再会
グレイステラ行きの船がモンスターの被害が大きくなり、出港出来ないため、その解決に少しでもなればいいかと、海のモンスター討伐の依頼書を確認していた時、背後から声を掛けてきたのは、プリメラの下で治療を受けていると思っていたポーラだった。
「ちょっと、何よ。その顔は? まるで死人を見ているような顔しないでくれるかしら」
俺とミコトの声が出ない。
「ねぇ、何か言ったらどうなのよ?」
「ポーラ?」
「何よ? 私の事忘れたの?」
「忘れる訳ないだろ! 無事だったのか!?」
目の前に立っているのは間違いなくポーラだ。ヒデオの魔弾にやられ、意識不明になっていたはずのポーラが目の前に居る。
「えっと、そうね。少し前に意識を取り戻したの。心配掛けたわね」
「良かった」
「そうだね。良かったね。アスカ」
ポーラが無事に意識を取り戻した事を喜んでいると、ポーラ自身は複雑そうに苦笑いをしている。
「まあ、意識を取り戻したのは良いんだけど、私、魔術が使えなくなったのよね。今は、この剣だけが頼りになったからね」
そう言えば、プリメラがそんな事を言っていた。意識を取り戻さないのは、体内の魔力の循環が狂っているせいだとか。
「魔術も使えないのに、こんな所で何をしていたんだ?」
「それはこっちのセリフよ。貴方達サウスバレンに行っていたんじゃなかったの?」
「向こうの用事は済んで、次はグレイステラに行く予定だったんだ」
「そう。どうやら、私が倒れていた間に、だいぶ力の差を付けられたみたいね。私も頑張らないと」
「それは仕方ないでしょ? ポーラはずっと眠っていたのよ」
「ありがとう、ミコト。でも、事実は事実よ。私は力を付ける為に、旅を始めたの。それで、街や村に寄ったら、モンスターの討伐依頼を受けて、経験を積んでいたのよ」
それでも、貴方達には追い付けないのでしょうけど。小さく呟く声が聞こえた。
一緒に旅を出来なくなったのが悔しかったのだろう。少しでも強くなって、俺たちに追い付きたかったのだと思う。
「それで、貴方達はここで何をしていたのかしら?」
俺はポーラにこれまでの事を話し、次はグレイステラに行こうと思ったが、船が出ずに困っていることを伝えると、ポーラは呆れた顔をしていた。
「船が出ないのなら、プリメラ様の所に行って、相談すればいいじゃないの」
「プリメラ様か……」
「船は無理でしょうけど、他の方法を教えてくれると思うわよ?」
ポーラの言う事も一理あるか。
「そうだな。ここで悩んでてもしょうがないし、ミコト、それで良いかな?」
「私は良いよ」
「ポーラはどうする?」
「私は……、たぶん足手まといになると思う。もっと強くなって、貴方達の横に立てる自信が付いたら、また一緒に行動しましょう」
ポーラは自分が足手まといになるのが余程嫌なのだろう。元々は、俺の方が足手まといだったのだから、気にしなくても良いのだが、彼女の表情を見る限り、決心は固そうだ。
「分かった。でも、魔術が使えないんだから、無理はするなよ」
「ふふっ。分かっているわよ。絶対に追い付いてみせるから。あ、でも、その前に、今の貴方達との実力差を知りたいから、ちょっと手合わせ願えるかしら?」
「それは良いけど」
最近目が覚めたばかりと言うのなら、レベルも前と大差ないはずだ。大丈夫か?
「勿論、本気でやってよ」
「大丈夫か?」
「死ななければ、ミコトに傷は癒やしてもらえるでしょう?」
「分かった。それじゃあ、普段通りの戦い方でやるよ」
「お願いね」
俺たちは、ギルドから出ると街の外へと向かった。そして、模擬戦をするため、街から離れた場所へ移動する。
「ここならいいかな?」
「ポーラ、大丈夫? 今のアスカはかなり強いと思うよ?」
「その方が良いわ」
「ポーラ、準備はいいかい?」
「いつでもいいわよ」
俺はいつも通り<アクセルブースト>、<パワーライズ>を使う。
ポーラが俺に向かって駆け出した。元々Agiは高い方じゃなかったけど、こんなに遅かったか?
ポーラが剣を振り降ろすが、俺は動きを最小限にして、その剣を躱す。攻撃を躱された事に驚く事もなく、ポーラは剣を横に薙ぐように軌道を変える。
「やるな! でも、今の俺はこの位!」
ポーラの横薙ぎは、後ろに飛ぶことで躱した。そして、剣を振り終えた所で前に出ると同時に、ポーラの鳩尾を狙って拳を突き出した。
「速い! でも!」
「はっ!」
俺の狙いを読んでいたのか、ポーラは剣を持たない左手で既に鳩尾を守っていた。
だが、俺の気合いと共に放った一撃は、ポーラのガードを物ともせず、ポーラを吹き飛ばす。
「そん……な……」
ポーラは、たった一撃で気を失ってしまった。
ミコトが気を失ったポーラに<ヒール>を掛けていると、傷が癒えた事で意識が戻ったポーラがゆっくり起き上がる。
「う……ん」
「お、目覚ましたか?」
「大丈夫?」
「えぇ。ありがとう、ミコト。それにしても、アスカ。強くなったわね」
「まさか、一撃でポーラが気を失うとは思わなかった」
「出会った時と立場が逆転しちゃったわね……」
確かに出会った時は、俺もレベルが低く、ポーラの一撃で気を失っていたな。この世界に来て、三ヶ月位。まだ三ヶ月しか経っていないのか。色々とありすぎて、一年位経っているように感じていた。
「貴方達が来て三ヶ月で私の二十二年を越えられるとはね」
「そうだな。俺たちはこの世界の人たちよりレベルが上がりやすいみたいだ。そうでなきゃデザートドラゴンやエンペラータイガーなんてモンスターと戦えるはずがない」
「え!? ドラゴンとまた戦ったの!?」
「ああ。でも、カオスドラゴンよりもかなり弱いドラゴンだけどな。ポーラも強くなるには、他の女神や魔王の神器や魔器を手に入れると良いよ」
「そうね。でも、今の私には、その挑戦すら厳しいけれど……」
ポーラは自分の不甲斐なさが悔しいのか、俯きながら小さく呟いた。
「まあ、でも、ポーラが元気で良かったよ」
「心配してくれて、ありがとう。ほら、先を急ぐのでしょう?」
「ああ。それじゃあ、また会おう」
「またね」
「アスカ、ミコト。二人共頑張ってね」
「「ありがとう」」
俺たちは、ポーラに別れを告げ、プリメラに会うため、エスティへと向かった。




