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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第五章 豊穣と異変

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ポーラの帰還

 戦っていたハイオーガの頭が突然弾けて、光の粒子となり、俺は訳が分からなかった。


「何で頭が吹っ飛んだ? 何が起きた?」


 周りにはモンスターの気配は無い。ミコトたちが何かをしたわけでもない。


 つまり、気配と姿を消したまま攻撃が出来るモンスターか、気配も姿も感知出来ない程の長距離攻撃をしてきたかどちらかということだ。


「瘴気といい、プリメラが言っていた通り、とんでもない場所だな。ここは」


 一方、ミコトはポーラの精神体に自身が精神体である事を悟らせようと説得をしていた。


「ポーラ、あなたは精神体なの。肉体は、まだプリメラ様の所にあるのよ。このまま精神と肉体が分かれたままだとあなたの命が危ないの。お願い。自分の事を精神体だと認識して」

「あ、あぁ。頭が、割れるように痛い。ミコト、あなたが何を言っているのか、分からない」

「ポーラお願い。あなたは、今、本当は気が付き始めているでしょ。でも、それを認めたくない。自分は本物だって。でも、それは違う。あなたは本物よ。でも、それは半分だけ。精神体だから、本来の力を出せないし、神器も持っていない。私達は、本当に元気になったあなたと旅がしたい。だから、認めて」

「私は、私は精神体なの? うぅ。頭が」


 ポーラの体が透け始めた。自分が精神体である事を認識し始めたからだろう。


「ポーラ、お願い」

「私は、私は」


 ポーラが両手を床につき四つん這いの状態になる。


「私はあなた達と、一緒に……」

「ポーラ……」

「元に戻ったら、一緒に旅をしましょう」

「え、ポーラ?」

「ふふ。やっぱり、私は、何かおかしいと思ってはいたの。それは、精神体だからなのね。肉体を持っていないから」

「ポーラ」

「絶対に、あなた達に追い付くから」

「うん。待っているね」


 ポーラの体が輝いたかと思うと消えてしまった。


「良かった。そうだ。アスカは?」


 ミコトが外の様子を伺おうとした所に、俺は丁度戻って来た。


「あ、アスカ。ポーラ、無事に肉体に戻ったよ。そっちは?」

「ポーラの事は良かった。だけど、こっちはまずいな」


 俺はまずハイオーガにやられた腕を見せる。


「ミコト、悪いけど回復を頼む」

「両腕の骨が折れてるじゃない! 直ぐに治すね。<ハイヒール>」


 ミコトの<ハイヒール>で痛みが引いていく。軽戦士の小手はもう使い物にはならない。今思えば、ポーラに買ってもらってからずっと使っていたんだな。この小手は。


「ありがとう。もう大丈夫だよ。それより、この奥に何か居る。気配も姿も見えないけど、さっき戦っていたハイオーガの頭をそいつに吹き飛ばされた」


 あのハイオーガの頭を一撃で吹き飛ばす程の威力だ。俺たちが受けても同じ結果になるだろう。


「それじゃあ先に進むのは危険じゃない?」

「ああ。それで一旦こっちに戻って来たんだ」


 だけどハイオーガの頭を吹き飛ばした攻撃は、あれから来ない。もしかして、人だったとか? ハイオーガに襲われている俺を見て、頭を狙った?


 いや、それは無いな。この瘴気のせいで遠くはよく見えない。視認出来る距離ならきっと攻撃に気付けただろう。


 それに人による攻撃で俺を助けたものだったなら、その攻撃をした者は、自分が助けた者の様子を見にこっちに来ても良い筈だ。それとも、人助けをしたと知られたくない人物で、そのまま奥へと進んだのか?


 考えれば考えるだけ分からなくなる。ここはもう最悪のケース、ヒデオ並の長距離攻撃の出来る強力なモンスターが奥にいると想定して進むしかない。


「ミコト、この奥に何が居るのか分からない。いつでも<ホーリーバリア>を使える準備だけはしていてくれ」

「分かった。警戒しながら慎重に行くのね」


 ミコトの言葉に俺は首を横に振る。


「え?」


 ミコトは、俺の反応に驚きどういう事と首を傾げた。


「いや、慎重にゆっくり進んでたら、確実に狙い撃ちされて殺られる。ここは一気に走り抜ける。丁度良かったよ。ポーラも居たらこれは出来なかった」


 俺はそう言うと、ミコトの体を足下からヒョイと持ち上げる。


「え? アスカ、何!?」


 お姫様抱っこされたことに動揺したのか、今から始める事に対する不安なのか分からないが、ミコトが異様なまでに動揺していたが、そんな事は気にしない。


「勿論、一気に駆け抜けるんだよ」

「え?」


 俺はミコトをお姫様抱っこしたまま走り出す。ミコトがジョブを戦乙女に変えれば、素の俺と同じ位にはなる。だが、<アクセルブースト>を使える俺の方が、圧倒的に速い。


 元の世界であれば、こんな風に女の子を抱えたまま全力で走るなんて無理な話だ。


 それが、この世界ならステータスがそこそこあれば、可能になる。流石に一人抱えて走るので精一杯だから、今はミコトと二人だけ。それならば可能。


 という事で、今、それを実践している。今の所、モンスターは居ないが、いつ現れるか分からないから、警戒は怠らない。


 走り出してから十分程経過した。かなりの距離を走ったにも関わらず、未だにモンスターに遭遇しないというのは、何故だろう。あのハイオーガを攻撃したのは、知らない冒険者だったのだろうか?


「ね、ねぇ。アスカ、そろそろ降ろしてくれないかな?」

「まだ駄目だ。止まった瞬間に攻撃されるという事もあるんだ。あの攻撃をしたであろう人なりモンスターなりに遭遇するまではこのまま行くよ」


 俺が止まらないと分かるとミコトは、恥ずかしそうに顔は下を向いたままじっとしていた。


 お姫様抱っこが恥ずかしいのか……。ミコトが恥ずかしがっていると、こっちまで恥ずかしくなってきた。


 それでも、これが最善の策のはず。恥ずかしいのは我慢だ。


 それから五分、大分奥まで進んだ。瘴気も一段と濃くなってきた。


 ここまではただ真っ直ぐの道だった。多少の下り傾斜はあったが、これなら、長距離攻撃も可能だっただろう。この濃い瘴気がなければの話だ。


「やっぱり、この瘴気の中ハイオーガの頭を一撃で破壊するなんて、人間技じゃ無いな」


 人の可能性を捨てた、その時、殺気を感じた。それもかなり強烈な殺気だ。


「ミコト!」

「うん! <ホーリーバリア>!」


 ミコトが<ホーリーバリア>を張った瞬間、轟音とともに障壁に罅が入った。


「一撃で罅が!?」

「ちっ。やっぱりモンスターだったか」


 それにしても、殺気を感じてから攻撃が当たるまでの時間がかなり早かった。敵はすぐ近くに居るのか?


 瘴気で視界の悪い中、気配を探るが、気配は無い。気配を消せるのだろう。


 前を注意深く見ていると、黒い瘴気の中に赤い点が目に入る。


 そして、次の瞬間、障壁が轟音と共に砕けた。


「そこか!」


 ミコトを降ろし、赤い点が見えた場所に、向かって駆け出す。ミコトは、自身に<ホーリーバリア>を再び張ると、赤い点が再び現れる。


 俺は横に飛び退きながら、前へと進むと、後ろで轟音が響く。何とか攻撃は躱せたようだ。


 そして、赤い点の場所に着くと、そこに居たのは、さっき戦ったハイオーガよりも小さい、背丈は俺と同じ位の法衣を着たハイオーガだった。

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