アスカとヒデオ
アゲートとの戦闘中に現れたヒデオに宣戦布告をした俺をアゲートが邪魔をするかのように間に立った。
「ヒデオ様と戦うのであれば、先ずは私の命を奪ってからにしてもらいましょう」
「退け、アゲート。さっきも言っただろう。怪我人は引っ込んでいろ」
ヒデオが直ぐにアゲートへ退くように指示を出し、遂にアゲートも諦めた。俺とヒデオの間に割って入っていた所から動く。
「みんなも手を出さないでくれ。こいつとは俺が戦う」
俺の要望にノゾムとミサオは頷き、ノゾムも未だ気を失っているミコトの下へ走っていった。
「何だ? 全員掛かりでも俺は良かったんだけどな?」
「お前は俺だけで十分だ。前回のようにはいかない」
ヒデオは無言で魔銃のトリガーを引いた。俺は横に動くと、その魔弾が後ろを通り過ぎていく。
「相変わらず、避けるのは得意みたいだな。面倒くさい奴め」
再び狙いをすまし、発砲するが、これもまた避ける。そんな事を、暫く続けるとヒデオの苛立ちが募っていく。
「くそ、いい加減に当たれ!」
あの魔銃の形態は、通常時の強化版といった感じで、恐らくリアルでいうマグナムみたいな強力な短銃だろう。だから、火力はかなりあるが、連射も出来ない。
無駄弾を撃たせるだけ、撃たせて、魔力を使わせる。こんな城の中で、前回やられた爆弾は流石に使わないと思いたい。
「なぁ、アスカの奴、あれってわざとだよな?」
「うん? 何が?」
「あいつ、何で攻撃しないで逃げるだけなんだ?」
ノゾムの言う通り、全く攻撃に出ていない。攻撃しようと思えば、出来ない訳じゃない。寧ろ、今の俺ならあいつの懐に一瞬で入り込み、攻撃を叩き込みまくる事は簡単だ。
それで追い込み過ぎて、あの爆弾を使われたら堪らない。今は様子を見ている状況だ。
「くそっ。やっぱりこっちか。魔銃(散)」
流石にこれは拡散してから避けるのは無理だ。そろそろ攻撃に転じるか。
ヒデオがトリガーを引いた瞬間に<フラッシュムーブ>でヒデオの目の前に出る。ヒデオは驚きはしたが、懐に入られるのは覚悟の上、というよりも、以前の俺の攻撃力ではノーダメージだった事から、俺の攻撃力を舐めていたのだろう。
だが、今の俺は以前の俺と同じと思っているのなら、痛い目に合って貰う。
「懐に入った所で、お前の火力じゃ俺にダメージは入らない。無駄だし、それについては対策済みだ」
魔銃の形状が通常形態に戻ると、
「<ソードバレット>」
銃口から魔力剣が発生し、それを俺に向けて斬りつけてくる。うん? この程度の剣技で対策済み。俺を舐め過ぎにも程がある。ということで、軽く躱し、顔面に一発拳を叩き込む。
「ぶっ、何だと!?」
もう銃剣を一度斬りつけてくるが、これも大した攻撃じゃない。攻撃を左手で上に反らし、今度は腹に一発。
「かはっ、何で、お前の攻撃が……」
うるさい。という事で、もう一発。
「ごふっ、あり得な……」
もういいや。一気に行こう。ここから連打を叩き込む。顔面の形が変わるんじゃないかと思われる程、殴り続けた。
「ばがば。ぼばべびぼんばびがばが」
「強くなったのはお前だけじゃない。今までのはポーラの分。ここからは、俺の分だ」
「びぃ」
「アスカ、それ以上は殺してしまうよ。もう、そこまでにしましょう」
意識を戻したミコトが俺の手を止めた。
「ミコト、分かった。よし、それじゃあセドニーの所に向かおう」
俺は皆に先に進むように促し、俺たちは奥へと向かう。
「くそぉ、ただで行かせるか」
ヒデオは、自身に背を向けた俺たちに魔銃の照準を合わせる。
「死ね」
「そんな事だろうと思ったよ」
俺は背後から撃とうとしているヒデオの下へ一瞬で戻ると、思いっ切り鳩尾に拳を叩き込む。
ヒデオの体がくの字に曲がり、そのまま倒れ込んだ。
「そこで寝ていろ」
俺は皆の下へと戻って行った。
「どうしたの?」
「あいつが背後から狙っているのが分かったから、気絶させてきた」
「なんか、アスカ。あいつには全然容赦無かったな」
「まあ、前回やられてるしね」
「そうじゃないよ。アスカがこっちに来てお世話になった人をヒデオが撃って、その人、意識不明のままなんだよ。だから、その人の事で、怒っているの」
「あいつは、自分が救世主だから何をしても良いなんて、ふざけた理由で好き勝手したみたいだから、腹が立つんだよ。それより、ここだな。きっと」
「それにしても、一方的だったよな。本当に前に戦った時、お前負けたのか?」
「ああ。今回は、ここがあいつらの住んでいる城だというのが、大きいな。あいつのアーツ<エクスターミネーションボム>を使われたら、あんなに簡単には、いかなかったろうけど、あれを使っていたら、この城が無くなる程の威力はあったからな、使えないと思っていたんだよ」
「なるほどな。そんなアーツ使われたら、大変だったか」
そんな話をしながら歩いていると、大きな立派な扉の前に辿り着いた。
「入るぞ」
「ああ、行こうぜ」
「「うん」」
俺は扉を開け、中に入ると、玉座にはセドニーが堂々と座っていた。部屋の中は、ブラッドの謁見の間の半分くらいの広さ。装飾なんかも最低限、威厳を保つ程度。
「よく来たな。召喚者共。ケチババアのとこのと、腐れジジイのとこ、ちび妖精、後は誰が召喚したのか分からない野郎か。よくもまあ、揃ったもんだ」
「こいつ、なんて口が悪いんだ。デイジーちゃんをケチババアだと」
「ケチババアをケチババアと呼んで何が悪い。それで、何しにここに来たんだ? 俺の下に鞍替えしに来たのか?」
「違う。デイジーとブラッドとの戦争を止めてくれ」
「断る」
即答。やっぱり、ここはアルを通して、アルの本体と会話をしてもらうのが最善か。
「アル、頼む」
<空納>の中にいる筈のアルに声を掛けるが、反応が無い。まさか、出てこれない位弱っているのか? どうすればいい。
「何かするつもりか? やれやれ、アゲートもヒデオも退けたんだ。それなら、俺が直々に相手をしてやる必要があるか?」
不味い。流石に魔王相手に俺たちじゃ相手にならない。アルを無理矢理出せるか?
「アル、頼む。出て来てくれ! <空納>」
アルを掴むつもりで、<空納>の中に手を突っ込んでみる。お、これは、手に触れた物を掴み引っ張り出すと、ぐったりしたアルが出て来た。




