トレントとの戦い
トレントに打撃は通用していない。燃やすわけにもいかないとなると、やっぱり<烈波>しかないか。トレントの数は全部で十体。OPとMPは保つだろうか?
唯一の救いは、こいつらは移動出来ないようだから、何回かに分けて、倒していくという手も使えそうだ。
俺が考え事をしていると、トレントがアペルの実を飛ばして来た。
「当たらないさ」
俺は飛んで来たアペルの実を避け、トレントの方へと向かおうとすると、後ろで爆発音が聞こえた。
「あっ! そうだった。こいつの実、爆発するんだった」
後ろを見ると、運良くアペルの樹には当たっておらず、地面が爆発の影響で抉れているだけだった。
果樹園の被害を考慮するとあの果実攻撃は、全て空中で爆発させた方が良さそうだが、そんな余裕は無い。
「被害無しで倒そうって考えが、甘いだけかな」
ハイオーガキングや他の二つ名持ちモンスター等の強敵を倒して来た事で、無意識に自惚れていたのかもしれない。
よくよく考えれば、あの異常なAPとHP、MP、OPが高いだけで、他のステータスは大した数値じゃない。自信を持つ事は良いが、過剰はいけない。
「被害を無くすなんてのは、無理だ。俺に出来る最小限の範囲に収めるように速攻で倒す」
幸いにも瘴気の影響は無いから<フラッシュムーブ>は使える。先ずは<烈波>を一発当てる。
「行くぞ!」
<フラッシュムーブ>でトレントの背後に一瞬で移動するとトレントの体に右手を添え、
「<烈波>!」
トレントの体内で爆発が起きるが、やはり一撃では倒せなかったらしい。
トレントは、俺に向けて枝を鞭のようにしならせながら、振るって来た。
「ちっ。見た目通りタフだなっ!」
無数の枝を全て躱すのは難しそうなので、近くのアペルの樹に<フラッシュムーブ>を使って移動する。
すると、俺の姿を見失ったのか、トレントは全方位に爆弾の実をばら撒き始めた。
「おいおい、そんな事をしたらこの辺一帯が火の海になるぞ? 見た目と違って炎に強いのか?」
<練気>でOPを回復し、すぐに<フラッシュムーブ>でトレントの前に移動すると、<烈波>を放つ。
トレントの体内で爆発が起き、今度はトレントも光の粒子となって消えた。そして、予想通り、トレントの放っていた爆弾の実も光の粒子となって消えて、辺り一面が火事にならずに済んだ。
「一か八かの賭けだったけど、消えて良かった」
もし、一帯が火事になっていたら、俺も流石に無事ではいられなかっただろう。でも、それは、トレントにとっても同じはずだったと思うが。
とにかく、一体目を何とか倒した。<烈波>二発分で倒せるのなら、動けないトレントの下へと向う前に、<連環>で二発分の用意をしておき、出会ったと同時に<フラッシュムーブ>で近付き、一撃で倒す。これですぐに終わる。
魔力回復薬を飲み、<練気>でOPを回復させ、再び魔力回復薬を飲む。
「<連環>」
OPとMPを融合し、<烈波>二発分の準備を終わらせ、<探知>で居場所を再確認。
「良し。やっぱり移動せず同じ所に居るな」
トレントは現れた場所から移動出来ないみたいだ。この果樹園全体に広がるように現れているから、移動が大変だけど、仕方がない。次の個体の下へと駆け出す。
それにしても、移動出来ないのならどうやって現れたのだろうか?
邪神の影響を受けて召喚されたのなら、光の粒子にならないはずだ。さっき倒したのは、光の粒子となって消えたという事は、邪神の影響は少ないモンスターだということ。
そもそもこのグレイステラにはモンスターが居ないはすが、現れたという事自体がおかしい。
「ああ、考えている場合じゃないか」
考え事をしながら走っていたら、もう次の個体の居る場所へと辿り着いた。すぐに<フラッシュムーブ>で移動、<烈波>の連携。トレントは俺に気付くことも無く、光の粒子となった。
「あと八体」
魔力回復薬、<練気>、魔力回復薬、<連環>、移動、<フラッシュムーブ>、<烈波>。
これを五回。簡単にトレントを倒し続け、残り三体という所で異変が起きた。
八体目の下に辿り着いた時、<フラッシュムーブ>が使えなくなった。
「あれ? <フラッシュムーブ>が発動しない?」
ここまでが上手く行き過ぎていただけか。
遠くからバキバキと音が聞こえる。その音が、こっちに近づいて来ている。
どう考えても、この音。トレントが動いている音だよな。移動出来るのか?
そして、突然<フラッシュムーブ>が使えなくなったのもトレントの仕業だろう。
「今までが簡単過ぎただけなんだろうな」
一瞬で移動出来ないのなら走って近付くだけだ。音を立てながらこっちに来るトレントが合流する前にこいつを片付ける。
トレントに向かって走り出すと、向こうも俺に気付いたのか枝が揺れる。そして、無数の枝が俺の方へと伸びて来た。
俺を串刺しにしようと伸びてくる枝を躱しながら、近付いていくと、嫌な気配を感じ、その場から大きく右に飛んだ。その直後。
ドォオオン!
大きな音を立てて、空からトレントが降ってきた。更に、音を立てながら移動してきていたトレントもその背後から出て来た。それは、他の個体に比べて小ぶりだ。背丈は俺の倍くらい。
「残りの三体が勢揃いしたか」
三体がそれぞれ違った攻撃をしてくる。さっきまで戦っていたトレントは今まで同様に枝を伸ばして串刺しにしようと、空から降ってきたトレントは、爆弾の実をガトリングのように連射。小さいトレントは、葉っぱを飛ばして来る。その葉っぱが別のトレントの枝に当たるとあっさり切り落とした。
「こいつら、仲間を傷つけるのを気にしてないのか?」
だったら、遠慮なく利用させてもらう。枝を伸ばしてくるトレントの方へと走り、爆弾の実、葉っぱの射線上になるように回り込む。
「何だよ。本体には当てないって」
トレントが射線上に入ると同時に爆弾の実、葉っぱ共々射出を止めた。枝程度なら気にはしないが、本体は流石に巻き込まないという事か。
「でも、隙は出来た」
爆弾の実を撃っていたトレントの背後に<フラッシュムーブ>で移動し、<烈波>を放つ。トレントが光の粒子となって消える。
これで残り二体。だけど、この二体は、俺に魔力回復薬を飲ませる隙を与えてくれない。枝での攻撃と葉っぱ。これを避けるので精一杯だ。
「くっ。取り敢えず、あの葉っぱをどうにかするか」
攻撃を躱しながら、二体の間に位置するように移動する。間に入った事で小柄なトレントは葉っぱを飛ばすのを止めた。代わりに、もう一体同様、枝を伸ばして突いて来る。
「いや、流石にこの量は躱しきれないって」
タイガーフィストをクローバージョンに切り替え、当たりそうな枝は爪で弾く。
魔力回復薬を飲む暇は無い。<癒しの光>で少しずつ回復させてはいるが、全快までは時間が掛かる。どうしよう?




