戦場
スケルトンたちを倒し、現れた階段を上っていく。上り階段ということは、地上に出るはず。それが、セドニーの居る城か、他の場所かまでは分からない。
何しろ、迷宮をどれだけ進んだのか分からないのだから。階段の上が明るくなってきた。
「そろそろ上に着くけど……」
「何処だろうね?」
「なぁ、俺、嫌な予感しかしないんだけどさ」
「ノゾム、止めてよ。あたしだってそんな気がしてならないんだから、口にしないようにしてたのに!」
外の風景が見えた。そして、
「嘘だろ!」
「ほらっ! ノゾムのせいだよ!」
「ミサオ、お前何言ってんだ。これは俺のせいじゃねえだろ……」
「二人共、誰のせいでもないから」
何故、三人が喚いているのかというと、階段を上がった先は、サウスバレンとサウザートが戦闘していたからだ。
「戦場に出るとは……」
本隊とは違うようだが、それでも双方合わせて、三百人は居る。剣と剣がぶつかり合い、魔術も入り乱れた戦いは、正に戦場と呼ぶには十分だった。
「おい! 何だ、あの四人は!?」
俺たちを見付けたサウザート兵がこっちを指差している。
「何処から現れた!?」
「サウスバレンの伏兵か!?」
「伏兵が四人な訳が無いだろう! 他にも居るはずだ! 広域魔術を使え!」
俺たちが突然現れたのは間違いないとしても、何処からという声が聞こえた。この地下迷宮へと続く階段への入り口は普段は隠されていて、ここは出口専用ということなのか? とにかく迷宮に戻らないと。
「急いで、階段を降り……」
後ろを振り返った俺は言葉を止めた。そして、
「皆、直ぐに階段から出るんだ!」
階段が下から凄い勢いで消えていっていた。慌てて階段から出た後には、それまであった階段への入り口も消え、砂だけがそこにはあった。やはり、出口専用だったのだろう。
「この中を抜けるのか?」
「さっき広域魔術がどうのって言ってなかった? あれ、使える人が居るの!?」
ミサオが驚くのも無理はない。広域魔術というと、上級魔術の<エクスプロージョン>なんかになるが、あれはかなりのMPを消費するはず。実際、ミサオも<マジックブースト>で人形のMPを倍に膨れ上がらせて、一回だけ使えるらしい。
あの戦力の中にそれを撃てるだけの高レベルの兵が居るとなると、この戦場を抜けるのも苦労しそうだ。
そんな中、サウスバレン側から一人の兵がこっちに向かって来ているのが見えた。
「すみません! どうして貴方方がこちらに?」
やって来たのはこの戦場を任されている指揮官だった。
「その前に」
ミコトがここに居る五人を覆うように障壁を張ると同時にサウザート兵が放ったのだろう、巨大な岩が頭上から落下してきて、ドゴンっと大きな音を立てて防がれた。
「これも上級魔術なのか?」
「はい。地属性の<ロックフォール>ですね」
「むぅ。本当に使えるなんて! 何か悔しい!」
「ミサオ様、向こうには、上級魔術を使える高レベルの魔術士が複数居るようです。一度唱えると魔力を全て使い切るようですが、交代で使われる為に攻め切れず、苦戦を強いられているのです」
そう言うと、何かを期待するような目でこちらを見てくる。それに気が付いたのか、ミサオが右手をパタパタと振って指揮官に告げた。
「あたし達、ここを手伝いに来たわけじゃ無いよ」
「え!? そうなのですか? 私はてっきり救援に駆け付けてくれたものかと」
「俺たちは……ふごっ」
ノゾムが地下迷宮の事について話そうとしたので、俺が手で口を塞ぐ。
「ぷはっ! アスカ、お前何するんだよ!」
「お前、今、俺たちの事を話そうとしていただろう?」
「あっ、そうか。悪い」
サウザート兵たちの方を見て、俺の言いたかった事を察したノゾムは、素直に謝り、指揮官にだけ聞こえるよう耳の近くで囁くように状況を説明する。
「成程。そうですか」
「でも、ここを抜けないと、私達の目的は達成出来ないよ」
「ああ。ミコトの言う通りだ。ここの入り口は消えた。だったら、ここを抜けて、直接もしくは別の入り口を探す必要があるし、手伝うしかないかな?」
俺の言葉を聞いて指揮官の表情が明るくなる。俺たちが手伝えば勝てると思ったのだろう。
「ミサオ、いけるか?」
「うん? いけるって? ああ、MDなら魔力満タンだから、やれないことはないけど。いいの?」
ミサオのいいの? はこの後の事だろう。魔力切れのPDとMDでは、戦力にならない。BDで近接しか出来なくなるから、大丈夫かという事だろう。
「仕方ない。この先は、BDで頼む」
「分かった。じゃあ、一発、大きいのいくよ!」
ミサオはMDを召喚すると、魂装させたテネブラエに命令を下す。
「テネブラエ、いい? 敵の兵士は殺さないように、手加減するのよ」
『中々、難しい注文ですね。分かりました。主様の御命令とあらば、何とか致しましょう』
「頼んだわよ。<マジックブースト>」
MDの体とミサオの体から黒いオーラが包まれると、テネブラエが地面に向けて手を構える。
「テネブラエ?」
『これで良いのですよ。<エクスプロージョン>』
テネブラエが<エクスプロージョン>を唱えた先は、サウザート兵が密集している足下。砂の中だった。
「うわぁっ」
「な、何だっ!」
「ぎゃぁああっ」
足下が爆発した事で、空中に吹き飛ばされたサウザート兵たちが叫び声を上げながら、宙を舞う。
「おぉ、テネブラエ。やるねぇ」
『お役に立てたようで、幸いですが、この人形の持つ魔力はもうありませんので、これ以上は役に立てません』
「いいよ。ここからは、アスカたちの出番だから」
そう言って、ミサオはMDを送還し、俺たちの方を見て、
「あとは任せていいんだよね?」
「「おぅ」」
俺とノゾムは、返事をすると同時に爆発から逃れたサウザート兵に向かって駆け出した。
「ノゾム」
「分かってるよ。殺すな、だろ?」
「ああ。この先、どうなるか分からないからな。対邪神の戦力は多いに越した事はないからな」
テネブラエの開けた穴の上を飛び越え、サウザート兵たちの中に着地する。
「今、穴の中に見えたのは……」
穴の上を飛び越えた時にちらりと見えた物。それを確かめるには、周りにいるサウザート兵を無力化してからだ。
「悪いけど、さっさと終わらせてもらうぞ」
サウザート兵たちに挑発的な言葉を放ち、俺は近くに居る兵へと攻撃を開始した。




