強敵アゲート
アゲートとの戦闘を回避出来ないと分かった俺たちは、四対一という若干卑怯ではないかとも思ったが、そこは、やはり戦闘の経験差がその数の差を完全に埋めていた。
「はっ!」
ノゾムの掛け声と共に放った突きを軽々と往なし、己の突きをノゾムの左太腿に当てる。
「ぐぅっ」
更に追撃をしようとする所をSDの魔力矢で邪魔をするが、魔力矢を全て躱し、ノゾムとの距離を取るついでに、切っ先の光をノゾムに置き土産として、放つ。左太腿を刺されて、動きの鈍くなったノゾムがそんな至近距離からの攻撃を避ける事が出来る筈もなく、
「うわぁあああ!」
光の爆発をもろに受ける。
「この、舐めるなよ! これがガンランスだ!」
ドンッ、ドンッ
鈍い発砲音が二回。ノゾムのガンランスから、弾が発射された。弾と言っても、魔力弾のようだ。
「ほう。発砲出来るのですか。ですが、私の国の召喚者の武器をお忘れか?」
アゲートは、切っ先に光を集めると、その光で魔力弾を弾き、二発の弾は明後日の方向へと飛んでいった。
「このような物、戦闘訓練で何万と対応しているのです。通じませんよ」
「そうかもな!」
魔力弾を弾くのに意識が向いて居た所を、<フラッシュムーブ>で距離を詰めた俺が強襲する。更にSDの援護射撃も。
その間にミコトがノゾムに<ハイヒール>を掛けて治療していた。<ヒール>の上位版である<ハイヒール>によって、傷はあっという間に癒える。
俺の左右の連打を躱し、距離を取ろうとバックステップで後退しようとした所を魔力矢が飛んでくるが、先程と同じく剣の先にある光で弾き、何事も無かったように態勢を整えている。
今のやり取りで全くの傷を与えられていない。やはりこの男、別格。ステータスとしては、前に対峙した時よりも成長しているのに、まだ足りないのか? スピードで言えば、<アクセルブースト>込みではあるが、間違いなく今の俺の方が速い。それなのに、さっきの攻撃は掠りもしなかった。
アゲートは、俺たちの顔を順に目で追っていた。俺から始まり、ミサオ、SD、ノゾム、ミコト。
そして、剣の光が切っ先から全体へと拡がっていく。あれは、あの時のアーツか。
「城を破壊するのが心苦しいですが、先ずはあなたを片付けた方が早そうなので。<シャイニングスティンガー>!」
剣を覆っていた光が更に大きくなり、光の針がミコトに向かって放たれた。光の針は真っ直ぐにミコトへと向かい、
「<ホーリーバリア>!」
ミコトの張った障壁に命中すると爆発を起こす。
「ミコト!」
近くに居たミサオがミコトの方へと駆け寄ると、今の一撃で、障壁は砕かれ、爆発の余波を受け、吹き飛ばされたまま気を失っていた。
「まさか、私の<シャイニングスティンガー>で無傷とは。流石は聖女というところですかね」
「くそっ」
「アスカ! 離れていろ!」
ノゾムがアゲートに向かってガンランスを構え突進する。
「うぉおおおおお!」
「ただ突っ込んできた所で当たらなければ、意味は無いですよ」
アゲートの忠告など聞く耳を持たないと言わんばかりに、そのまま突っ込むノゾム。俺はノゾムの言う通り、一旦アゲートと距離を取ると、そこにノゾムが突きを出す。
「喰らえ! <フルバースト>!」
ノゾムは突きを放つのと同時に、ガンランスのトリガーを引く。このガンランス、トリガーが二つあり、単発ずつ魔力弾を放つ物と、一気に残弾を放つ物。
今回、ノゾムが引いたのは全弾同時射出用のトリガーだ。さっきの<フルバースト>とは、突きと同時に魔力弾全弾を放つガンランス時専用のアーツといった感じか。
「至近距離で突きと魔力弾の同時攻撃。それでも、意味はありませんよ」
「どうかな!」
ノゾムは不敵な笑みを浮かべると、アゲートに当たる手前で放った魔力弾が集束。爆発を起こし、アゲートの刺突剣をその勢いで後ろへと追いやる。
「何ですと!」
「喰らえっ!」
そのままノゾムはアゲートの右肩にガンランスを突き刺す。
「ぐぅぅぅ」
「へへっ。どうだ」
利き腕の右肩を突かれてしまっては、今までのような戦いは出来ないだろう。そう勝ち誇ったような顔をしているノゾムが勢いよく吹き飛んでいった。
「うわぁっ、何だ!?」
見れば、アゲートが左手をノゾムに向けて突き出している。あれは、邪魔な兵士を吹き飛ばした時の力か。
「右腕が動かなくとも、まだやれます。甘く見ないでいただきたいですな」
すかさず、俺はノゾムの追撃に出る。意識がノゾムに向いている今がチャンスだ。
<麻痺>を使った一撃がアゲートの顔までもう少しといった所で、嫌な気配を感じ、そのまま後ろへと飛んだ。
ドンッ
俺がいた場所の床が鈍い爆発音と共に弾ける。
「何か騒がしいと思って来てみれば、アゲート、何やっているんだ?」
聞き覚えのある声が奥から聞こえた。
「これは、ヒデオ様。侵入者の相手をしておりました」
「何て様なんだよ。お前らしくもない。またお前たちか。なんか一人増えているみたいだが、まあいい。今度こそ俺が殺してやるよ」
城の奥から現れたのはヒデオだった。さっきのはあいつの撃った魔弾だったのだろう。あのまま攻撃していたら、撃たれていた。
「ヒデオ!」
「お待ち下さい。確かにみっともない所をお見せしましたが、この者は、セドニー様より捕らえるように指示が出ております。貴方様では、本当に殺しかねません。ここは私にお任せを」
「駄目だね。大体、お前、利き腕が潰されているだろう。そんなのでどうやって戦うつもりだ? あの魔力によるゴリ押しか? それは捕獲なんて尚更無理だ。それに、俺はこいつらは要らない。セドニーが欲しいと言っても俺が要らないんだ。だから、殺しても問題はない」
ヒデオは話し終えるのと同時に、魔銃のトリガーを引く。照準もしないで何処を狙ったかと思えば、気絶しているミコトに向けてだ。
「GD!」
傍にいたミサオが咄嗟にGDを召喚し、ミコトを庇うが、何と、今の一撃でGDが光の粒子に変わる。
「嘘! ミコト、早く目を覚まして! 次狙われたら防げない」
相変わらずの火力だ。ここにいる誰もが、一撃でも急所に当たれば即死、間違いない。
だが、
「今度こそ殺す、か。悪いな。死んでもやらないし、負けてもやらない! 今度は俺がお前をぶっ飛ばす!」
ヒデオに向かって、俺は宣言した。




