怒るキング
王冠を冠ったハイオーガがミコトの浄化したばかりの瘴気を復活させていた。
「あれが、瘴気を発生させるから、浄化出来ないんだね」
「サキ、あのハイオーガから倒した方が良いんじゃないかな?」
ミコトとサキが話しているのを聞いて、俺は二人に叫んだ。
「二人共、あれは後回しだ! 他のハイオーガたちを片付けないとやられる可能性が高い!」
王冠を冠っているから、キングとでも呼ぼう。恐らく、あれの強さは他のハイオーガと比じゃない。あれを相手にしている間、他のハイオーガたちが黙っているはずは無い。ソーサラーが、障壁で攻撃出来ないのなら、先に普通のハイオーガを倒すべきだ。
「サキ、こいつからやるぞ!」
一番近いハイオーガに向かって駆け出す。サキは、それを見てチャクラムを俺が狙ったハイオーガに向けて飛ばした。
「雑魚から片付けるのは確かにセオリーだね! <インフェルノ>」
チャクラムから業火がハイオーガに向かって放たれ、体が燃え上がる。
「一体目ぇ!」
すぐに<風爪>で止めを刺し、次のハイオーガを探す。すると、さっきまでこっちに向かって走ってきていたハイオーガたちが立ち止まっていた。
「今ので警戒度が上がったのか」
次を狙うのが大変になったが、逆に一斉に突っ込まれなくなった事がこちらとしては助かる。
すると、ソーサラー二体がサキに向けて<イビルファイア>を放った。止めを刺した俺よりもサキの方を優先に倒した方が良いと判断したのだろう。それに合わせてキングも立ち止まっているハイオーガたちに命令を出す。
「何を呆けている! 半分はあの小娘に向え! 残りはそっちの小娘だ!」
キングがソーサラーが使用して薄くなった瘴気を濃くしていく。すると、服装の違うハイオーガが杖らしきものを上に掲げて、濃くなった瘴気を集め出した。
俺とサキに向かって四体ずつ走ってくるハイオーガたちが、腰の後ろから武器を取り出した。今までのハイオーガの持っていた棒ではなく、いずれも剣だ。あの怪力で斬られたら、あっさり体が真っ二つにされてしまう。
「あの二体が気になるけど、こいつらをどうにかしないと、それどころじゃないか」
サキの援護に回りたい所だが、自分に向かってくるハイオーガを先に倒す必要がある。サキの援護無しにどこまでやれるだろうか? いや、やれるかじゃない。やらないと、殺されてしまう。
正直、こいつら相手にするより、サウザート兵百人を相手する方が楽だった。とはいえ、文句なんて言ってる場合じゃない。
「目の前の四体を先ずはどうにかしないとな」
サキはこの間二体を相手に立ち回れていたのを考慮して、俺は自分に向かってくる四体に集中だ。
牽制に拳に纏っていた<風爪>を先頭を走って来ているハイオーガに向けて撃ち放った。風の爪はハイオーガへと真っ直ぐ進んで、直撃すると霧散し、無傷のままこちらへと向かって来る。
「まさか<イビルバリア>なのか!?」
一般のハイオーガは<イビルバリア>を展開することは出来なかった。だが、もうすぐ目の前までやって来るハイオーガはそれを展開している。
一瞬、動揺したが、瘴気を浄化すれば攻撃は通る。俺はすぐに落ち着きを取り戻し、ミコトに浄化を頼んだ。その時、既にサキも同じく攻撃を防がれていたのだろう。俺の依頼を聞いて、サキもミコトに浄化を頼んでいた。
俺は近付いて来るハイオーガの先頭に向かって駆け出し、ミコトの浄化と同時に、ハイオーガの顎を下から叩き上げる。
ハイオーガは、障壁に護られている思っていたのか、防御すらせず、俺を斬りつけようと剣を振りかぶっていたため、拳は顎に直撃した。脳を揺さぶられたハイオーガは、気を失い倒れた。
「チャンスだ!」
追撃をしようと<風爪>を纏い、頭に拳を打ち下ろそうとしたが、後続のハイオーガたちに邪魔をされてしまう。
「くそっ。やっぱり一体ずつ戦わないと辛いな」
気絶中のハイオーガを倒せず後ろに飛んで、一旦距離を取っていると、キングが浄化された瘴気を再び戻す。瘴気が濃くなってくると、あの二体が再び杖を掲げた。そして、一体は手を前へ出すと、気絶しているハイオーガに<ヒール>を掛けた。
「<ヒール>だと! あの二体はプリーストか!」
一撃で倒すのは困難だ。それをダメージを与える度に回復されていたら長期戦になって、補給も出来ないこっちが不利になる。あの二体のプリーストを倒すのが先決だ。
四体のハイオーガを放って、プリースト二体の方に駆け出すと、四体のハイオーガたちは俺の後を追い掛けてきた。それだけじゃないソーサラー二体も俺を狙って<イビルファイア>を撃ってきた。プリースト二体が倒されるのは余程嫌らしい。
サキの方へと向かっていた四体もこっちに向かい始めた。これはこれで全ての敵が俺を狙ってくれると、ミコトやサキが動きやすくなる。
<イビルファイア>の射線上にハイオーガを誘導し、飛んできた黒い炎を横に飛び退き避ければ、後ろのハイオーガに命中した。プリーストが<イビルバリア>を付与していたのだろう。やはり無傷で追い掛けてくる。
「流石にこの数を相手に、プリーストの所までは辿り着けないかな」
次々と襲ってくるハイオーガの攻撃をギリギリで凌ぐ。少しでも気を抜けば斬られ、黒い炎に燃やされてしまうだろう。
何分避け続けただろうか? そろそろ避け続けるのは限界だと思っていた時、ミコトが<ピュリファイ>を使って瘴気を浄化した。その瞬間、
「ギャアアア」
悲鳴が聞こえ、ハイオーガたちも含めて悲鳴のした方を向くと、プリースト二体の首をチャクラムが刎ね飛ばした所だった。
サキの方を見ると、してやったりと満面の笑みを浮かべた男の姿をしたサキが立っていた。
「サキ、やったな!」
「ちょっと待ってね。残り時間短いし、すぐにソーサラーも倒して、手伝うから!」
サキは、プリーストを倒して、手元に戻って来たチャクラムを手にソーサラーに向かって駆け出す。
「<ハイロールエッジ>!」
サキの手元でチャクラムが高速回転を始める。サキがチャクラムをソーサラーに突き出すと、障壁に防がれ、ソーサラーとチャクラムの間に火花が散っていた。
「<ピュリファイ>」
ミコトが援護で浄化を掛けると障壁が弱体化され、ソーサラーの体を真っ二つに斬り裂いた。
「あと一体!」
だが、残り一体のソーサラーを攻撃する前にサキの体が女に戻る。
「あ、時間切れだ」
チャクラムの回転も止まり、サキは慌ててミコトの居る所まで後退した。でも、これで残りはハイオーガ八体、ソーサラー一体、キング一体だ。キングは、プリーストとソーサラーをやられて怒りに震えていた。




