百体のモンスター
総勢百体のミイラとスケルトンの群れへと向かって、駆け出した俺は、皆に指示を出す。
「先ずはミイラを片付けるぞ。スケルトンと戦っている時に邪魔をされると面倒だ」
「それじゃあ、あたしに任せて! PD!」
ミサオはPDを召喚すると同時に<マジックブースト>を使う。ミサオの体を黒いオーラが包み込むが、モーレスの時とは違い、禍々しさを感じない。
「やるよ! テネブラエ!」
『<エクスプロージョン>』
ミイラたちの塊を中心に広範囲に大爆発が起きた。その衝撃波で近くに居たスケルトンは吹き飛ばされ、俺たちも前に出られない。
「えぇっ!? まだ生きてるの!?」
今の爆発にミイラたちは耐えたようで、一体も倒れていない。爆発に巻き込まれたスケルトンが数体倒れた程度にミサオは不満そうだ。
「倒せてはないけど、怯んでいるぞ! 今のチャンスを逃すな!」
ミサオは<マジックブースト>を使用して、MPを無くしたPDを送還し、代わりにBDを召喚する。
「テネブラエは下がって、アキレス出番よ」
魂装をアキレスに切り替え、物理攻撃に専念させるようだ。
「<ライトボール>!」
「<ソニックエッジ>プラス<サークルエッジ>!」
ミコトとノゾムの放った攻撃で、ミイラたちが消えていく。ミサオの一撃では倒れなかったが、瀕死だったという事だろう。結果、あっという間にミイラは全滅した。残りはスケルトンが六十弱。
「こんなに簡単で良いのか?」
あまりにも簡単にミイラを倒してしまい、拍子抜けしてしまったが、まだスケルトンが残っている。油断は出来ない。
残りのスケルトンの中で気を付けるのは杖だ。剣や斧と戦っている時に魔術での援護攻撃は邪魔でしょうがない。
それを向こうも分かっているのか、十体の杖を二体の剣と槍を持ったスケルトンが護衛している。
そして、残りの三十弱のスケルトンは、一斉にこちらに向かって突撃を開始していた。
「さっきの組み合わせで行くぞ。俺とミコトは、杖の奴らを、ノゾムとミサオは突っ込んで来る奴らを頼む」
「分かった! ここなら大鎌を振り回せるからな!」
「ノゾム、BDには当てないでよ!」
『ご心配なく。私がそのようなヘマはしません』
「言ってくれる! 俺だってそんなドジしねぇよ!」
張り合っている二人は置いておいて、俺は自分の仕事をこなすだけだ。<フラッシュムーブ>で、奥へと移動すると同時に、杖を持った一体に<紅蓮>によって炎に包まれた拳を顔面に叩き込む。
顔面を殴られたスケルトンは、後ろへ蹌踉めき、数歩下がると、俺と杖の隙間に剣を持ったスケルトンが割って入って来た。
「甘い! <空破>!」
割って入って来た剣を巻き込んで、杖に衝撃波での追い打ちを掛けると、槍が動き始めたのを視界に捉え、左手に転がるように飛び退く。
俺が立ったままであればそこにあったであろう心臓の位置を槍が通過し、空を切った。
槍の一突きを躱し、起き上がると、杖たちが放った<ダークランス>が四方八方より飛んできていた。
「心臓を狙った挙げ句に、この集中放火。試練の域を超えてるぞ」
でも、闇の槍は俺に届く前に消える。ミコトの張った障壁が防ぎきったからだ。
「先ずは一体! <双牙>、<瞬迅>!」
最初に顔面を殴り付けた杖の下へ一瞬で移動し、超速の突きを叩き込めば、光の粒子と化して消える。更に、近くに一緒に居た剣にも左右の<瞬迅>を叩き込んで倒す。
「お、この感じ。ひょっとして」
左拳に装備しているキマイラブロウの熟練度がカンストした気がしたので、戦闘中だったが、ステータスプレートをさっと取り出し確認すると、あった。新しいスキルが。
「つまり、キマイラブロウはもう良いって事だ。<創装>」
左手のキマイラブロウを外し、タイガーフィストを<創装>で装備する。
「これで、更に火力アップだな」
ステータスプレートを確認している間に距離を詰めてきた剣二体と槍一体に<空破>で牽制。そのままバックステップで、飛来して来ていた<ダークランス>を回避。
俺に気を取られている隙に、ミコトが<ライトボール>で攻撃をすれば、光の爆発に巻き込まれたスケルトンに<フラッシュムーブ>で近付き、追撃することで倒す。
「いい感じだ。武器の火力が違うとこうも楽になるんだな」
今までの<衝波>、<烈破>に頼った戦い方をしなくても戦えるのは、手数も増やせて戦闘の幅が広がる。
スケルトンたちが各個の距離を取り出した。ミコトの<ライトボール>対策だろう。
だけど、それはこちらが有利になるというのに気が付いていない。いや、分からないというのが正しいのだろう。
奥にいる杖の下へ移動すると、<虎連牙>を発動。両拳が黄色の光に包まれると同時に、連打。一体目! 直ぐに次の杖へ移動。再び連打。これを繰り返し、効果時間三十秒で、全てのスケルトン(杖)を倒した。これで遠距離からの攻撃は無くなった。
「護衛が離れたら、こうなって当たり前だよ」
言っても分からないだろうが、スケルトンたちに向けて言葉をかける。
残るは剣と槍。ノゾムたちはというと、向こうも優勢だ。放っておいてももうすぐで片が付くだろう。
間合い的に、槍を先に倒した方が良さそうだ。少しずつ俺の周りを包囲しようとしているスケルトンたちを見て次のターゲットを絞る。
「うん? 動きが変だな? まるで、剣を持ったあのスケルトンを守るようにしている?」
よく見れば、そのスケルトンだけ装備している防具が違う。
観察している間に距離を詰めてきた槍が三体同時に三方向から突き出して来た。
「うぉおおお! <風爪>!」
本来の<風爪>であれば不可視の風の爪を纏うだけなのだが、<紅蓮>を使用していたからか、炎の爪となって現れ、その炎を含んだ風の爪を、槍の柄を狙って放った事で、刃先を切り落とし、串刺しは免れた。
「凄い。重ね掛け可能なのか」
ただ、<風爪>を飛ばした事で、<紅蓮>まで解除されてしまった。もう一度<紅蓮>と<風爪>を重ね掛けする。
槍が使えなくなったスケルトン三体は無視して、防具が違うスケルトンへと向かう。
「さて、お前を倒したらどうなる?」
一瞬で距離を詰めたにも関わらず、他のスケルトンたちが俺とスケルトンの間に入り込み、攻撃の邪魔をする。
「ちっ。邪魔だ!」
間に割り込んできたスケルトンを殴ろうとした時、ミコトの放った<ウォーターアロー>がスケルトンの頭を直撃し、弾き飛ばす。
「アスカ! 今よ!」
ミコトは俺の考えに気が付いて、援護射撃をしてくれたようだ。
「これでどうだ! <瞬迅>!」
左右の超速の連打を打ち込むと、あっさり防具を炎の爪が貫き、スケルトンは吹き飛んだ。
「まだ死なないか。でも、これで!」
吹き飛んだスケルトンに<気弾>を飛ばす。スケルトンの頭に命中し、爆発するとスケルトンが消えた。
「さて、俺の予想が正しければ……」
後ろを振り返れば、思った通り、他のスケルトンたちが全て光の粒子となって消え始めた。
「ふぅ。一先ずこの部屋は終わりかな」
そして、スケルトンが消えると、ゴゴゴゴ……と大きな音を立てながら、奥の壁が開き、上へと向かう階段が現れた。




