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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第1章 救世主と聖女

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聖女

 ギルドに戻って来た俺達にパルが言った一言。


 聖女がアンファ村にやって来る。前にポーラから聞いた話じゃ聖女とやらは俺と同じく、こっちに召喚された異世界人という事だった。聖女という響きからは、戦闘に不向きな気もするが、御一行と言っていたから、取り巻きがきっと強いんだろう。


「聖女か……」


 俺の呟きにポーラが反応する。


「あら、気になるの?」

「気にならないと言ったら、嘘になるだろうさ。ポーラが言っていたじゃないか。聖女は異世界人だって」

「そういえば、前に話したわね」


 俺とポーラが話をしていると蚊帳の外状態だったフレイルが話に割って入って来た。


「おい、お前らの話なんかどうだっていいんだよ。何でその聖女さま御一行とやらがわざわざこんな何も無い村に来るんだよ。大体、異変ってどういうこった?」


 確かにフレイルの言う事も尤もだ。首都で活動しているはずなのにこっちに来るというのは何故だ?メタルスライムを倒したいなんて事はないだろうに…。


「あ、それは……、その………………」


 パルがばつが悪そうにモゴモゴと小さな声で俺の方を見ながら話した。


「アスカさんしか通れなかった隠し通路の話とかしてしまったから……」


 成程。つい、口が滑ったという事か。別に気にする事じゃないと思うが。


「パル、そんな気にする事じゃないぞ。別に隠す必要なんてないだろ?」

「アスカさん……。ありがとうございます。アスカさんがそう言ってくれると、ちょっと楽になりました」

「まあ、別に聖女が来たからといって、何か変わる訳でもないだろう。来た時は来た時さ」


 俺は、軽い気持ちで受け答え、その場の話を終わらせたが、この後これが大きな過ちだったと気付く事になる……。


 聖女達が来るのには一週間は掛かるそうだ。別に待つ必要も無いが、俺はポーラが立て替えてくれた装備の代金を返すために、その一週間はクエストを受けながら、錬装用の素材を集めていた。ここのクエストだとスライムの一定数の討伐やセティフの洞窟までの護衛といったクエストばかりだった。


 セティフの洞窟は、この村にとっては貴重な採掘が出来る洞窟だったらしい。出てくるのは、銅鉱石らしいが、それも最近では少なくなってきているんだとか。大した報酬じゃなかったが、数をこなしたおかげでスライムに至っては討伐数百体越えだ。


 そして、立て替えてもらっていたお金も無事返金出来た。ポーラは気にするなと言っていたが、この村に来て、変態に絡まれている所を助けてもらった上に、装備をただでもらうなんて出来るわけがないよ。これで俺の気も晴れた。


 そして、気付けばレベルも七まで上がっていた。今ではようやくスライムにも素手でダメージを与える事が出来るようになった。そして、今日もセティフの洞窟までの護衛クエストを受けて、村の入り口で鉱夫のバーグを待っているところだ。


「アスカさん、済まない。待たせたな」

「バーグさん。大丈夫ですよ。それじゃあ、行きましょうか」


 ポーラは、今日は宿屋で待機している。ここら辺で出現するモンスター程度なら俺だけでも十分やっていけるようになったからだ。メタルスライムは、流石に無理だろうが、そもそも遭遇率が低い。出会う事も無いだろう。俺とバーグの二人で出発しようとした時、こっちにやって来る五人の人影が見えた。


「何だ? 珍しいなここにあんな大勢が来るなんて」


 バーグが五人の人影を物珍しそうに見ていると、全身を鎧(かなり高そうな)で包まれた如何にも騎士といった男がこっちに向かって走って来た。


「おい、お前たちはこの村の者か?」

「俺はそうだが、こっちのアスカさんは違うぞ」


 男が俺の方を見ると、よそ者には用はないといった態度が見て分かる。


「君みたいな女性が、ここで何をしているのか分からないが、この人を借りていいかな」


 あからさまに男女差別が激しいな。この男。あまり好きじゃないタイプだ。


「今から俺達は出かけるんだ。あんたに構っている暇はないよ。さあ、行こう。バーグさん」

「悪いね。今から仕事に向かうんだよ」

「少しくらい話を聞かせてもらってもいいんじゃないか?それに君。そんなに魅力的な女性が、“俺”なんて言葉使いは良くないな」


 こいつ、面倒くさい。


「アスカさん、しょうがない。少し待ってもらえるかい。何が聞きたいんだ?」

「この村の近くに隠し通路のある洞窟があると聞いた。どこにあるか知らないか?」


 うん? 隠し通路のある洞窟……。あ、こいつら例の聖女さま御一行か。


「隠し通路? なんの事だ?」

「知らないのか?」

「それなら今から行くのがその洞窟だよ」


 俺の答えにバーグも男も驚いた顔を見せる。


「何で君が知っているんだい?」


 その質問に答えようとした時、残りのメンバーが俺達の所へやって来た。


「ビリー、分かりましたか?」

「姉さん。この人が知っているらしい」


 この如何にも魔法使いといった格好の女性は、ビリーと呼ばれた騎士の姉らしい。


「あら。あなた、隠し通路のある洞窟を知っているのでしょうか?」

「ああ、この人を今からそこまで護衛で連れていく所だったんだけど」

「まあ、そうなのですか。それでしたら、私たちもご一緒させてもらっても」


 構わないけど、面倒くさそうだな。どうするかな。


「行き先が同じだというのなら、俺は構わないぞ。アスカさん、いいかい?」


 ああ、バーグさん……。ほら、何てうれしそうな顔を……。しょうがない……。


「分かりました。じゃあ、行こうか」

「ありがとうございます!」


 俺と同じ位の女の子が俺に頭を下げて礼をする。


「あ、申し遅れました。私……」


 女の子が名乗ろうとした所を、おそらく剣士だと思う背の高い女性が制した。この人、どこかで見たような感じがするのは気のせいだろうか?


「おい、お前は名乗らなくていい。あたしは、セレス。そっちの男がビリー、で、隣にいるのがマリー。そこのちっこいのがセイラだ。この子についてはお前達は知らなくていい」

「セレスさん!」


 女の子が名乗りを止められ、俺達が知る必要がないと言われた事に抗議の声を上げるが、セレスは首を横に振る。まあ、名前は分からなくても事情を事前に知っている俺にしたら、この残った女の子が聖女なのだと分かる。聖女の事は秘密にしたいのだろう。


「俺はアスカだ。じゃあ、出発するぞ」


 全員が頷き、俺達はセティフの洞窟へと向かった。


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