空中庭園訓練―ミコト―
俺がゴーレムに向かって駆け出す少し前、ミコトはゴーレムとの戦いである事に気付いていた。
「私の攻撃に合わせて、耐性を変えているみたい」
ゴーレムとの戦闘が始まり、戦乙女となって攻撃を加えた後、距離を取られ、ゴーレムが魔術による攻撃をしてきたため、聖女にジョブチェンジし、<ホーリーバリア>で攻撃を防いだ。
その後、聖女のまま<ウォーターアロー>を放ったが、ゴーレムの防御力が高いのか、傷一つ付ける事が出来なかった。
ゴーレムは反撃に<ストーンアロー>を連続で撃ってくる。その攻撃を<ホーリーバリア>で防いでいたが、これでは身動きが取れない。
「聖女の魔力で駄目なら聖魔の魔力で」
聖魔へとジョブチェンジすると、<ホーリーランス>をゴーレムへと放つ。聖なる光の槍がゴーレムへと刺さる。
「駄目なの?」
<ウォーターアロー>とは比べ物にならない程の威力があるはずだった。戦乙女のホーリーランスでただ攻撃するより火力はあるはずにも関わらず、ゴーレムは無傷だった。
単に物理防御力が低く、魔術防御力が高いだけなのかもしれない。そうすると戦乙女で直接攻撃に出るしかない。
正直、接近戦が怖くないなんてことはない。離れて戦う方が自分には合っている気がする。アスカには、センスがあると言われたが、センスがあろうが怖いものは怖い。
だけど、今は怖いと言っていられる状況ではない。他の二人もゴーレムと戦い始めたから。自分の事は自分でするしかない。
「もう。私だってやる時はやるんだから」
気合を込めて、ゴーレムへと突っ込んで行く。距離を詰められまいと逃げるゴーレムを追い掛け、少しずつ距離が縮まっていく。
「<ホーリーランス>」
距離が広がらないように、魔術を放ちゴーレムの動きに牽制をかける。
そして、距離が詰まった所で、手に持つホーリーランスを突き出した。
「嘘!? なんで!?」
突き出した槍は、ゴーレムの体に弾かれた。
「さっきは傷付けられたのに!?」
もう一度槍を突き出す。やはり、ゴーレムの体を傷付ける事は出来ず、弾かれてしまった。
それなら魔術でと、近距離から<ホーリーランス>を放つ。
すると、さっきは全く無傷だった<ホーリーランス>で傷を付けることが出来た。魔術の攻撃力は、聖魔の時に比べて低いにも関わらず。
「私の攻撃に合わせて、耐性を変えているみたい」
分かった。接近戦を挑めば物理攻撃の耐性が上がり、距離を取ると魔術攻撃の耐性が上がる。
「でも、どうすれば良いの?」
ジョブチェンジの効率の良い戦い方を学ばせるつもりなのだろうというのは分かった。でも、離れた敵に戦乙女での攻撃は届かない。接近戦を聖魔で挑めば、素早さが足らない。攻撃を受けてしまうのが目に見えている。
では、どうすれば良いか?
遠距離から槍が届く距離に一瞬で移動する。アスカみたいなスキルや素早さがない。駄目。近距離で魔術を放つ。ゴーレムに攻撃してくれと言っているようなもの。
「これは、私が戦い慣れるための訓練」
つまり、ジョブチェンジを上手く使い、その時の最善のジョブを選ぶための訓練。
しかも、最初の攻撃は入った。あの時は、聖女から戦乙女に変化した後の攻撃だった。
「不意を突いた攻撃なら当たるのかな?」
試しに聖魔に変え、魔術で攻撃しつつ、近付いていく。ゴーレムは、魔術耐性の状態になっているのか、やはり全く攻撃は効いていない。それでも構わず攻撃の手を止めない。
すると、ゴーレムが両手を組んで、前へと伸ばした。その組んだ手の前に光が集まっていく。
「私の攻撃が効かないから、大技で来るつもりなのね」
これは、チャンスだ。ゴーレムの攻撃に注意して、魔術を撃ちながら前へと駆け出す。
ゴーレムの前に光が集まり、直径一メートル位の光の玉が出来た。ミコトの放った<ホーリーランス>が光の玉に当たるが、びくともしない。
次の瞬間、光の玉からレーザービームのような光線が放たれた。
ここだ。
ミコトは戦乙女にジョブチェンジし、一気に駆け出す。光線を放っているゴーレムは隙だらけだ。一気に距離を縮めたミコトは、ゴーレムの顔目掛けてホーリーランスを突き出す。
ミコトの突き出した槍は見事にゴーレムの顔を砕いた。だが、砕いた後には直ぐに元に戻る。体の一部を欠損したところで、周りの土を使って直ぐに修復出来るみたいだ。
ミコトは直ぐに次の攻撃に出るが、もうゴーレムの耐性が魔術から物理耐性に変わっていた。
たが、それは、ミコトの狙い通り。
槍が弾かれた瞬間に聖魔にジョブチェンジし、<ロックオン>を掛ける。そして、早口で詠唱を始め、
「我が身に宿りし聖なる力。全てに等しく与えし光。その力我が前に立ち塞がりし、厄災を聖なる炎となりて打ち払いたまえ」
ゴーレムは、ミコトに向けて拳を振るう所だった。
「遅いわ。<ホーリーフレア>!」
至近距離での<ホーリーフレア>がゴーレムに直撃し爆発する。
「きゃああああっ」
自分の放った攻撃の余波に襲われミコトは悲鳴を上げながら吹き飛ばされていった。
衝撃波も収まり、ミコトが立ち上がって、ゴーレムを確認すると、その爆心地には何も居らず、どうやら上手くいったらしい。
「良かった。なんとか倒せたわ」
周りを見ると、丁度サキもゴーレムを倒す所だった。まだ戦っているのはアスカだけ。
そして、遠く離れた場所で訓練をしていた他の冒険者達も今の爆発で何事かとこっちを見ているようだ。
「サキ、大丈夫?」
「僕は平気だよ。それより、今の爆発は何? 凄かったけど」
「私の切り札だよ。これで暫く使えなくなっちゃったけど」
「切り札かぁ。いいな。僕にはそういうものが無いからね。羨ましいよ」
ミコトは首を傾げながら、サキに質問する。
「あの男性に変身? が切り札じゃないの?」
「あれは切り札とは呼べないよ。確かに時間制限とかあるけど、物理攻撃に変わるってだけだもん」
「そうなの? でも、きっとこれから覚えると思うわよ」
「そうだと良いな。それより、アスカはまだ戦っているみたいだね」
「そうみたい」
二人は俺の戦っている方へと歩き出すのだった。




