迷宮の罠
ミイラの大群による挟み打ちも難無く片付けた俺たちは前へと進む。
「あの大群をあんなに簡単に倒せるとは思わなかったな」
「そうね」
「ミサオのパワーアップとミコトの魔術のお陰だな」
「「そんなことは」」
「くそっ、俺ももっと力を付けてぇ」
ノゾムは、俺たち三人を見ながら悔しそうだった。確かに、俺はタイガーフィストという新しい錬装武具で火力が一気にアップしたし、ミコトも魔術を購入して範囲攻撃は出来るし、必殺の一撃も増えた。ミサオは、精霊と英霊との契約で強化されている。ノゾムもAFを手に入れたが、まだ変化可能な武器が一種類。火力も元々持っていた大鎌の方があると、微妙な状態だ。
「ノゾム、そんなに羨ましそうに見るなよ。ここで新しい魔器を手に入れたら。強くなれるかもしれないぞ」
「あぁ。そうだな。魔器か。どんなのが手に入るんだろうな?」
「分からないな。俺は今まで全て違う部位の防具だ」
「私はジョブチェンジと武器」
「あたしは、指輪のみだし」
「皆、違うからなぁ。ただ、どれも、ぶっ壊れ防具やスキルなのは間違いないぞ」
「俺だけ? 外れ引いているのは?」
「いや、お前のだってぶっ壊れ装備だって。そもそも、色々な武器を装備出来るという時点でチートだし、一つの武器でケース・バイ・ケースに形状を変えられるなんて、普通じゃ有り得ないって」
「そうか? でも今は大鎌だけだし、そもそも大鎌しか使う気無いし」
「あんた、馬鹿なの? そんなに便利な武器なのに、勿体ない」
……ガコン……
「うるさいな。大鎌は浪漫だって」
ミサオとノゾムの話の間に、何か音がしたような気がする。
「浪漫で死んでたら意味が無いでしょうに」
「分かったよ。次は別の武器に変化出来るように考えとくよ!」
何か音がしたと思ったのは、気のせいだった?
……ゴトン……
やっぱり何か聞こえた。ゴロゴロゴロ……。何か段々と音が近付いて来ている気がする。
「分かれば良いのよ、分かれば……」
「ちょっと静かに!」
「「え?」」
ゴロゴロゴロゴロ……。
やっぱり前から何か聞こえて、
「逃げろぉおおおおお!」
奥の暗闇から巨大な岩が通路を埋め尽くし転がってくるのが見えた。
「嘘ぉおおおおおおお」
「なんて、ベタな!」
「きゃぁああああああ!」
大岩のスピードが思いの外速く、距離がどんどん縮まっていく。分かれ道の所まで間に合いそうに無い。
「駄目だ。間に合わない。こうなったら、ノゾム!」
「おう!」
「<ディメンジョンスラッシュ>に<サイドリッパー>の効果を付けて、あの岩を斬れ!」
「簡単に言ってくれるな! でも、やってやる! <ディメンジョンスラッシュ>!」
ノゾムが走りながら、空を斬ると、大岩の真中に横に一本、黒い剣筋が走る。
「斬れたか?」
「駄目だ。デカいから、全体を斬れていない」
「いや、表層だけでも斬れたのなら! <気弾>!」
後ろを振り向き<気弾>を放つ。光の球は真っ直ぐ大岩へと飛んで行き、爆発するがそれだけだった。
「くそっ。外した。もう一回!」
再び<気弾>を放つと今度は狙い通りノゾムの入れた切れ目に命中。爆発の衝撃で、切れ目が拡がり、大岩にピキピキと音を立てながら罅が拡がっていく。
そして、数秒後には、ドンっという音を立てながら、木っ端微塵に吹き飛んだ。
「ふぅ……」
皆一安心してその場に座り込んだ。カチリ。ノゾムの手の下から音がして、床が凹んでいる。
「嘘……」
「ノゾムぅ」
「俺は悪く無い……よな?」
「はぁ……。次は何だ?」
音やモンスターの気配はしない。壊れた仕掛けだったのかと皆がホッとした時、床が輝き、俺たちは転移させられた。
転移した場所は、通路だった。前と後ろに続いている。
「うわ。一番最悪じゃないか。マッピングの意味が無くなった」
「俺は悪くないぞ!」
「罠が発動したのはしょうがないよ」
ミサオも罠を起動させているから、ノゾムを庇っている。
「別に二人を責めている訳じゃないさ。ただ、ここが何処なのか分からなくなったから、参ったなってだけだよ」
実際、罠についてはこの先俺だって掛からないという保証はない。そんな事を気にする必要はない。ただ、入り口のメッセージがこの罠のせいなのかもなとは思っている。あのミイラじゃ余程の雑魚じゃないと殺られる事は無い。
とにかく、セドニーの城へと続く道を探す必要があるのだから、先へと進む以外無いのだが。
「これ、どっちに進む?」
ミコトが俺も考えていた事を皆に質問した。
「転移して出て来た正面が前とも限らないし、そもそも、この状況だと、右手や左手の法則なんて無意味よね?」
ミサオとノゾムが落ち込むように下を向いている。
「このまま前へ進むか、敢えて後ろに進んでみるか?」
「私は後ろかな?」
ミコトの答えに皆が意外だという顔をしている。
「何で? ミコト」
「え、だって、今までの罠って殆どが元の道に戻るようなものばかりだったじゃない?」
確かにそう言われれば、水攻めにしろ、大岩にしろ、後ろに逃げるものが多かった。だから、罠に掛かった後の行動として、後ろに進むと言う事か。
「それじゃあ、ミコトの提案を採用しようぜ」
「ノゾムが言うな。でも、あたしも賛成だよ」
ミサオとノゾムも賛成なら、それで良いか。
「よし、それじゃあ後ろに進もう」
皆が頷き、俺たちは後ろに向かって歩き始めた。どれだけ歩いただろうか? 通路は分かれ道もなく、延々と真っ直ぐ続いている。
いい加減道を間違えたのかもと戻るか相談を始めた頃、進行方向からカチャカチャという音が聞こえてきた。
「何か来るぞ」
「ミイラでは無さそうね」
「なあ、この音って、やっぱり」
「来るよ!」
カチャカチャという音が速くなり、近付いて来て、その姿がはっきりと見えた。
「やっぱり! 骸骨か!」
ノゾムの予想通り、お約束を忘れないスケルトンの群れが、色々な武器を手に、走って来ていた。




