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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第五章 豊穣と異変

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空中庭園訓練―アスカ―

 サキと会話を終え、ゴーレムの下へと走り出した俺は、このゴーレムの異常な回復についての仮説を立てた。


 それは、この新しく手に入った神器。覇者の手甲。これを使った戦闘をしなければいけないということだ。単純な力押しでもゴーレムは破壊出来た。それでも、すぐに復活をするとなれば、何か戦闘を終わらせるきっかけがあるのだと思う。単純に粉砕すれば戻らないのではないかとも思ったが、なんとなく、粉々にしてもそこから復活しそうな気がする。


 それで、この手甲を使って勝つというとなると、攻撃を受けて、反撃をする。これしかないと思う。防御力は相変わらず紙装甲なので破壊不能な神器で完全に受けて、反撃するという流れになるのだろう。とはいえ、神器も完全に破壊不能という訳では無い。欠けたり、破けたりするが、自動修復されるから、破壊不能と言っているだけだ。あのゴーレムのパワーを真正面から受けて大丈夫なのかという不安が無いわけでもない。


 そんな事を考えている間にゴーレムの射程範囲に入ってしまった。ゴーレムは直ぐに俺に向けて右拳を打ち下ろして来た。


「ちっ」


 俺はこれをつい癖で躱してしまった。


「あぁもうっ! 躱してしまった!」


 とりあえず、回避後に一発ゴーレムの顔面に向けて、<風爪>を当てる。ゴーレムの顔面は斬り裂かれ、無くなったが、やはり直ぐに元に戻ってしまった。


 顔が元に戻ったゴーレムが今度は左拳を上に振り上げ、叩き付けて来た。流石に真上からの攻撃は受け止めて反撃に移るのは不可能だ。これは避ける。


 避けると、地面を叩き付けた左拳がそのまま水平に俺の方へと払ってきた。


「これは間に合わない!」


 ゴーレムの流麗な動きに回避が間に合わないのを悟った俺は、両手をクロスさせてその攻撃を手甲で受ける。


 ガチンッと、まるで金属同士がぶつかったような大きな音を立てて、俺はそのまま吹き飛ばされてしまった。


「へぇ。防御力とは関係なくノーダメージなのか」


 手甲で完全に防御が成功したら、どうやらダメージは受けないようだ。今までの防具だとガードしてもダメージは受けていた。それがこの覇者の手甲だとノーダメージで済むみたいだ。ただ、どこまでのダメージがノーダメージになるのか分からないし油断は禁物だ。それに相手の力が高ければ、今みたいに吹き飛ばされてしまう。


「成程。だから、使い方に慣れる為の戦闘訓練なのか」


 着地して、直ぐに体勢を立て直すとゴーレムが追撃体勢に入っていた。顔の前に光の玉が出来ている。


「おいおい、今まで物理攻撃しかしてこなかったのに、ここに来て、魔力を使った攻撃かよ」


 光の玉からレーザーのような光線が地面地面に沿って放たれる。その光線が走った跡を追うように炎が吹き上がる。


 これは防御なんて無理だ。レーザーを躱して、吹き上がる炎からも離れ、<フラッシュムーブ>でゴーレムの右肩に乗る。


「これでも喰らいやがれ」


 ゴーレムの顔面に拳を叩き込んで、レーザー光線を止めると、背後の方を光線が通り過ぎたのが分かった。出所を確認すれば、ミコトと戦っているゴーレムが放った攻撃だったようだ。


「他の冒険者に当たったらひとたまりもないぞ」


 かなりの高威力が予想される攻撃が、誰にも被害が出ない事を祈っていると、左手が俺を掴みに来ていたので、慌てて右肩から飛び降りた。


 そこを狙ってゴーレムは右足で俺を踏み潰しにかかる。これも回避は間に合わない。ゴーレムの足を手甲で受け止める。再び大きな音を立て、防ぐには防いだが、ゴーレムの体重を支えるには俺の腕力は足りない。押し返すどころかどんどんゴーレムの足は沈んで来ており、今にも押し潰されてしまいそうだ。


「訓練で死んだら元も子もないけど、どうする? 使うべきか?」


 恐らく龍神の加護の力を使えば脱出出来るだろうが、切り札をこんな所で使って良いものかと考えてしまう。


 迷っている間にもゴーレムは俺を踏み潰そうと更に力を込めて来た。使うしかないと思った時、ゴーレムが踏みつけている足を上げた。


「え?」


 何故? と疑問に思いながらも直ぐにその場から離れると、勢いよく右足が地面を踏みつけ陥没した。


 どうやら、踏み潰せなかったため、勢いよく踏みつけようと足を上げたようだ。知能はあまり高くないようだ。助かった。


 それにしてもこの覇者の手甲。装備値としての防御力は低いのに、物自体の硬さが異常だ。今更だけど、装備効果の防御力は恐らく、生身でダメージを受ける時の防御力なのだろう。


「つまり、敵の攻撃は、神器で受け止めれば、ダメージをかなり抑えられるって事か」


 それでも、ここまで硬いのはこの手甲だけなのだろうが。


 ゴーレムの後ろからミコトとサキがこっちに来るのが見えた。どうやら二人はもう倒したらしい。


「参ったな。先を越されたか」


 俺は深呼吸をして、ゴーレムに向かっていく。ゴーレムも俺の方へと走り出す。


 ゴーレムが右腕を大きく後ろへ引き、俺に向けて突き出した。俺はその拳を手甲で受け流し、そのまま懐へと潜り込む。


「これでどうだ!」


 <風爪>を纏った右拳を突き出す。風の爪がゴーレムの胴体に穴を開けていく。ゴーレムは反撃に左拳を振り下ろす。その攻撃も俺は左手の手甲で受け、軌道を逸らすと、無防備となった左腕に<風爪>を叩き込んだ。


 ゴキッと大きな音を立て、ゴーレムの左腕が折れ、地面に落ちる。


 ゴーレムの左腕を折った後、ゴーレムから離れた。直感が離れろと言っていたからだ。


 その直感は正しかった。俺の居た場所をレーザーが貫き、火柱を上げる。


「危なかった。精神攻撃はもう使っていないみたいだ」


 そこで俺は違和感に気付いた。ゴーレムの行動パターンが変化したのもそうだが、ゴーレムの体が修復される気配が無い。折れた左腕もそうだが、胴体を抉った跡もそのまま残っていた。


「漸く倒せそうだな」


 おっと。また油断しそうになった。危ない。もう一度深呼吸をして、気を引き締め直す。


 体を破壊されてもゴーレムは構わず攻撃を仕掛けてくる。その攻撃を手甲でいなして、反撃に顔面に<風爪>を飛ばし、左拳に<紅蓮>を纏わせ、抉った胴体に当てる。


 顔面が吹き飛び、胴体も炎に包まれ、粉々に砕け始めた。


 暫く様子を伺ってみたが、復活する兆しはなくやっと倒せたようだ。

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