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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第五章 豊穣と異変

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戦闘開始

 洞窟の奥に広がる巨大な空間。そこは、ハイオーガの集落なのだろう。瘴気は一層濃く、人が入るのはかなり厳しい環境だ。あそこで戦闘となると、人にとってはかなり不利な状況になるだろう。


 更には、ハイオーガの数も苦労したばかりの五体の倍以上。


「これは、流石に僕一人じゃむりだったなぁ」

「バルディア様は、サキが無理な依頼はしないんじゃなかったのか?」

「今まではそうだったんだけどなぁ。今回は想定外だったのか、それとも……」


 サキは俺たちの顔を見て、首を横に振りながら続けた。


「君達と会うのを予見してたとか? いや、流石にそれは無いかな?」


 サキは、バルディアが俺たちがここに来るのを予見した可能性を考えて、そこまでは無いと否定したようだが、いや、その可能性はあるのかもしれない。


 それは今はどっちでも良いことか。今は、この状況をどうやって打破するかだ。ミコトも同じことを考えていたのか、俺に尋ねてきた。


「アスカ、どうする? 一応、私の<ホーリーフレア>は使えるけど」

「いや、それは無しだな」

「何か方法があるの?」

「私の魔術に<ホーリーフレア>って、広域高火力の切り札があるの」

「そんなのがあるなら、お願い。やってくれないかな?」

「駄目だ。<ホーリーフレア>はここでは無しだ」

「「どうして?」」

「いや、二人揃って言われても。サキは、<ホーリーフレア>がどのくらいの規模か分からないから、仕方が無いとしても、ミコトは、分かるだろう? こんな所で<ホーリーフレア>を使ってみろ」


 俺の言いたい事が分からないのか、二人は首を捻っている。


「ここが崩落するかもしれないだろ?」

「あ、そうか。生き埋めになったら大変だね」

「そんなに凄い魔術なんだ。僕の魔導にもそういうのがあると良いんだけどな」

「でも、そうすると、どうする?」


 そう。結局振り出しに戻ってしまう。あの数相手に三人ではまず間違いなくやられる。何か良い策は無いかと思案していると、一体のハイオーガが俺たちの方へ歩き始めた。


「あのハイオーガ、こっちに歩いてくるよ」


 サキも気付いたようで、小さな声で話しかけてくる。


「静かに。まだ俺たちに気付いたとは言い切れない。通路がこっちにしかないからな」


 寧ろこのままこっちに来てくれて、一体だけでも先に倒す事が出来れば少しは楽になる。


「取り敢えず、静かに戻ろう」

「「うん」」


 来た道を戻り、通路の陰で身を潜め、様子を伺う。ハイオーガはこっちに来ているのか分からなかった。瘴気が濃くて、気配を感じにくい。


 五分経っても姿を現さないハイオーガの様子を見ようと陰から顔を出した時、ハイオーガが目の前に現れ、目と目が合った。


「あっ!」

「ダレダッ! シンニュウシャカ!」


 ハイオーガが仲間たちに報せるように大声を上げた。間違いなくあそこから仲間が駆けつけてくるだろう。


「くそっ。見付かったなら、仲間が来る前にお前を倒す」

「<インフェルノ>」


 サキが先制攻撃をすると、チャクラムから放たれた業火はハイオーガを燃やした。


「グォオオオ」

「やるな、サキ。止めだ!」


 燃えるハイオーガの首を<風爪>で刎ねると光の粒子へと変える。


「意外とサキが後衛で援護してくれたら、楽に倒せたな」

「今のはアスカに気を取られていたから出来たんだよ。混戦の中になると難しいかもしれないけど、そうも言ってられないよね」

「そうだね。さっきのハイオーガが、私達のことを仲間に報せたみたいだし」


 ミコトの言葉に合わせるように俺は頷くと覚悟を決める。


「そうだな。こうなったら、腹を括って突っ込もう。ミコト。君は<ホーリーバリア>と<ピュリファイ>で、瘴気の浄化を頼む。サキは、一体ずつ魔導を使って攻撃してくれ。俺がそいつの止めを刺したら次を狙うんだ。ミコトは瘴気の浄化をしながら、他の敵を牽制して、集団で攻撃してこないようにサポートも頼む」

「分かった」

「了解!」

「よし、行くぞ!」


 俺の合図で一斉に駆け出し、ハイオーガたちの住処に向かう。


「しゃがめ!」


 俺の合図で二人も慌ててしゃがむと頭上を黒い炎弾が通り過ぎていった。


「<イビルファイア>か。ハイオーガソーサラーの攻撃が来たって事はやっぱりさっきの大声で気付かれているな」


 背後で轟音が響く。ハイオーガソーサラーは二体いた。第二射が来る事を予測しながら、再び駆け出した。


 少し進んだ所でやはり第二射が来た。弾速は以前に戦ったハイオーガソーサラーよりも速かったが、予測していた分、問題無く避ける事は出来た。当たればただでは済まないのは間違いないだろう。後ろで再び轟音が響く。


「ミコト、そろそろ準備は良いか?」


 後ろを走るミコトに声を掛け、ミコトの返事を聞く前に再び黒い炎弾がやって来る。それを避けて、ミコトは力を込めて叫ぶ。


「<ホーリーバリア>」


 広い空間に突入すると同時に空間全体を包むように障壁を展開する。ハイオーガたちは、何故身を守る障壁を空間全体に張るのかと疑問に思ったのか、侵入者が入ってきたのに、一瞬動きが止まった。


「くっ。瘴気が濃過ぎて気持ち悪い」

「直ぐに浄化するね。<ピュリファイ>!」

「僕はあれを!」


 ミコトが瘴気を浄化するのと同時に、サキがハイオーガソーサラーに向けてチャクラムを投げた。俺はそのチャクラムを追いかける。


「瘴気が濃過ぎて、浄化しきれないの? なら、もう一度。<ピュリファイ>」


 濃過ぎる瘴気は、ミコトの<ピュリファイ>一度では浄化出来なかった。二度目の浄化でもまだ瘴気は残っている。


 その瘴気を使ってハイオーガソーサラー二体が同時に<イビルファイア>を放つ。瘴気が多少薄くなった分、威力、速度が落ちているのが目に見えて分かる。だが、それでもまだ俺たちを瀕死に追い込む程の威力を持つ。油断は出来ない。


「<サンダーボルト>」


 サキがハイオーガソーサラーに雷撃を放つが、瘴気の障壁、<イビルバリア>がそれを完全に防ぐ。


「駄目だ。瘴気がまだ濃い。ダメージがないぞ。ミコト、頼む」


 ミコトが三度、<ピュリファイ>で瘴気を浄化するが、やはり完全には浄化出来なかった。その原因が、声を上げる。


「無駄だ。人間。この俺がいる限り、この瘴気は消えぬ。ここにやって来たのが、お前達の間違いであったと後悔しながら死ぬが良い」


 王冠を冠ったハイオーガが俺たちの前に立ち塞がるのだった。

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