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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第4章 宿敵と龍神

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精霊と英霊

 風呂に入り、身体も服も綺麗になった俺たちは、謁見の間に居るブラッドを訪ねた。


「ブラッド、帰って来たよ」

「ミサオ、他の者もご苦労だったな。どうやら、一人増えたみたいだな。お前がデイジーの召喚した者か」

「はい。ノゾム・フカミです。宜しくお願いします」

「私がブラッドだ。こちらこそ宜しく頼む。それで、デイジーの召喚者が居るという事は、依頼は完了したのだな」

「うん。デイジー様にはセドニーを殺したら駄目だという事は伝えたよ。それより、ブラッド」

「何だ?」


 ミサオはビシッと人差し指をブラッドに指して、叫んだ。


「あんた! 何であたしに加護を授けてくれないのよ! 他の皆は召喚者の加護を授かっているらしいじゃない!」

「そんなに怒鳴らなくても、聞こえる。加護が欲しいのか?」

「当たり前でしょ! デイジー様にも加護を授かれって言われたわ」

「ふむ。どうするかな?」


 ブラッドは加護を授けたく無いのか、顎に手を当て考えている。


「そういえば、ブラッド様。ミサオが意識を失って中々起きなかった事があったんですけど……」

「今、なんと言った?」


 俺の言葉に、ブラッドは考えるのを止めた。そして、ミサオに質問をする。


「お前何があった? 詳細を説明しろ」


 ブラッドの質問に、ミサオは当時の状況を説明し、動かなくなったPDを召喚して見せる。


「成程。お前のその新しいスキルとPDの状況を聞くと、悪霊の魂と、お前の魂が同調してしまったのだろう。そして、お前自身、悪霊の瘴気に耐えられず、意識を失い、抑えつけていた主を失った悪霊が暴走したのだな」


 ブラッドは冷静に状況分析をすると、目を閉じ何か考え始めた。


「何で、そこまであたしのこと分かるのよ?」

「過去にお前と同じ人形使いの話を知っているからだ。確かに人形使いという職業は、希少な職業ではあるが、全く居ないわけではない」


 ブラッドはその前例を知っていたということだ。そして、それを知っているということは、その対処法も。


「ミサオ、お前に教えた人形の使い方は覚えているな」

「当たり前でしょ? 人形に命を吹き込む為に、霊を人形に封じ込め、主従関係を結ぶ。そして、人形に簡単な命令を魔力を通じて行い、その命令の下に人形が動く、でしょ」

「そうだ。そして、その中でも、最も簡単に言うことを聞かせ、人形を動かす力を手に入れるのは悪霊だ。だが、これは諸刃の剣でもある。お前のように瘴気への耐性が無ければ、今回のような事が起こる可能性を秘めている」

「な!? 何でそんな大事な事、今頃言うのよ!」

「お前が次の段階に成長したからだ。つまり、人形と同調し、よりお前の意思を伝え、人形の力を更に上げる」


 つまり、瘴気に対する耐性を得ないと、今後も同じ事が起きるということか。


「なら、瘴気の耐性ってどうするのよ?」

「誰がそんな事をしろと言った?」

「え? だって、あたしに耐性が無いから駄目なんでしょ?」

「そうだ」

「だったら、耐性を付けないと」

「そこがどうしてそうなる?何故、悪霊をまだ使おうとする?」

「え? それって?」

「悪霊じゃない霊を使うということか?」

「アスカの言う通りだ。だが、普通の霊では、力が足りぬ」

「だから、悪霊何でしょう?」

「いや、今のお前なら英霊や精霊とも契約出来るだろう」

「英霊と精霊!」

「精霊っているのか!?」


 ミサオだけじゃなくノゾムも驚いている。実際、俺も精霊と聞くと興味はあるけど。


「精霊はいるぞ。英霊も含めて、普通には会う事は出来ないだろうがな。そうだな。どちらも契約するのに、私の加護がある方が良いか。ミサオ、こちらへ」


 ブラッドがミサオを手招きするので、ブラッドの前に立つ。ブラッドは、ミサオの頭の上に手を翳すと、ミサオの体が白く一瞬輝いた。直ぐに光は消えてしまったが。


「これで良い。あとは、自分で探せ」

「は? どこに居るのよ?」

「さぁな」

「ちょっと無責任じゃない?」


 ミサオの猛抗議にブラッドも仕方ないという表情をすると、


「仕方のない奴だ。では、最初だけだ。後は自分で探せ。付いて来い」

「へへ。そうこなくっちゃね」


 ブラッドは城の外に出ると中庭で立ち止まった。


「戦える人形を出せ。始めるぞ」


 ミサオは、BDを召喚すると、ブラッドがここまで来いという位置に立つ。


「それから、お前達は手を出すな。契約出来なくなるぞ」


 俺たちが首肯いたのを確認するとブラッドが魔力を練り始める。

 ブラッドを中心に半径3m程の魔術陣が出現すると、魔術陣から黒い光が立ち昇る。


「来い、テネブラエ」


 ブラッドの呼び掛けに応じ、魔術陣から、黒い靄が浮かび上がる。その靄には黄色い光が二つ。精霊の目なのだろう。黒い靄の中にあるからか、異様に目立つ。


「さあ、ミサオ。手懐けてみろ」

「いや、いきなり手懐けてみろって、あんたやり方とかあるでしょう!」


 ミサオがブラッドにツッコミを入れている間に、テネブラエがウネウネとその靄を動かし、何かの形になろうとしていた。


「え? 可愛い……」

「何で、あの姿なんだ?」


 ブラッドが召喚した精霊テネブラエが象ったのは、兎だった。後ろ足で立った姿は愛くるしいものがある。


「ちょっと、何で兎なのよ! しかも、可愛いし! 攻撃とか出来ないよ!」


 ミサオもその姿を見て攻撃するのを躊躇っていたが、テネブラエはそんなことは関係無い。

 ピョンと飛び跳ねると、ひとっ飛びで、ミサオとの距離を詰めて、大きな後ろ足で蹴りを放つ。

 ガチッという、人間が蹴られた時に鳴るような音では無い音が鳴ったかと思えば、テネブラエの蹴りがミサオに当たる前にBDが防いでいた。


「可愛い見た目のくせに、いきなり蹴ってくるなんて!」


 ミサオがBDに攻撃を命令する。さっき、攻撃出来ないと言っていたのは気の所為だろう。

 背中の大剣を抜き放ち、横に一閃。あっさりとテネブラエの体が上下に分かれた。


「え? これで終わり?」


 ミサオが呆気に取られていると、テネブラエは、元の靄に戻り、再び兎を象ると、BDを飛び越し、ミサオも飛び越えるとくるりと回転し、空中でミサオの後頭部目掛けて、下から足を突出す。


「ひっ!」


 ミサオが驚き、しゃがみこんだ事で、蹴りを回避することは出来たが、テネブラエの攻撃はまだ終わっていなかった。地面に着くと同時に後ろ回し蹴りを繰り出す。


「きゃあっ」


 テネブラエの蹴りはミサオの背中に直撃。地面に顔を擦り付ける形で、吹き飛ばされる。


「魔術陣から出たら、終わりだぞ」


 ブラッドの一言にミサオは慌ててGDを召喚し、ギリギリの所で耐えた。


「説明不足! ブラッド、あんたいつもちょっと一言足らないよ!」

「そうか?」


 ミサオの苦情を気にする事なく疑問で返す。その様子を見て、ミサオは、はぁと溜息を吐く。


「もういいわ。それより、これ、どうしようかな?」


 斬っても効果の無いテネブラエに対し、ミサオはどうしたものかと悩んでいた。

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