異世界アリウスの過去
龍神アルバとの接触で記憶を取り戻したバルディアは俺たちにこの世界の過去を語り出した。
「今この世界は私達三女神と三魔王の下にあります。ですが、私達は龍神アルバによって生み出された。そこまでは貴方達も知っていますね?」
「はい」
バルディアの質問に俺は頷く。
「私達が生まれる前、それまでは龍神アルバ、邪神ラフィーネの二神が世界を見守っていました」
邪神ラフィーネ。それが、俺の体をこんな風にした奴の名前か。
「邪神が世界を見守っていたんですか?」
俺の質問にバルディアは頷くと、話を続けた。
「はい。アルバが人や亜人、ラフィーネがモンスターを。それぞれがこの世界の均衡を保っていました」
よくラノベやゲームに出てくる光と闇の勢力みたいな物か。
「バルディア、でも、その二人はこの世界の外から来たって言ってたよね?」
「そうです。アルバとラフィーネ。二人の神は、元は異界人。この世界がモンスターの脅威に悩まされていた時に、あなたたちと同じように異世界から召喚されたのです」
つまり、異世界人がこの世界の神へとなった。名前の響きから俺たちとは違う世界みたいだな。
「二人は元々は仲間だったのですか?」
ミコトの質問にバルディアは首を横に振った。
「いいえ。この世界に召喚された時、別々の国に召喚されています。モンスターの脅威から世界を救う目的と二国の戦争の切札として召喚されているので、当時から敵同士だったようです」
バルディアの答えにミコトは何故かホッとしているようだった。何か思う所があったのだろうか?
「それで人間だったアルバとラフィーネは何故この世界の神に?」
「そこです。実はその二人がこの世界の神になる前は、元々一人の神がこの世界を統べていました」
あ、何となく察した。それはミコトとサキも同じようだ。そして、俺の予想通りの言葉がバルディアから伝えられた。
「そして、この世界を統べていた神をラフィーネが倒したのです。その時に、ラフィーネは神の呪いを受け邪神に。そのラフィーネを倒すために力を与えられ、アルバは龍神へと変わってしまいました」
「やっぱり……。それで、何故ラフィーネは神を倒すような事を?」
「それは分かりません。アルバの力が戻って来て、思い出した記憶はここまで。後は、アルバとラフィーネが互いに争い、この世界を滅ぼそうとするラフィーネをアルバが自身と引き換えに封印。その時、アルバ不在の世界の秩序を守る為に私達六神を生み出したのです」
「それじゃあ、ラフィーネがこの世界を滅ぼそうとした理由は?」
「分かりません」
ラフィーネがこの世界の神を倒した事、邪神となった後この世界を滅ぼそうとした理由は分からないのか。
それでも、ざっくりとしたこの世界の事が分かった。ラフィーネ自身も呪われたというが、同情はしない。
そもそも自分が呪われたからと他の人間を呪って良いなんて理由にはならない。
「難しい話はぁ、ここまでぇ」
アルが話しを区切った。
「どうしたんだアル?」
「今はアスカたちの強化が先でしょぉ」
「あ、神器か」
「そうだよぉ」
バルディアはアルの言葉に頷くと、俺たちに手招きをした。
「そうですね。では、こちらへ」
「え? 何も試験とかなくて貰えるのですか?」
ミコトがタダで神器を授けて貰える事に驚いた。俺もそうだ。これまでは何かしらの試練をクリアして貰っていたし、そもそも神器なのだ。その辺の棒をあげるのとは訳が違う。
「あぁ。貴方達は他の女神や魔王の神器は腕試しをされたのですね?」
「「はい」」
「私は試練を与えたりしません。サキにも召喚して早々に神器を渡しています」
「うん。そうだね」
サキも頷く。二人が、いや、授ける本人が言っているのだから本当なのだろうが、信じられない。
「でも、望んだ者に授けていたら神器で溢れてしまうんじゃないですか?」
「成程。そこを気にしていたのですね。それには心配に及びません。私の神器は、本人が扱う力が無ければ具現化しませんから」
「それはどういう事ですか?」
「私の神器は持ち主を選びます。ですので、神器を扱うのに相応しくない者には何も起こらず霧散してしまいます」
それは、俺たちも例外では無いということなのだろう。尤も、他の神器を手に入れている時点で十分力を持っているという判断みたいだ。
「つまり、他の女神様たちはその力があるかを試練という形で確認しているけど、バルディア様は直接神器を象る為の力を与えて、受け取る資格があるかを試しているということですか?」
「はい。理解が早くて助かります。では、手を」
バルディアに言われて、俺とミコトは、バルディアの下へ近付き、両手を差し出す。
バルディアが俺たちの手に自分の手を重ねる。銀色に輝く光が俺たちの手を包み込む。温かい光だ。
「さぁ、目を閉じて」
俺とミコトは言われた通り目を閉じる。暫く閉じたままでいると、温かかった光の感触から、何かが手の上に在るのを感じた。
「良いですよ。目を開けて下さい」
目を開けると、俺の手には赤い手甲があった。
「これが新しい神器。丁度良かった。ハイオーガとの戦いで腕の防具が無かったから」
早速装備してみると、手甲が伸び肘まで覆う。それはまるで燃え上がる炎のように見える。
「覇者の手甲か。本当、貰った神器はどれもこれも名前が凄いな。性能もだけど。ミコトは?」
俺はミコトが何を貰ったのか気になり尋ねた。
「私はこれ」
そう言って見せてくれたのは、ホーリーロッドだった。
「それは、ホーリーロッドだよね?」
「うん。新しい形状が増えたの」
「へぇ。どんな?」
「これだよ」
そう言ってミコトは新しく手に入れた武器に変化させる。持ち手が伸び、ロッドの先端の形状も変化し、一本の棍となった。
「棍?」
「ううん。槍かな」
ミコトが魔力をとおすと先端に青白い光で出来た槍の先端が現れた。
「ホーリーランス。戦乙女の時の武器みたい」
「成程。それなら確かに戦えるね」
これでミコトは、近、遠距離の攻撃役、回復役とオールラウンダーになった。
「凄い。ミコトの武器って変化するんだね」
サキがミコトのホーリーロッドを見て驚いている。
「うん。でも、武器の変化という意味だと私よりもっと凄い人もいるよ」
「そうなんだ」
「今度会うこともあるだろうから、その時紹介するよ」
俺はサキにノゾムの事を今度紹介する約束をすると、バルディアが俺たちの会話を遮るように、話し始めた。
「それでは行きましょうか」
俺たちの表情に何処へと出ていたのだろう。バルディアは質問は不要と言わんばかりに手を前に突き出し、
「訓練用の空中庭園へ」
そう言うと、転移させられる感覚に襲われるのだった。




