしまった。何せ、俺が頭の上に乗ったと思った瞬間、ゴーレムの頭部が破裂するという結果。
だが、ゴーレムは頭部を破壊されても、まだ動いていた。そのまま俺を捕まえようと手を伸ばしてくる。
「捕まらないよ」
俺は<瞬歩>で地上へと戻るとゴーレムの右足に<光迅>を叩き込む。右足が砕け、ゴーレムがバランスを崩し倒れ込む。
「チャンス! <インフェルノ>!」
倒れ込んだゴーレムにサキが追撃する。飛ばしたチャクラムから炎が吹き出しゴーレムを襲う。
「あれ? 効いてない? 今は魔術耐性モードなのかな?」
「なら、俺の<光迅>で!」
倒れたゴーレムの横腹に<光迅>を叩き込んだが、全く効いていなかった。
「うん? 物理も効かないぞ?」
両方の攻撃耐性とか汚い。俺たちの攻撃が通じない間にゴーレムは失くなった頭部と右足を復元していた。
「<ホーリーランス>」
ミコトの放った魔術がゴーレムの胸を貫き、ゴーレムが蹌踉めく。
「あ、攻撃が通った」
こいつは、三人の攻撃の内、一人だけ攻撃が通るように耐性をランダムに変化させているのか?
「ミコト」
「任せて」
ミコトは、前に出ると戦乙女に<ジョブチェンジ>すると、槍を前へと突き出す。
「あ、駄目だ。サキ!」
「OK。<サンダーボルト>」
サキの放った雷は、ゴーレムに当たり前に霧散する。それを見た瞬間に俺はゴーレムの腹を殴ったが、これもダメージは無いようだ。
「防御耐性が分からない」
「こんなの普通のモンスターには居ないよ」
「そうね。何でさっきの私の魔術は効いたのかな?」
「もしかして? <気弾>」
俺はゴーレムの顔面に<気弾>を放った。光弾は、ゴーレムの顔に当たると爆発し、その衝撃でゴーレムが倒れた。そこに再びサキが<サンダーボルト>を放つと、ゴーレムの右腕を吹き飛ばした。
「今度は効いたみたいだな」
「一体何なの?」
「俺の予想だけど、こいつは、物理、魔導、魔術の耐性をダメージを受ける度に変化させているんじゃないか? そして、俺の<気弾>は、防御無視の特殊攻撃だから、関係なく攻撃が効くのかも」
「魔導と魔術が別枠か。確かにそうかも」
「これ面倒だよ。ミコトはさっきこのパターンで倒したんだよね? 僕こんなの今まで無かったよ」
「取り敢えず、三人でそれぞれ攻撃をするしかないな。どの攻撃が通用するか分からないし」
二人が頷きゴーレムへと向き直って見れば、もう砕いた右腕は復元済みで、俺たちは溜息を吐くのだった。




