ハイオーガキング討伐
キングの纏っている瘴気の鎧。あれを無くさなければキングを倒す事は出来ない。
そして、その鎧を破壊するのに<烈波>が有効である事も分かった。最初は、鎧を無視して直接ダメージを与えられないかと思ったけど、あの鎧、どうやら<烈波>の衝撃波を鎧全体に拡散させて、本体には届かないようにしているようだ。
だから、威力を落とせば、鎧を爆散させる事は出来ないし、威力を上げても、爆散するエリアが拡がるだけで、本体には傷一つ付かない。そして、爆散しても、直ぐに鎧は修復される。
「お前は危険だ。何か嫌な感じがする。そして、あっちの女を先に殺したほうが俺に有利になるようだ」
キングはミコトの方に体を向ける。瘴気で作った武器を浄化されるため、ミコトが邪魔なのだろう。だけど、ミコトを攻撃する隙を俺が与えるわけが無い。
「お前の相手は俺だよ。他所見をしている暇は無いぞ」
キングとの距離を詰めると、掌底を突き出す。
「簡単に触らせるか! 邪魔だ!」
キングは瘴気で短剣を作り俺の腕を斬り落とそうと狙ってくる。直ぐに突き出した手を引き戻し、反対の手でその短剣の持ち手を殴り弾く。
「おのれ!」
「これでどうだ! <烈波>」
再び掌底を突き出すと、キングの鳩尾に当てる。
「良し。ミコト、回復だ!」
「無駄だ。俺の鎧を一時的に剥いでも直ぐに戻るぞ」
そんな事は言われなくても分かっている。ミコトも俺の合図で直ぐに瘴気にやられた右手を癒やしてくれた。
そして、六秒後、瘴気の鎧が爆散する。
「ここだ! <瞬迅>、<烈波>」
威力を調整し、俺の掌底がキングの腹に当たる程度に抑え、且つ、鎧が復元する前にキングの腹に掌底を届かせる為に、<瞬迅>で超高速突きを放つ。
「何……」
俺の掌底が鳩尾に入り、動きが一瞬固まった所にすかさず<烈波>を放つ連続技。初めて試したが、上手く連携出来た。直ぐにキングから距離を取る。
距離を取ると直ぐに瘴気の雷を降らし反撃に出るキングだったが、<烈波>の衝撃波が爆発すると、地面に膝を突く。
「ぐぅ……。この俺に膝を突かせるとは」
「一発じゃ倒せないか。やっぱり」
直ぐに<練気>を使い魔力回復薬を飲もうとした所で、キングが放った<イビルファイア>で回復薬を燃やされてしまった。
「王であるこの俺をここまで追い詰める。やはり、お前は危険だ。ここで必ず殺す」
「俺は殺られないし、お前を倒す」
キングは、纏っていた瘴気の鎧を解くと、全ての瘴気を右手に集めた。
「消し炭にしてくれる」
「防御を解いた時点でお前の負けだよ」
キングは俺の言葉に聞く耳を持たないようで、俺に右手の掌を向けた。次の瞬間、無数の触手が俺に向かって伸びてくる。
触手でどう消し炭にするつもりなのか? 伸びて来た触手を躱す。触手が地面に突き刺さると、刺さった場所から黒い炎が噴き出した。
「おいおい。嘘だろ」
一本でも触手が触れればキングの言う通り消し炭となってしまうぞ。
「<ピュリファイ>」
ミコトが触手を浄化しようとしたが、瘴気が濃すぎるのか、全く浄化されない。
「そ、そんな。浄化出来ないの?」
「無駄だ。この瘴気の触手を浄化など出来るものか」
「それなら、これはどう? <アブソリュートゼロ>!」
キングの目の前にサキのチャクラムが現れ、輪の中から吹雪が放出される。
「むっ。鬱陶しい! 虫ケラ共が!」
触手の何本かがミコトたちの方へと伸びていく。そのお陰で俺に向かって来る触手の量が減った。触手を躱しながら魔力回復薬を飲む。
「動きながら出来るか?」
次の一撃で決めるつもりで<連環>を使うつもりだが、触手を躱しながら使う必要がある。今までは動きを止めた状態で使っていたが、果たして出来るだろうか?
出来なくてもやるしかない。<連環>を使う。魔力が闘気に連結されていくのが分かる。だけど、
「くそっ。やっぱり攻撃を躱しながらだと、集中出来ないから、時間が掛かる」
ミコトとサキも触手から逃げるので精一杯みたいで、援護は受けられそうにない。
「痛っ」
スキルの使用、思考をしながらの回避で注意が散漫になっていたようだ。触手が右足に掠ってしまった。唯一の救いは、掠った程度だったからか、黒い炎は熾らなかった。
それでも瘴気で腐食した右足の痛みで動きが鈍る。しかも、集中が乱れて<連環>の効率が落ちたのが分かった。
「こんな痛みっ」
痛みを堪え、未だ勢いが衰えない触手を躱しながら、漸く<連環>が完了した。
「後は、あいつの所まで何とか近付かないと」
二人共キングの攻撃をギリギリで凌いでいる。援護は無理そうだ。自分で何とかしないと。
こんな時こそ<フラッシュムーブ>が使えたらどんなに楽だろうか。
「あぁ。もう、鬱陶しい!」
「さぁ! そろそろ終わりにするぞ」
キングが触手を伸ばすのを止めた。何か大技を使うつもりか。こちらとしても、邪魔な触手が止まって近付くチャンスだ。
キングは右手を腰元へと置き、まるで居合い抜きをするかのように構えると、
「死ね!」
掛け声と共に右手を横薙ぎに振るう。その手の先には巨大な瘴気の剣があった。長さは二十メートルはある。受ければ上半身と下半身が分かれる事になるだろう。しかも、あの長さだ。ミコトとサキにも届く。唯一の救いは、振るう速度はそこまで速くない。
「二人に届く前にお前を倒せば良いだけだろ!」
瘴気の剣を飛び越え、着地と同時にキングへと突進する。
「躱すか! だが、甘い!」
キングは、右手を返し再び俺を狙って来る。
「燕返しかよ! まだ距離がある。くそっ。一か八か! <フラッシュムーブ>」
一か八かだったが、今まで瘴気が邪魔で使えなかった<フラッシュムーブ>が発動した。
「何っ!」
「瘴気を全て攻撃に使ってくれたからか。失敗だったな! これで終わりだっ! <烈波>ぁ!」
瘴気の鎧を慌てて着用しようと試みたキングだったが、俺の掌底の方が先に当たる。オレンジの光がキングの体へと入っていく。
瘴気の鎧が俺の右手を覆うように出来上がり、右手が瘴気によって腐食してしまった。
「ぐぅっ!」
痛みで直ぐに手を引き戻したが、皮膚が爛れている。
「何だ? 今のがお前の全力だったのか? 大した事はな……」
キングが全て話し終わる前に爆発が起こる。
「大した事無いと言いたかったみたいだけど、残念だったな。俺の勝ちだ」
キングが地面に倒れ伏し、動かなくなった。キングの体を覆っていた瘴気は消える事は無かったが、キングの体から離れて拡がっていく。
「<ピュリファイ>」
ミコトの<ピュリファイ>で瘴気が浄化される。キングの体から新しい瘴気が湧き出る事もない。
「倒したかな?」
キングを<鑑定>してみたら、やはりもう死んでいた。体が消えない所を見ると、邪神の影響を受けていたのだろう。
「アスカ、大丈夫? 直ぐに回復するね」
ミコトは、俺の右手を見て<ハイヒール>を掛けてくれた。
「凄いね。アスカ、ありがとう。僕一人じゃこうはいかなかったと思うよ」
「そうかな? なにはともあれ、倒せて良かった。これで、この洞窟の瘴気も大丈夫かな?」
「そうだね。後は残った瘴気をどうするかだけど」
サキは、俺の右手を治療しているミコトを見つめると、それに気付いたミコトがサキに微笑みかける。
「そうだね。全部の瘴気を浄化するのは難しいけど、ここから出口に向かう間は、浄化していくよ」
「ミコト、ありがとう!」
サキはミコトの両手を掴み、ブンブン上下に振って喜んだ。




