地下迷宮
分かれ道を右へと進み暫く進むと、奥に何かが動いている気配を感じた。
「何か居るな」
「任せて! テネブラエ! MDに」
ミサオはMDを召喚し、テネブラエを憑依させる。人形使いというより、召喚士みたいだけど、あえて何も言わないでおこう。
「テネブラエ、<ファイアアロー>」
ミサオの命令に従い、<ファイアアロー>を前方に放つと、炎の矢に照らされて見えたのは、ミイラの群れだ。
「おぉ、いかにも砂漠のダンジョンって感じだな! やるぞ」
ミイラの姿を見て、ノゾムのテンションが更に一段上がったみたいだ。AFを構えるとミイラの群れに飛び込んでいった。
援護するようにMDは次々と魔術を放つ。まるでMPを気にしないように。
「おらぁ! 何だ? こいつら大した事ないな!」
二人の攻撃で次々とミイラが倒されていく。あっという間にミイラは全滅してしまった。俺とミコトの出番が無かった。
「簡単過ぎないか?」
「まだ始まったばかりなんだ。いきなり強敵に襲われるなんてことは無いんじゃないか? それより、ミサオ。MDがかなり魔術を乱用していたけど、大丈夫なのか?」
ミサオもそれは気にしていたようで、MDに確認をしていた。
『大丈夫ですよ。私の魔力は簡単には尽きません。このメンバーの中でなら、一番MPを保持しているのでは無いですか?』
「そうなの? あたしより?」
『はい。主様がこれまで使用してきた悪霊ならともかく、私が魂装されているのですから、魔術の威力、魔力共に上がっています』
「そうなんだ。精霊凄いね」
「魂装か。憑依じゃないんだな」
『私以外の精霊や英霊など、人形の魂として装備するので、魂装です。当然、それぞれの能力が影響するので、色々と試してみてください。私は闇の精霊なので、闇魔術が更に威力が増します。英霊アキレスなら、BDとの相性が良いですよ』
喋るだけ喋ると、テネブラエは指輪へと戻り、MDも送還された。ミサオはテネブラエの言葉に成程、成程と頷いていて、次はBDとアキレスを喚んでみようと言っていた。
ミイラの群れを倒した後、暫く進むと今度は道が三つに分かれていた。右手の法則、右手の法則とミサオが嬉しそうに言うので壁伝いに沿って進むと行き止まりだった。
「ほら、右手の法則だと駄目じゃないかよ」
「何よ。ヒデオ、あんた右手の法則知らないの? 行き止まりでも壁伝いに進むんだから、まだ行き止まりじゃないわよ!」
「まあ、それはミサオが正しいかな」
ノゾムはしまった。そうだったと思い出したように悔しがっていた。俺とミコトは溜息を吐きながら、今来た道を引き返そうとした時、ガコンと妙な音が聞こえた。
「なぁ、今、何か音がしなかったか?」
俺が皆に尋ねると、ミコトが答える。
「したね」
後ろを振り向いたら、ミサオが壁に手を付けたままで固まっていた。よく見ればその壁は手を付いている部分だけ、凹んでいる。
「ねぇ、これってもしかしなくても……」
「罠が発動したな。ミサオぉっ!」
ノゾムが叫ぶのと同時に、天井から何かが落ちて来た。
「走れぇ!」
「うぉおおおおお!」
「ごめぇえええええんっ!」
「いやぁっ!」
落ちてきたのは大量の水だ。よく見れば、天井がパカリと開いている。いや、砂漠で水が足りないだろうに、こんなに水を無駄使いするなよと文句を言いたくなる。
さっきの分かれ道に辿り着く直前、床が大きく開いた。
「何! 飛べ!」
「嘘でしょ!」
全員、なんとか床の落とし穴を飛び越えると、その中に水が全て流れていった。
「危なかった……」
「あの水、ひょっとして、ここで落として、もう一度循環して使っていたりして」
その可能性はある。貴重な水を無駄には出来ないだろうから、あの落とし穴で回収しているのだろう。穴にどんどん落ちていく水を見ながら、
「やっぱり罠もあるよな」
「そうだな。まぁ、<感知>が使えないという所で、気が付くべきだったか」
「これからは、気を付けて行こうね」
「うん……」
罠を作動させたせいかミサオがしょんぼりしていたが、俺たちは気にするなと、三叉路の真ん中の道を進み始めた。
「うわぁ……」
「流石にこれは……」
ミコトとノゾムが嫌そうな声を上げたのは、しょうがない。目の前の光景を見たら、誰でも嫌になる。それは、通路をびっちりと埋め尽くしたミイラ。ミイラの壁なのではと思うくらいミイラで埋め尽くされている。
「これは、あたしも引くわー」
「うーん。引き返すか?」
「大した強さじゃなかったけど、この数をどうにかするのは、流石に面倒だよな」
ノゾムですら流石に引き返そうと考えているようだ。だが、それは許して貰えないようだ。
「どうなってるんだ? 何で後ろにもミイラが?」
「分からないけど、この通路に入る事自体が罠の作動に繋がっていたのかもな」
罠が作動して感じは全く無かったけど、そんなことを言っている暇は無い。
「来るぞ!」
「やるしかないか!」
「よぉし! 今度はBDとアキレスだよ!」
「私も! ジョブチェンジ!」
「なら、俺とミコトが前を、ヒデオとミサオは後ろを頼む!」
「「「了解!」」」
ミコトが前方のミイラに向けて<ライトボール>を放った。光の球が着弾したのを確認した俺は、<フラッシュムーブ>で先頭に群がっているミイラの真ん中に移動すると、<空破>を使う。
密集している所に相手を吹き飛ばす衝撃波を使えば当然の如く、後ろと絡まりあって、吹き飛ばされたミイラたちは身動きが取れなくなった。
「ミコト!」
「はい!」
身動きが取れなくなったミイラたちに向けて、再び光の球が炸裂する。密度が上がった分、巻き添えでダメージを受けるミイラの数も増えている。
「この調子でどんどん行くぞ!」
「うん!」
俺に襲い掛かろうと迫ってきていたミイラの攻撃を余裕で躱し、再び<空破>を叩き込む。そこに光の球が追撃する。あっという間に、最前列から二列分位のミイラが倒れた。
「良いぞと言いたいところだけど……」
ミイラの攻撃を躱しながら、前方のミイラの群れを見る。
「焼け石に水……、なのか?」
ミイラの数が減った気が全くしない。まだ奥が見えない位、ミイラが通路を埋め尽くしている。
「多いわね……。<ホーリーフレア>が使えたらな……」
「駄目だよ。ミコト」
ミコトの側に戻って来た俺は、ミコトに釘を刺す。
「こんな奴らに取って置きの魔術を使ったら、後が困る。面倒臭いけど、今みたいに<ライトボール>で倒していこう」
「分かったわ」
ノゾムとミサオも似たような戦いをしていた。驚いた事に、アキレスを魂装したBDもアーツを使えるようで、二人で<サークルエッジ>を使い、次々とミイラを倒していった。
三十分程戦った後、前後のミイラは、全て片付いた。




