ハイオーガとの激闘
ハイオーガが振り降ろす瘴気を纏った棒を眺めていることしか出来ず、死を覚悟した時だった。
「させない! <ピュリファイ>、<クイックヒール>」
ミコトが棒にあった瘴気を浄化して、ハイオーガの攻撃は空振りに終わる。そして、何とか動ける程度に回復した俺は転がり、ハイオーガと距離を取った。
「助かった。ありがとう。ミコト」
俺はミコトに礼を言うと、起き上がり、さっき俺を殴ったハイオーガに体を向ける。
「オマエ、ジャマシタナ!」
棒の瘴気を浄化されて、俺に攻撃出来なかったハイオーガがミコトに怒り、ミコトの方へと駆け出した。
「しまった。<気弾>!」
ミコトに向かって走るハイオーガの注意を俺に向け直す為に、<気弾>を飛ばす。見事にハイオーガの後頭部に直撃し、ハイオーガが前のめりになった。
これで、二対一にはなるが、またミコトに障壁を張り直して貰えば良いと考えていると、ミコトが前のめりになって、隙だらけのハイオーガの顔面をホーリーロッドで思い切り殴ったのだ。
「え! ミコト、そんな事したら、お前にヘイトが」
ミコトに気を取られていると、もう一体のハイオーガが俺に向けて棒を叩き付けて来た。俺は後ろに飛んでその攻撃を躱す。
「危ない。くそっ。こいつをどうにかしないとミコトを助けにいけない」
ミコトの方を横目で見ると、ハイオーガ相手にホーリーロッドを振り回して、肉弾戦をしている。どうやら戦乙女にジョブチェンジして、応戦しているようだ。
「さっさと片付けさせてもらうぞ」
俺は目の前のハイオーガに<風爪>を飛ばすと、ハイオーガは手にしていた棒でガードし、棒を切り刻む程度で終わってしまった。
次の行動に移ろうとした時、奥にいる障壁で防いでいたハイオーガの二体が、障壁を破り、俺の方へと向かって駆け出したのだ。
「不味い。三対一は流石に無理があるぞ」
目の前のハイオーガが殴りかかってきたので、カウンターに腕を切り落とそうとしたが、追い付いてきたハイオーガの攻撃で、邪魔をされる。
「くっ」
三体のハイオーガが連携して攻撃をしてくる為、反撃をする余裕が無い。スピードは単体であれば俺の方が速い。だから、攻撃は当たらないが、こっちも攻撃出来ない。このままだと完全に俺が不利だ。
ミコトも決定打にかけるため、苦戦している。一か八か反撃して、隙を作れるか?
素手で攻撃してきたハイオーガの腕を再び狙って攻撃しようとしたが、それが仇となった。次のハイオーガの攻撃を躱す余裕が無くなった。
「しまった!」
棒が目の前に迫ってきた時、俺とハイオーガの間に、突然二つのリングが現れた。
「何だ? これ?」
棒はリングを叩いて、俺には届かなかった。すると、通路の奥から声が届いた。
「女の子二人相手にハイオーガ四体なんて。僕が加勢するよ!」
女の子の声だ。何者か分からないけど、助太刀してくれるらしい。
「<インフェルノ>!」
女の子が叫ぶとリングの中から業火が噴き出し、二体のハイオーガを襲う。
「「ギャアアア」」
二体のハイオーガは、炎に包まれ、叫び声を上げるが、まだ倒せてはいないようだ。二体は奥の女の子の方へと駆け出していった。
「これで一対一だ。これなら、負けない!」
俺は両手に<風爪>を纏い、目の前のハイオーガに向かって駆け出した。瘴気が無ければ、<フラッシュムーブ>で一瞬で間合いを詰められるのに、使えないのは不便だ。不便だが、それならそれで、普通にヒットアンドアウェイで戦えば良い。
先ずはハイオーガの腕を裂くように拳を下から斜めにすくい上げるように振るう。ハイオーガも俺を殴ろうと拳を振り降ろす。
「グァアアア!」
ハイオーガの拳が俺に届く前に、風の爪が切り裂いた。痛みに怒り、ハイオーガは、もう片方の腕を横殴りに振るう。だが、俺は既にその場から離れていて、空を切るだけに終わった。
「お前らの攻撃は、一発でも受けたら動けなくなってしまうからな」
もう喰らわないぞ。空振り後、直ぐに距離を詰め、今度は足を狙って拳を振るう。ハイオーガは、足を切られまいと、一歩後ろに下がったが、俺は拳に纏った風の爪をそのまま飛ばし、ハイオーガの左足に命中したが、切り落とすまでには至らなかった。
「ガァアアア!」
再び、ハイオーガが吠え、突進してきた。だが、左足の傷で踏ん張りが効かないようで、勢いがない。
突進してくるハイオーガの横を抜け、背後に回り込んだ俺は、飛び上がって首を直接狙う。ハイオーガが振り向いた時には、俺の攻撃が届き頭と体が離れる形で、光の粒子と化した。
「良し。ミコト、今行く」
ミコトの方を見てみれば、まだ何とか戦っていたが、ローブのあちこちが破れている。少しずつ被弾しているのだろう。早く助けに入らないと手遅れになってしまうかもしれない。
俺は、ハイオーガに向けて<気弾>を放ち、駆け出す。<風爪>だと見えないせいで、避けられた時に、ミコトが気付かず当たってしまうかもしれないからだ。
<気弾>に気付いたハイオーガが飛び退いた。そして、<気弾>に気付いたミコトも頭を下げて避けると、その隙をついてハイオーガが一気にミコトとの距離を詰めて、ミコトの顔目掛けて棒で殴る。ミコトは、何とかホーリーロッドで棒を受け止めたが、渾身の一撃は、ミコトをそのまま吹き飛ばした。
追撃しようと前へ出たハイオーガが足を止める。俺がミコトとハイオーガの間に入ったからだ。
「間に合った。ミコト、回復して休んでいてくれ。こいつは俺が倒す」
ミコトは小さく頷くと、自身に<ヒール>を掛け始めた。大丈夫そうだ。
さて、こいつはまだ武器を持っている。まずはあれをどうにかしないと。
そんな事を考えていると、ハイオーガが棒に瘴気を纏わせ始めた。さっき俺を攻撃した時よりも長さが長い。ショートソード位の長さが、今では長槍位の長さはある。
ハイオーガはその棒を突き出し、俺に向かって突進してきた。そして、腕を突き出せば、棒が届く距離まで近付くと、
「フン!」
気合いと共に鋭い突きを繰り出す。俺は、それを体を半身ずらし、やり過ごし拳に纏わせた<紅蓮>で、ハイオーガの手元を狙う。炎がハイオーガに迫ると、さっと手を引っ込め、炎から逃げるが、俺の狙いは棒だ。炎は狙い通りに棒を燃やし、纏っていた瘴気も霧散する。
「オノレ。オマエハゼッタイにコロス」
ハイオーガは、そう言うと瘴気を腕に纏わせ構えを取った。




