予想外の味方
砂の悪魔へと向かう俺を迎撃すべく、砂の悪魔は砂の礫を無数に飛ばして来る。
その礫を避けながら走行し、一発も喰らう事無く、砂の悪魔の目の前まで辿り着くと、礫を飛ばすのを止め、前足で叩き潰しに来た。俺は後ろに下がる事で、その攻撃をやり過ごす。
俺に意識が向いていた間、ずっと、BDが尻尾を攻撃し、気を引こうとしてくれていたのだが、ここに来て漸く、鬱陶しいと感じたのか、
『さっきから、我の尾をポコポコと叩きおって、鬱陶しい。此奴と共に吹き飛ぶがいい』
砂の悪魔が、その場でくるりと回転し、俺とBDを尻尾で薙ぎ払ってきた。
尻尾のすぐ傍に居たBDは薙ぎ払いをまともに受けて吹き飛ばされると、そのまま光の粒子となって消えてしまう。
「あぁっ! アキレス何やってんのよ!」
『申し訳ございません。反撃してくる素振りがまったくなかったので、反撃への反応が遅れてしまいました』
「もう! BDもSDも暫く使えないじゃない!」
『重ね重ね、申し訳ございません』
ミサオがアキレスに文句を言っているが、今の人形のステータスでは、ダメージを与える事は出来ないので、居ても居なくても変わらないというのが、本音だ。暫く召喚出来ないと言っても、四、五日のレベルだから、そこまで問題にもならないだろう。ミサオは、仕方なく砂の悪魔から距離を取るように離れていった。
俺はというと、尻尾の薙ぎ払いをジャンプで躱し、今、砂の悪魔の横腹に手を当てている。
「さぁ、これはどうだ! <烈波>!」
掌から放たれたオレンジの光が、体の中に……入らなかった。<ドラゴニックオーラ>に弾かれたのかとも思ったがそれも違う。その証拠に、
『貴様、今、何をした!? 我が<ドラゴニックオーラ>にダメージを与えるなど、人如きに出来る筈が無い』
成程。<ドラゴニックオーラ>にダメージが入ったのか。あれもバリアの一種なら、<烈波>を何回か当てれば、破れるのだろうか?
砂の悪魔が横跳びで俺に体当りをする。これは流石に躱せない。
「しまった」
思ったよりもダメージが入った。更に、砂の悪魔は追撃として、礫、前足から森の死神も使っていた、<風爪>を放つ。
<烈波>の直後だった事もあり、他のアーツを使う事も出来ず、吹き飛ばされて体勢も悪く、躱すにも間に合わない。
「くそっ。しくじった」
せめて、直撃だけは避けて、<風爪>だけは、避けなければ。
礫は当たるのを覚悟して、両腕で頭を防御しつつ、体勢を整える。
礫が、数発腕に当たり骨が折れたのが分かる。吹き飛ばされた勢いを殺しつつ、横に飛び、<風爪>は何とか避けた。
『凌いだか。まあ良い。その腕では攻撃など出来まい。その命、貰い受けるとしよう』
骨は流石に<癒やしの光>では、すぐにくっつかない。ミコトとの距離も離れてしまった。<ヒール>を掛けてもらおうにも、射程外だ。
「<ハイヒール>!」
ミコトが叫ぶように魔術を唱えると、俺の体を白い光が包み込み、あっという間に傷が癒えた。骨もくっついている。
「ミコト! 助かる!」
「アスカ! 礼は後! 来るよ!」
俺に止めを刺すため、砂の悪魔はブレスを吐こうとしていた。大きな口を開けてこっちを向いていた。
そして、ブレスが放たれようとした時、砂の悪魔の横顔が爆発し、その衝撃で顔が逸れる。
そのまま放たれたブレスは、明後日の方向に放たれ、砂を焦がしただけだった。
『誰だ!? 我の邪魔をしたのは!?』
ミコトやミサオの攻撃ではない。あんな衝撃を起こすような攻撃は持っていない。別れたノゾムも違う。だが、この攻撃には心当たりがあった。
「お前には借りがある。ここで倒させてもらおうか」
ミコトよりも更に後ろから砂の悪魔に向けて武器を構えている男。
「ヒデオ!」
「お前達と共闘するのは、俺も好まないが、そいつは、前にサウザートの兵達を殺された恨みがあるんでな。俺もやらせてもらう」
爆発の衝撃で顔を逸らされた砂の悪魔だったが、今の攻撃でも無傷だ。
「おい、お前らの中に強力な魔術を使える奴は居るか?」
ヒデオは魔銃を撃ちながら、砂の悪魔を牽制しつつ、ミコトに質問をする。
「私の切り札が、一番威力はあると思うけど、あのデザートドラゴンの障壁は、破れないと思うけど」
「お前だけならな。俺の合図と合わせて、やれるか?」
「詠唱がいるから、すぐには無理だけど、詠唱後なら」
「よし。すぐに準備をしてくれ!」
ミコトはヒデオの自信たっぷりの言葉を信じていいのか疑問に思ったが、ここはあえて、信じてみることにした。
「今から準備するわ」
ジョブを聖魔に変更し、
「<ロック>」
砂の悪魔に照準固定の魔術をかける。
「我が身に宿りし聖なる力。全てに等しく与えし光」
切り札である<ホーリーフレア>の詠唱を始める。それに合わせて、ヒデオも準備を始める。
「その力我が前に立ち塞がりし、厄災を聖なる炎となりて打ち払いたまえ」
ミコトは詠唱を終え、ヒデオに向かって頷き、合図をする。
「よし、今から五秒後に放て」
「五、四、」
『貴様ら、何をするつもりだ。この鬱陶しい攻撃を続けて、時間稼ぎのつもりか? 我が障壁を破れぬ限り、貴様らに勝ち目など無い』
「三、二、」
『大人しく散れ』
「一」
砂の悪魔がミコトとヒデオに照準を合わせて、ブレスを吐こうとしている。
「放てぇ!」
「<ホーリーフレア>!」
「<エクスターミネーションボム>!」
ミコトの放った<ホーリーフレア>とヒデオの<エクスターミネーションボム>が同時に砂の悪魔に命中し、大爆発が起きる。
「うわぁっ!」
近くに居た俺もその強烈な爆風で吹き飛ばされてしまった。
そして、二人の切り札を受けた砂の悪魔はというと、
『馬鹿な。有り得ん。有り得んぞ』
魔力回復薬を飲みながら、ヒデオが魔銃を撃つ。
『ぐうっ』
「どうだ? 自慢の障壁を破られて、受ける久しぶりのダメージは」
何だと。障壁を破った? ヒデオの言っているのが正しければ、魔術側の障壁、<ドラゴニックバリア>を破ったということか?
「おい! 拳士の女! とっとと<ドラゴニックオーラ>も剥がしてしまえ。この<マジックバレット>じゃ、あいつには毛ほどのダメージにもならねぇんだよ!」
やはり、<ドラゴニックバリア>を破ったのか。ミサオもヒデオの言葉を聞いて、MDを召喚していた。
「そいつは、水属性以外は効かねぇ。やるなら水属性魔術だ」
「<ウォーターアロー>」
「<ウォーターボール>」
ミコトとMDの放った魔術が砂の悪魔に当たる。やはり、障壁はない。ダメージが入っている。
「皆に良い所を持っていかれてしまうな。だったら、俺も、<ドラゴニックオーラ>を破らせてもらう!」
ヒデオの参戦により、勝機が見えたのは癪に障るが、俺もやってやろうじゃないか。




