セドニーの城
魔具を手に入れ、それぞれの状況を確認した俺たちは、奥に現れた階段の前にやって来た。
長い階段だ。ざっと見ただけでも、千段はありそうだ。
「うわぁ……。これ、上がっていかないといけないの……」
ミサオの嘆くような呟きが聞こえる。それを聞いたノゾムがミサオに文句を言った。
「ミサオ、やめろよ。俺だって嫌になってくるじゃねぇか」
「二人とも、文句を言ったって始まらない。どのみち、こっちに進むしかないんだ。行くぞ」
「「はいはい……」」
まったく。少しはミコトを見習って欲しいもんだ。文句も言わず階段を上り始めたぞ。
「これ、ここに降りて来た時よりも、高くない?」
「そうだね。どういう事なのかしら?」
そう。千段以上ある階段を上っているのはともかく、もう三十分は上っている。地上からあのボス部屋に続く下り階段は、十分も掛からずに通路に辿り着いた。
あのボス部屋まで歩いた時間とボス部屋の広さから考えても、地上にはそこまで高さのある建物や丘なんかは何も無かったはず。
「この階段、どこまで続くんだよ?」
流石にうんざりしてきた俺も、ついつい愚痴ってしまった。それを聞いたノゾムとミサオがお前だって文句言っているじゃないかと騒ぎ出す。
「あぁ、もう。分かったよ。俺が悪かった。ったく、こんな時は、仲が良いんだからな」
「「誰が!」」
「ほら、息ぴったりじゃないか」
「皆、静かに。出口みたいよ」
ミコトが指差し、上を見ると確かに、階段が切れていた。ただ、天井が異様に高いのが、気にはなるが。
階段を上りきった所で、全員の叫び声が上がった。
「「「「嘘!」」」」
何故なら、階段を上りきった先には、左手に、再び長い階段があったから。
「おいおい。冗談キツイぜ」
「ここで少し休憩しようか?」
「「賛成」」
俺たちは左手に続く階段の前にある踊り場のような場所で休憩を取ることにした。
「疲れたぁ」
ミサオがもう上りたくないとばかりに座り込む。
「確かに疲れたなぁ。でも、これだけ上がるとなると、かなりの高さの位置に出る」
「そうだな。セドニーの城に続いているんじゃねぇのか?」
俺はノゾムの言葉に頷く。それに続くようにミコトも頷いた。
セドニーの城に出れば、また戦闘がある可能性が高い。皆の顔が引き締まった。
「文句の一つも言ってやらないとね」
「そうだな。そもそも、セドニーがヒデオを召喚したから、皆が召喚されることになったんだろ?」
「うん」
「なら、文句の一つだけじゃなく、一発殴ってやらないとな」
全員が頷く。そして、行くかと声をかけ、左手の上へと続く階段を上ること十分。漸く、目の前に扉が現れた。
扉を開くと、そこはセドニーの城の前だった。外に出てみれば、俺たちが出てきたのは倉庫のようにも見える建物だった。こんな建物が地下迷宮へと続いているとは誰も思わないだろう。それに、ボスを倒すことで現れた階段だ。きっと一方通行なのだろう。
「やっと城の前に着いたな。行こう!」
城の入り口には当然といえば当然だが、サウザート兵が二人待機している。
「あれ、どうする?」
「ここまで来て、見つかって手間かかるのもな」
「大丈夫。俺に任せてくれ」
<誘眠>を発動。<フラッシュムーブ>で一人目の兵士の背後へ移動し、首の後ろに手刀を叩き込む。もう一人が気付いた瞬間に<フラッシュムーブ>で背後に回り込み、同じく首の後ろに手刀を叩き込む。
「気を失ったまま、眠ってもらった」
兵士を眠らせた後、城の中へと入っていくと、直ぐに足を止める事になった。
「やはり、貴方方でしたか。このような時期に、魔器を手に入れた者がこの城へとやって来た反応がありましたので、もしやと思って、来てみて正解でしたね」
奥からやって来たのは、セドニーの側近であるアゲートだった。
アゲートの口振りだとあの通路を抜けて来ると、どうやら報せが届くようだ。
「作戦失敗か?」
「そうみたいだね」
「でも、戦場を駆け抜けて来るより良かったんじゃないの?」
「戦場に出ているのかと思っていたんだけどな」
どうする? とノゾムが目配せをしてくるが、間違いなく戦わずに通してもらえるはずがない。実際、
「戦争に少数精鋭で、トップを狙ってくるとは、目の付け所が中々良いですね。ですが、このように見つかっては意味が無い。そこの貴方以外はお帰り願いましょうか」
アゲートは、刺突剣を抜き放つと、やや前屈みの姿勢を取り、攻撃体勢に入る。
「ちょっと待ってくれ。俺たちは戦うつもりはないんだ。セドニーと話がしたいだけだ」
「戯れ言を。その話を信じて、セドニー様を討たれるような事があってはなりません。話がしたいと言うのであれば、束縛させて戴きます」
「それはそれで、束縛されて結果、俺たちも殺されるような事になったら、意味が無い」
「セドニー様の下へ行きたいと言うのであれば、私を倒してからにしてもらいましょう」
交渉決裂。まあ、こうなるとは思っていたけど。
俺たちは、直ぐに戦闘態勢に入ると、アゲートが突進してきた。
「シッ」
アゲートは高速突進突きをミコトに向けて放った。
「させねぇよ!」
その突きをノゾムが突き返す。えらくゴツいランス? で。
「オールフォームズの第三形態、その名も浪漫溢れるガンランスだ!」
いつの間にというか、ガンランスなんて、形態変化させた所で、撃つ弾無いよな? どれだけ無駄な形態にすれば気が済むんだ。
「ほう。私の突きに合わせて槍の先を当てるとは、やりますね。良いでしょう。もう少し本気をお出ししましょうか」
アゲートの剣の切っ先に光が集まる。あれは、あの時の爆発する光か。
「ノゾム、気を付けろ! その光は爆発するぞ」
「分かった。それより、アスカ。お前は先に行け。ここは俺たちに任せろ」
「俺たちって、あたしも入っているの!?」
「当たり前だ! 俺一人じゃ無理だよ」
「いえいえ、通しませんよ。セドニー様に危害を与えないとは言い切れませんので、腕の一本や二本は動かないようにしてから、連れていきます」
仕方ない。アゲートを倒して先に進むしかなさそうだ。




