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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第五章 豊穣と異変

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ハイオーガ

 洞窟の奥へと進む中、ポーラに異変が起きていた。ジャンボケイブバットが襲って来た時、それは顕著に見られた。


「ポーラ!」

「え? 何、アスカ?」

「何? じゃない! ジャンボケイブバットがそっちにいったぞ! 武器も構えないでどうするんだよ!」

「え?」


 駄目だ。ポーラの思考が鈍い。思考だけじゃない。視界も狭くなっているのか?


「くっ。間に合え!」


 ポーラまであと三メートル位の位置まで近付いているジャンボケイブバットに向かって飛び込みながら殴り飛ばす。


「何とか間に合った。どうしたんだよ? 呆っとしていたら、殺られるぞ」


 ジャンボケイブバットに止めを刺しながら、ポーラに質問する。


「ごめんなさい。瘴気のせいなのかしら? 何だか、意識がはっきりしないの」

「ミコト」

「うん。<ホーリーバリア>」


 ミコトは、<ホーリーバリア>を張った後、直ぐに<ピュリファイ>で瘴気を浄化したが、ポーラの様子は変わらない。体が辛いのか、呆っと立っているだけだった。


「ポーラ。大丈夫?」


 ミコトが話しかけても反応が無い。俺が話しかけても同じだった。


「瘴気にやられた?」

「それなら、凶暴化とか混乱とかして、暴れそうだけどな」


 俺とミコトが相談していると、ミコトが辺りをキョロキョロと見渡し始めた。


「どうした? 何かあるのかい?」

「何か声が聞こえた気がしたの」

「声?」


 俺にはそんなものは聞こえなかった。ミコトにだけ聞こえる声か。何だろう?


「あ、また」


 やっぱり、俺には何も聞こえない。ミコトにだけ聞こえているらしい。


「もしかして、プリメラ様?」

「え? プリメラ様?」


 ミコトはプリメラの加護を貰っている。それを通して呼び掛けてきているのかもしれない。それなら、俺には聞こえなくても当然だ。


「そんな。はい。ここに一緒に居ます」


 何を話しているのだろう。もしかして、ポーラの事か?


「分かりました。何とかしてみます」


 どうやら話は終わったようだ。俺はミコトに何の話だったのか聞いてみた。


「ミコト、何だったんだ?」

「あのね、プリメラ様からポーラの事を聞いたの」


 ミコトがプリメラに聞いた話としては、やはり俺たちの前にいるのは、ポーラの精神体。あの魔弾の影響で、肉体と精神体が分離してしまっているらしい。何故こうなったかまでは分からないらしいが、そのせいで、未だに肉体は目を覚まさないそうだ。


 そして、この状況は非常に不味い。肉体と精神体が長い時間分かれたままでは、命に係るらしい。今のポーラが呆然としているのは、その影響の一端だそうだ。


 ミコトは、ポーラに<ハイヒール>を掛けていた。少しでも精神体の負荷を減らそうという事だ。


「それで、ミコトはどうするつもりだ? ポーラの精神体を戻すって何をすれば良いかも分からないだろう?」

「うん。でも、ポーラ自身が精神体だと認識するのが一番だと思うの」

「それを認識させるのは、骨が折れそうだけど」

「うん。でも、ポーラの為にも頑張るわ」

「いや、勿論、俺も協力するよ」


 既にかなり消耗しているみたいだから、今、ここで話をしておかないと手遅れになってしまう。そんな気がする。


 ミコトが<ハイヒール>を掛けながら、ポーラにその話を始めた時だった。


 ドォンッ!


 突然、大きな音がなり、障壁の壁を揺らす。


「何だ!?」


 ドォンッ!


 再び大きな音が鳴り響く。音が鳴った方を見ると、瘴気でよく見えないが、何かが立っている。身長は、三メートル位。体格もかなり厳つい感じがする。それが何かをこっちに向けて投げているようだ。


「ケイブバットとは違うモンスターみたいだ」

「アスカ、お願い」

「ああ。任せろ。ミコトは、ポーラの事を頼む」


 そのモンスターが、三度、何かを投げるような体勢を見せたので、俺は<気弾>をいつでも放てるようにして、障壁の外へと飛び出した。


「<気弾>」


 障壁から飛び出るのと同時に<気弾>を放つ。それに気付いたモンスターが俺の<気弾>を狙って、手にしていた物を投げつけると、二つがぶつかりあって発生した爆風で、一瞬だけ瘴気が晴れた。


 その瞬間に見えたのは、鎧を着て、棒状の武器を持ったオーガだった。以前に戦ったオーガとは、何処か違う。鎧を着込んでいるので見た目が違うのもそうだが、何か雰囲気が違う。


 一瞬しか見えなかったせいというのもあるかもしれない。


「どっちにしろ、倒さないと先にも進めないんだ。やる事は、同じだ」


 再び前へと駆け出し、オーガに向かっていく。すると、向こうもこっちに向かって走り始めた。意外と速い。あっという間に距離が詰まると、オーガは手にしていた棒を真っ直ぐ振りかぶると、脳天目掛けて振り降ろした。それを横に一歩移動して回避する。


「おっと」

「避ケラレタ。オマエ、人間ニシテハ、ヤルナ」


 喋った。ゴブリンも喋ってはいたが、前に倒したオーガは、喋れなかった。こいつは、オーガの上位種か。ハイオーガとでも呼ぶべきか。


「人語を話せる程度は知能もあるのか。でも、勝つのは俺だ」


 ハイオーガの叩いた地面がその高い攻撃力で抉れている。当たればただでは済まない。だけど、これは、今になって始まったことじゃない。今までと何も変わらない。


「オマエ、ナマイキ。人間ノクセニ、オレニ、カテルト?」

「当たり前だ!」


 ハイオーガの腹にストレートを一撃当て、距離を取る。


「ムゥ」


 着込んでいた鎧でダメージは軽減されてはいるが、確実にダメージを与えられている。十分戦える。


 そんな事を考えていると、ハイオーガが再び棒を真っ直ぐ叩きつけて来た。さっきと同じように、横に動きやり過ごすと、ハイオーガは、振り降ろし切る前に横薙ぎに方向転換させた。


「な! 間に合わ……」


 両腕でガードすると、俺は壁まで吹き飛ばされ、壁に背中を叩き付けられた。


「ぐぁ、かはっ……」

「オカシイ? イマノデ、シナナイ?」

「アスカ!」


 背中を強く打った事で、呼吸が一瞬出来なくなったが、直ぐに体勢を整えた。そのお陰で追撃の突きを何とか躱す。ハイオーガの力で突き刺さった棒が壁から抜けないようだ。力一杯引っ張っているが、びくともしていない。


「ここだぁっ!」


 腕が痛い。だけど、そんな事を言っている暇は無い。痛みを我慢して、ハイオーガの腕目掛けて、<風爪>を当てる。


「オレノウデッ!」


 風の刃はハイオーガの肘から下を切り落とした。


「これでおあいこだな」


 俺自身もハイオーガの攻撃をガードした時、両腕の骨が折れたみたいだ。さっきは、我慢して<風爪>を使って攻撃出来たが、今は痛みでどうにもならない。


「ミコトに回復してもらえれば良いけど、今はポーラを任せているし、<癒やしの光>で何処まで回復出来るか」


 ハイオーガは、無くなった両腕を見て叫んでおり、洞窟の中に声が響いている。


「それにしても、うるさいな」


 ハイオーガの叫び声を鬱陶しく思っていると、突然、ハイオーガの頭が吹っ飛び、光の粒子となって消えたのだった。

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