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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第五章 豊穣と異変

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空中庭園訓練場

 バルディアに転移された俺たちは、広大な野原の真ん中に立っていた。


 よく見るとかなり離れた場所で他の冒険者がモンスターと戦っているのが分かる。


「バルディアったら、いきなりなんだから」

「サキ、ここは?」

「前に話した冒険者達を育てる為の空中庭園だよ」

「庭園って言う割には、花とかあまり無いね」


 ミコトの言う通りだ。庭園というより空中に浮いている島と言った方が良いかもしれない。


 辺り一面野原で、草は生えていて緑は多いが、花の一輪も咲いていない。


「それはそうだよ。ここは戦闘訓練用の広場だもん。休憩所とか、寝泊まりする施設は、花や木に囲まれていて凄いよ」

「そうなんだ。それは見てみたいね」

「後で行こうね。それより、来るよ」


 サキの言葉を聞いて、辺りを見回すが何も居ない。気配も感じないのだが。


「始まるよ。構えて!」


 俺とミコトが戦闘態勢に入るのと同時に地面が盛り上がり始め、それは、身長五メートル位の人形を象った。


「ゴーレムか!」

「そう。訓練用ゴーレム。訓練の対象者の強さに合わせて強さが変わるから、気を付けて!」


 バルディア、何の説明もなくいきなり転移させて、行きましょうかと言っておいて、自分は来ないとは。


 まあ良い。ミコトはホーリーランスを手に入れて、戦い方を学ぶ必要がある。<ジョブチェンジ>の使い方に慣れてもらおう。


「ミコト、君があれを倒すんだ。<ジョブチェンジ>を上手く使いこなせるように、頑張って」

「え!? 私だけで戦うの?」

「あぁ。そのための訓練用ゴーレムだろ?」


 俺はミコトの背中をポンと軽く押す。


「分かったわ。やってみるね」


 ミコトは、戦乙女に<ジョブチェンジ>すると、ホーリーランスを構えた。魔力を通して、槍の形になる。そして、ミコトが訓練用ゴーレムへと向かって行った時、サキが俺の方に顔を向けた。


「アスカ、何を言っているの? 君もだよ。ほら」


 サキが指差す方を見ると、もう一体訓練用ゴーレムが現れる所だった。


「成程。俺もこの神器に慣れろということか。サキ、お前は?」

「僕は、ここで十分に鍛えたからね。訓練は無いよ……? 嘘……」


 どうやらサキも訓練しろということらしい。訓練用ゴーレムがもう一体現れた。


「それぞれ頑張れって事だな! 頑張れよ!」


 俺は自分の前に現れた訓練用ゴーレムへと向かう。覇者の手甲。手甲というだけあって、手の甲部分も覆われている。練装武具も手の甲まで覆われるため、装備が嵩張ってしまうかと思ったが、どういう理屈か分からないが、覇者の手甲とタイガーフィストが一体化して、気にすることなく装備出来た。


 ゴーレムの巨体なら俺の速さには追いつけないだろう。一気に距離を詰めて、先手を取るつもりだった。


「!? この巨体で俺と同じ速さだって!?」


 向こうも俺の方へと走り出し、同じ速度で互いに距離を詰めた為、一瞬で距離が詰まった。


「だけど! その巨体ならこの至近距離では攻撃出来ないだろっ!」


 所詮は訓練用か。知能は低いようだ。ゴーレムの胴に一撃当てようと突き出した拳は空を切った。


「避けられた!?」


 あの巨体で俺の攻撃を避けたと一瞬動揺した瞬間、俺は地面に顔を叩きつけられていた。ゴーレムが俺の頭上に拳を振り降ろし、その一撃をまともに受けてしまったのだ。


「あ、がっ」


 更に反対の拳を振り降ろす。


「ぐはっ」


 や、ヤバい。こいつ強いぞ。訓練用ゴーレム。馬鹿に出来ない。更に追撃してこようとするゴーレムの右足に<風爪>を当てる。右足が砕け、バランスを崩したゴーレムの追撃は俺に当たらず、地面を陥没させた。そのままゴーレムは倒れ込む。その隙に俺はゴーレムから離れる。


「これ、本当に訓練用なのか?」


 ミコトとサキを横目で見ると二人共苦労しているようだ。サキなんか目茶苦茶文句を言っているみたいだ。叫び声が聞こえる。


「これはハイオーガキングと戦った時みたいに<瞬迅>と<烈波>の連携でダメージを与えるしかなさそうだ」


 ゴーレムは地面の土を吸収して、破壊された右足を復元すると立ち上がる。


「三人の中で一番に倒させて貰おうか!」


立ち上がったゴーレムが走り出す。俺もゴーレムに向かって行く。ゴーレムの間合いに入ったと同時に右腕が振り降ろされる。


「当たるか!」


 その攻撃を躱し、俺は前へ出る。そして、胴に<瞬迅>、<烈波>の連続攻撃を繰り出す。流石に今回の攻撃は避ける事は出来ず、ゴーレムの胴に直撃した。


 大きな音を立ててゴーレムの胴が爆発し、体が上半身と下半身に分かれた。


「良し。これで勝ったな」


 体を真っ二つにした事で勝ちを確信した俺を嘲笑うかの如くゴーレムの体が元に戻り、勝ちを確信し、油断していた俺は、ゴーレムの反撃を喰らい、サキが戦っている場所まで吹き飛ばされてしまった。


「ぐはっ。しまった。油断しないように注意していたはずなのに……」


 妙だ。何故かこのゴーレムと戦っていると、直ぐに油断してしまう。いつもならここまで油断することなんて無い。


「ちょっとアスカ。だから気を付けてって言ったよ。訓練用ゴーレムは、精神攻撃もしてくるの。油断しやすくなっているから、気を付けてよ」

「サキ、そういうのはもっと早く言ってくれよ」


 俺は起き上がり、サキの言葉に納得した。成程。だから、簡単に油断してしまうのか。つまり、強い心で精神攻撃を耐え、ゴーレムを破壊しなければ、終わらないということなのだろう。


「それで、体を真っ二つにしても復活するんだけど、どうしたら良い?」

「え!? アスカ、あれの体を真っ二つにしたの!?」


 サキの驚きようが半端ない。もしかして、このゴーレムはかなり頑丈に出来ていて、訓練を完了するには破壊ではなく、何らかの条件達成が必要なのではないか?


「真っ二つにしても復活するのなら、倒す以外の何かだよ。バルディアも慣れろって言っていたし」


 ゴーレムの攻撃を横に飛んで躱したサキは余裕無いからと俺から離れていった。


 慣れろか。つまりは、覇者の手甲を使った戦闘に慣れる。攻撃を回避ではなく、防御しろって事か? いや、防御力自体は大した事ないのに、防御なんて意味がない。


 そんな事を考えていると、俺はふと気付いた。


「あれ? 何で、ゴーレムの攻撃をまともに受けたのに、紙装甲に等しい俺が、全然大丈夫なんだ?」


 殴られればかなりの痛みはある。普通なら死んでもおかしくない程の攻撃だ。それなのに、よく見れば傷も無い。殴られて傷が無いなんてのもおかしな話だ。


 これは本当に攻撃を防ぐまで終わらない。そんな気がしてきた。それに、よく考えればあのゴーレム、殴る以外の攻撃をしてこない。これは試してみるしかないな。


 俺は決心して、立ち止まったままのゴーレムに向かって駆け出すのだった。

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