砂の悪魔の本気
ミコトの<ホーリーフレア>、ヒデオの<エクスターミネーションボム>により、<ドラゴニックバリア>を破られ、魔術による攻撃が通じるようになった砂の悪魔に、ミサオのMD、ミコト、ヒデオの三人が魔術攻撃を仕掛けているが、元々の防御力が高く、焼け石に水程度しかダメージは入っていない。
そんな状況で、ヒデオに挑発された俺は、今、物理攻撃の障壁<ドラゴニックオーラ>を破るべく、準備をしていた。
俺の<烈波>が障壁に直接ダメージを与える事が出来るのは分かった。それなら<連環>で一撃の威力を跳ね上げる。
「先ずは、<練気>」
さっきの<烈波>で消費したOPを回復させ、消費したMPを魔力回復薬を使って完全に回復させる。
この間も皆が魔術で攻撃して砂の悪魔の意識を逸らしてくれたお陰で、邪魔されることなく出来た。
「よし、次だ。<連環>」
闘気と魔力を一つに纏めるために<連環>を発動した。このアーツは、時間が掛かるのが欠点だが、未だに砂の悪魔の意識は、皆の方へと向いているため、問題無く進んでいる。
俺の体を紫色のオーラが包み始めた所で、砂の悪魔が俺の方を見る。
『貴様、何をしようとしている? まさか、さっきの攻撃を!』
慌てて俺の方へと突進をしてくるが、気付くのが遅い。もう、魔力は全て闘気と一つになり、紫色のオーラが俺の体全体から立ち昇っている。
「それだけ焦っているってことは、<烈波>が余程嫌なんだな。なら、しっかりと味わえよ!」
突進してくる砂の悪魔に俺も向かって駆け出す。今の俺は、<アクセルブースト>を使ってはいるが、砂の悪魔の倍のスピードで動ける。突進をさらりと躱し、砂の悪魔の側面へ廻り込めば、砂の悪魔が尻尾の回転薙ぎ払いをしてくる。それを跳び上がって躱し、着地と同時に<烈波>を放とうとしたが、大量の砂が舞い上がり、俺と砂の悪魔の間の壁となって邪魔をする。
「無駄な足掻きだな!」
その壁をヒデオの魔銃から放たれた<バーストバレット>が吹き飛ばす。
砂の壁に俺が通れる位の穴が空き、その向こうに見えたのは、砂の中へと潜っていく砂の悪魔の姿。
「くそっ。間に合わなかった」
「何を逃がしてやがる!」
ヒデオが遠くで文句を叫ぶ。逃がしたくて逃がしたわけじゃない。そもそも、あいつは逃げたわけじゃない。
「くそっ。この間のデザートドラゴンと同じか!」
慌てて、その場から離れると俺の立っていた位置を中心に半径三メートル位のブレスが通り過ぎる。
「ミコト!」
砂の中に潜った砂の悪魔にミコトが<ホーリーランス>を放つ。威力は低くても、今の砂の悪魔には鬱陶しいはず。その証拠に、
『おのれ。鬱陶しい。<ドラゴニックバリア>を破り、我にダメージを与え、砂の中からの攻撃も躱され、更には、砂の中に居るのに魔術を当ててくるだと』
ダメージは大した事はないのかもしれない。でも、人間だって蚊にチクチク刺されれば鬱陶しいし、イライラする。あいつにとって俺たちは、蚊程度なのかもしれないが、正にその状態のはず。
『まとめて喰ってくれる!』
砂の悪魔を中心にして、砂が渦を巻き始め、蟻地獄のような円錐状に凹む。
「やっぱりこう来るか!」
砂の悪魔が中心でその大きな口を開けて、俺たちが渦に巻き込まれ、落ちてくるのを待っている。
「でも、これは経験済みだ。そして、喰いたきゃ、喰わせてやるよ!」
俺は渦に巻き込まれ動けなくなる前に、砂の悪魔に向かって飛び込んだ。
「アスカ!?」
他の皆は渦に巻き込まれてしまって、動けないでいた。ヒデオは、砂の悪魔に向けて、魔銃を撃っていたが、俺が飛び込むのを見て、撃つのを止める。
「あいつ、馬鹿なのか?」
砂の悪魔に向かって落下していく俺を見て、ヒデオが呆れていた。
俺は砂の悪魔の下へと辿り着く前に、
「ミコト、ミサオ! あいつの口に魔術で攻撃を!」
俺の頼みを聞いて、二人が魔術を放つ。口の中を攻撃されるのはやはり嫌だったようで、砂の悪魔は一瞬口を閉じる。その閉じたタイミングで、俺は砂の悪魔の口の上に着地した。
「そら、喰わせてやるよ! <烈波>ぁ!」
全力の<烈波>を砂の悪魔の顔面に放つ。<連環>によって魔力が加算された一撃は、砂の悪魔の<ドラゴニックオーラ>へと吸い込まれ、爆発を起こす。
「どうだ!?」
口を開く前に、口の上から飛び降りる。砂の渦は止まっていた。OPもMPも使い切っているので、回復するために、大きな上り坂となった砂漠を駆け上がる。
砂の悪魔は微動だにしない。さっきの爆発の衝撃で気を失っているのだろうか?
上まで駆け上がった俺は、魔力回復薬を飲み、回復したMPを直ぐにOPへ変換し、砂の悪魔の様子を伺う。その間に他の皆も渦に巻き込まれ、砂に埋まっていた体を砂の中から引き上げ、俺の所へ向かって来ていた。
「さて、今のでどうなったかな?」
「確認は、俺に任せろ」
ヒデオが砂の悪魔に照準を合わせ、
「<ウォーターバレット>」
水の魔弾を放つ。これは水属性の物理ダメージを与える魔弾らしい。今更だが、魔力の弾なのに物理攻撃に分類されるのは不思議だ。
水の魔弾が砂の悪魔に命中。
『ぐぉっ』
攻撃が徹った。だが、気絶していた砂の悪魔が今の一撃で意識を取り戻したようだ。
『馬鹿な……。あの方に授かった<ドラゴニックオーラ>まで破られるだと……』
今の砂の悪魔の一言で、上手くいったのが分かった。
「障壁が無くなったか。ここからが、本当の勝負だ!」
ヒデオが再び魔銃を撃つ。だが、魔弾が届く前に砂の悪魔は、砂の中へと潜ってしまった。
「くそっ逃げられた」
「気を付けろ。砂の中から攻撃が来るぞ」
地面が大きく揺れる。下から飛び上がって来るつもりか。
「皆、離れろ!」
俺の呼び掛けに走って散ると、予想通り、砂の悪魔が飛び出してきた。それに合わせて、ヒデオが照準を合わせた時、ヒデオが大きな声で悲鳴を上げる。
「ぐわぁあああ!」
ヒデオの悲鳴を聞いた俺は、ヒデオの方へ目を向けると、黒い砂が、ヒデオの体を縛り上げていた。
「「きゃああああ!」」
次はミコトとミサオが悲鳴を上げる。ヒデオと同じく、黒い砂が二人の体を縛り上げていた。
「ミコト! ミサオ!」
次は、俺か! 直ぐにその場から飛び退くと、予想通り。足下から黒い砂が螺旋を描きながら伸びてきていた。
「危なかった。戦い方が変わった。余裕が無くなったということか」
砂の中から飛び出した砂の悪魔は、砂上に降り立ち、こっちを睨んでいる。そして、今までと違うのは、その体から黒い瘴気のようなものが立ち昇っていた。
砂の悪魔も本気になったということだろう。だが、こっちもまだ奥の手は残っている。見せてやる。取っておきの切り札を。




